孤独の竜
私は、寂しかった。何もしなくても強くなっていく私を見て、私から何体もの仲間が私から離れていった。
最初のうちは寂しくなんかなかった。だけど、年月を重ねるにつれて、どんどん孤独感が酷くなっていった。もう一人はいやだ。もう死にたいと思ったころだった。"2人の冒険者"が私の前に現れた。
「最近あいつらは私を必要としてなかったからなぁ...少しは腕が鈍ってるとは思ったけどそうでもないな」
ぶつぶつ言いながら俺はぐんぐん進んで行く。基本的には攻撃はフラガラッハで済ませられてしまう。補助追加攻撃力合わせて言えば今の俺のメイン武器と変わらないからだ。しかもこの武器は、私が敵を切りたい、と思えば勝手に切りに行ってくれるから、そこんところの労力消費を減らせたりもしてしまう、ある意味ちーとな武器なのだ。出てくるモンスターの大半がドラゴンナイトと呼ばれる、いわゆる竜騎士だった。こういうモンスターはどっから湧いてくるんだというほど奥からとめどなく襲いに来る。勿論全滅するが。こいつらはフラガラッハに非常に体制があるから、普通に訓練になっていい。
「さすが、世界最強だぁね。魔法みたいに敵がばっさバっさトたおれていくねぇ...」
ほぇ~と言いながらついてくるエルは、私が倒して放置したままのモンスターたちの鎧や、肉、うろこなど、採れるものはすべて回収していた。その洗礼された動作は、やはり只者ではないことを表していた。
「やっぱり手馴れてるね。私だったらもうちと時間かかってある程度はあきらめちゃうよ」
「そうかぇ?こんな事ぉやってたら慣れてくるもんだよぉ」
少しうれしそうにしているエルを見ていると、凄く柔らかい気持ちになる。
とか何気ない会話をしてるうちに、あっという間にボス部屋の前に来ていた。
大きな紅い扉の隙間から、とめどなくあふれる熱気が、私の頬を切り刻むように薙いだ。
私はエルとともに大きな扉を押し開けた。
目の前に広がった景色は、まるで地獄だった。溶岩がそこら中に流れており、黒く焦げたような色の黒曜石は、その世界全てを彩る唯一の要だった。黒く鋭く突き出した黒曜石の先端にはまだ新しい死体がぶら下がっていた。
その世界の中央で、私たちを待ち受けていたのは、細身ながらも強烈な覇気を放つ獰猛な紅みを帯びた黒色の胴体に、二枚の巨大な翼をもつ。体のわりに太く、大きな爪を持った手足に、長く太く、美しく伸びたその首の先には、獰猛さを表立たせている牙がむき出しになった竜頭に、後ろに向かい、何かに巻き付くようにして伸びたその角には、紅く脈動する筋が通っていた。黄金色に光ったその目には、孤独の王者という風格を漂わせていた。
私には今まで味わったことのないほどの恐怖感が身体中を襲った。目の前の竜は、私よりも強いと思えるほどの覇気を漂わせており、逃げ出したい焦燥が私の意識を焦がしつくしそうになっていた。
エルは私以上に動揺しているのか、一歩二歩と後ずさっていた。
「ちょっとだけ、後ろに下がってて...私がもしもの時に、逃げろっていうから、出口まで走り抜けて。」
私は、その身を焦がすような、逃げて走り出したい焦燥を押さえ、少しでもエルの身に危険が及ばないように努力した。う尻を見て心配そうに見つめるエルの姿を確認した。私はその不安に満ちた表情に笑顔で答えた。
私は前を向き直し、目の前にいる竜。名を大黒炎帝ドースと正面からにらみ合った。その刹那、先に動いたのは私だった。剣を構えドースの目の前に0.01秒で到達し、切りつけようとした瞬間、狂い無きドースの攻撃が、私のわき腹を殴り、勢いよく壁まで突き飛ばした。完全にキレた私は鬼の形相で、ドースに立ち向かった。フラガラッハが、ドースの背中を切った。一瞬怯んだすきに、顔に一撃食らわせた。だが、フラガラッハで傷つけられると二度とその傷が言えることはないといわれているのに、そんな事知ったことか、とでもいうようにあっという間に治癒した。
「クソ!このドラゴン不死身か!?」
私の声が響いた直後、ドースのブレスの攻撃がその音をかき消した。渦を巻くように長く遠くまで届くようなブレスが私に直撃した。だが私はそのブレスを、剣で、縦に切り裂き、うまくかわした。「ふぅ!」私の掛け声と共にたたきつけられた剣はドースの頭に直撃した。今まで守りが完ぺきと言えた、ドースが本格的に疲労を見せた瞬間だった。私はこのタイミングを逃さず、一気に猛攻を仕掛けた。それに抵抗するようにドースも必死で攻撃をしてきた。
数分後。ハァ...ハァ...と息を切らし、地面に剣を突き刺して膝立ちでやっと立っていられるような状態の私は今すぐその場に倒れてしまいたいくらいの疲労感に襲われた。目の前のドラゴンも同じように、首をギリギリ立たせられているような、状態まで疲労していた。
「くそ...中々やるね...」
「貴様こそやるじゃないか。」
初めて目の前の竜が言葉を話した。渋い声をイメージしていたが、案外若めの女の子の声だった。
「お...女の子だったのね...渋いおじさんをイメージしてたわ」
「う...五月蠅い!私にだって精神的に傷つくという概念はあるのだぞ!」
何とも可愛らしく否定するものだから、私は疲労だけで死にそうなのに、笑いをこらえきれなくなった。
もうすっかり最初見た時の覇気はなくなっていた。
「...私を殺さないのか?」
「見ての通りだよ。もう私は動けません。」
「そうか」と言いドースは天井を見上げた。私はその様子がどこか寂しそうに見えて仕方なかった。
「ねぇ。あんたさ。ずっと一人だったから寂しいんじゃない?」
私の言ったことが図星だったのか、目の前のドラゴンは私の方を見て、若干恥ずかしそうにした。
「わ...わかるか...そうだ。私は強さのあまり孤独だった。私の母や父も私の力におびえ逃げてしまった。貴様も同じと見えるが...」
「ああ。私もずっと孤独だったね。周りが弱くなってくに連れて、周りの目は、恐ろしいものになっていったよ。でもそれでも慕ってくれている仲間や親友が少なからずいたさ。あんたにはそんな奴いなかったんだろ?」
「ああ。これ以上孤独でいるくらいなら死んでしまいたいと考えたこともある。だが私には自殺するすべがなかった。」
私は少し目を見開いて、さっきの戦闘を思い起こす。さっきのドースは明らかに本気だった。本気で死にたいと思っているなら、さっき私に殺されていたはずだ。ということは少なからずこの世界に行きたいと考えているのであろう。なら...
「ねぇ。ドース」
改まって名前で呼んだため一瞬ひるんだドースだがすぐにいつも通りになる。
「そんなに寂しいなら私たちの仲間になろうよ。人間の姿になれるのならね。」
私がドースの目を見ながら言うと、ドースは目を見開きそのまま恥ずかしそうにして、目をそらした。するとやがてドースの体が光り始めて、人間の姿になった。見た目は、純白のロングで髪型はサイドアップ。さらっとした髪の毛が光を放っているように見えた。まつ毛は髪の毛と同じ、純白で、瞳は黄金色に輝いており、純粋に周りの色で三重幾位ということはなかった。目鼻立ちが綺麗に整っており、その唇には、色っぽくありながらも、可愛らしさがあふれていた。輪郭は美しく整っていた。体は、身長が151㎝くらいで、肩幅は狭い。バストは私ほどあるわけではないが75㎝から80㎝はあろうかというほどのサイズだった。綺麗な体たちでくびれが美しく、くびれを見下ろした先のヒップに自然と目が運ばれ、体が小さいながらも、それでもある程度の大きさを誇るヒップは彼女本人の胸より2㎝ほど大きい気もした。服装は高級都市の民族衣装のようなもので、彼女本人の可愛さを引き立てている。その圧倒的可愛さや可憐さに、目を奪われていた私は、ドースの煮えたぎりそうな顔に今気づいた。
「ア...あんまり見ないでくれ...頼む...」
「ごめんごめん...あんまりにもかわいかったからさ!」
私の率直な意見に彼女は頬を赤くした。私がふとした瞬間、後ろに迫りくる気配に気づく前に一気に飛びつかれた。飛びついてきたのはエルだった。しばらく存在をすっかり忘れていた。
「むぅぅ!私を忘れないでよぉ!意外とさみしかったんだからぁね!」
「ごめ...ごめんって、だから離して!苦しい!苦しいから!」
私とエルのにぎやかな光景を見て、ドースが「ふふっ」と笑った。私は視界の隅に入ったその顔を見て、ちゃんと笑えるじゃん。と思った。私たちに新たな仲間が増えた。
読んでくれてありがとうございました。