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無謀にも、とある新人賞(短編)へ応募した人生初の作品になります。

この話で完結です。

完成日付は2002年4月でした。

       5


この村に来て、ロクな事がない。

ドラゴンに喧嘩売られるわ、くそデブに押しつぶされるわ、挙げ句の果てに気色悪い筋肉男に迫られるわ……。

ありとあらゆる不幸のオンパレードだぜ、ったくよ。

だがな、み~んなぶちのめしてやったぜ。大体身の程知らずが多いんだよ、バカどもが。

「ざまぁ~……みやがれってんだ!」

仰向けに寝転んだ途端、ルグスの身体にどっと疲れが押し寄せてくる。

そして腹の虫も鳴き出した。

もう、起き上がる気力もない。

村人のざわめきが耳を覆う中、澄んだ青空に一つだけ、ぽっかりと雲が浮かんでいるのが見えた。

「ハラへった……」

ふわふわの白いパンが、ゆったりと流れてゆく。

思わず食感を想像してしまったルグスの口から、よだれがこぼれ落ちたそんな時--。                 

「ひぃ、出ただぁ!」

「みんな逃げるべぇ!」

村人のざわめきが突如として悲鳴に変わる。大きい地震が一回、ずしんと響き渡った。

「グギョギョォォオ・・・・・・・・・」

どっかで聞き覚えのある声だぜ。ちくしょう、まだ生きてたのかよ。

「しぶてェんだよォ! くそったれがァ!」

ルグスはそう叫びながら、疲労でがたがたの身体にむち打って起きあがった。

目の前には、翼がぼろぼろになったドラゴンがいる。

おそらく仰向けに墜落したのだろう。

見るも無惨な翼から判断するに、もう二度と飛ぶ事はできなさそうだ。

「俺様の武器はどこだっ、くそゥ!」

ヘビークロスボウを求めてきょろきょろ辺りを見回すと、あの気色悪い筋肉男の相棒の姿が目に入った。

ドラゴンのそばで気絶している。

そう言えばあのキザ野郎も、随分ナメた事しやがったな。

そのまま、ぺちゃんこになってしまえ。

「グギュルグゴォォオ!」

またもや吠えるドラゴンだったが、心なしか虚勢を張ってるようにも見える。

それに対して武器も無いのに自信満々のルグスは、腕組みしながら思いっきり怒鳴りつけた。

「黙りやがれェ!」

「クピッ・・・・・・」

思わず拍子抜けするようなかわいい声を発したドラゴンは、首をすくめて縮こまる。

はったり合戦は、ルグスに軍配が上がったようだ。

「ぶっ飛ばすぞ、コルァ!」

そしてますます調子に乗ったルグスは、力強く一歩を踏み出して脅かすように叫ぶ。

「クッピィ~」

びくぅと身体を震わせて後ずさるドラゴン。

キザ野郎は紙一重で踏み潰されずに済んだ。

「おやめ下され。彼はもう、戦う意志はありませぬ……」

ルグスの背後で長老がささやいた。

相変わらずへっぴり腰ではあったが、この局面に乱入した勇気は認めるべきだろう。

しかし、ルグスは意地の悪い笑みを浮かべる。

「ほゥ……。てめェ、ドラゴンの言葉が分かるってか?」

「若い頃、ドラゴンの研究をした事がありましてのぅ」

冗談交じりに言った質問に、意外な答が返ってきた。

しかし、こんな辺鄙な村の長老にそのような大それた技能などある訳が無い。

と、タカをくくったルグスは、難題をふっかけて困らせようとたくらむ。

「じゃァ、通訳してみろ! 今からてめェをぶっ飛ばァす。と言え!」

「お安い御用ですじゃ……」

さらりと、事も無げに言ってのけた長老。

さすがのルグスもこれには目を丸くする。

「ぐぎゅるぐごぉぉお!」

「クピー、クピポップポォォオ!」

長老の口から発せられた雄叫びに、ドラゴンはさらに萎縮して情けない声を出した。

「私が悪ぅございました、どうか勘弁して下さい。と、彼は言っておりますじゃ」

長老がドラゴン語を話せるという新事実発覚に、周りを取り囲む村人達は唖然としている。

しかし、上機嫌になったルグスは、そんな雰囲気を打ち破るかのように手放しで長老を褒めた。

「ジジイ、やるじゃねェか!」

ドラゴンと話ができるなんてよ、面白すぎるぜ。

よっしゃ、ここは一つ。

「許してほしけりゃ、ゼニ出しな。と言え!」

「ゼニって何ですか? おいしいんですかねぇ。と、彼は言っておりますじゃ」

即答である。

貨幣経済という概念を知らないドラゴンにとって、これは当然の反応であったが、ルグスの機嫌は急転直下。

苛立ちを露わにして彼は怒鳴った。

「うるせェ! てめェが集めている金ピカに光るモン、全部よこしやがれってんだよォ!」

「他の下品な方々と違って、私にそんな趣味はありません。と、彼は言っておりますじゃ」

そう、ドラゴンの人を食ったような物言いがいちいち癇に障るのだ。

もう既に、ルグスの誰よりも短い堪忍袋の緒はぷっつ~んと切れている。

「ぐだぐだ言ってんじゃねェ! なんなら体で払えってんだよォ!」

「私の体がお望みなんですね。分かりました、御存分になされませ。と、彼は言っておりますじゃ」

長老の通訳が終わったと同時に、白い霧がドラゴンの身体を包み込んだ。

とはいっても、霧はドラゴンを覆い隠す範囲に留まったのでルグスの視界を遮るには至らない。

しかし、彼は血眼でドラゴンの行方を捜した。これに乗じて逃げたのでは、と直感したからだ。

「ちっきしょう、ただじゃおかねェぞ、コラァ!」

「これは竜魔法ですじゃ。ドラゴンは、この魔法を使って人に変身できるという伝承がありましてのぅ」

「なんだとォ、ドラゴンが人間になれるってのかァ?」

素っ頓狂な声でルグスが聞き返したその時、ドラゴンを包み隠している霧が晴れた。

すると、ドラゴンの巨体は煙のように消えているではないか。

しかし、ルグスの視線は一瞬で釘付けになった。

「……おおっ、すげェ!」

ウェーブのかかった金髪に、透き通るような白い肌。

豊満な胸を右手で隠しながらルグスに微笑みかけた顔は、彫刻のように冷たく美しい。

そこには、紛う事なき絶世の美女が座り込んでいたのだ。

「さぁ、おいでませ。と、彼は言っておりますじゃ」

その言葉に、ルグスの血と筋肉がたぎる。

今まで散々むかついたドラゴンの物言いも、あの澄まし顔から出たのだと思えば、さらに欲情を掻き立てるチャームポイントでしかない。

やはり最後の決め手はビジュアルなのである。

だが、それも束の間、ヤル気満々のルグスを奈落の底へ突き落とす衝撃の事実が長老の口から告げられた。

「先程からワシは……『彼』と言っておりますじゃ。つまり、あのドラゴンはオスですぞ。よろしいのですかな?」

「うそつくんじゃねェ! どっから見ても、女じゃねェかよォ」

即座に否定するルグス。

確かに、彼の目に映っているのは紛れもなく美女である。

しかし長老は、杖を高らかに掲げながら呪文らしき言葉を滑らかに紡ぎ出した後、確信に満ちた声で叫んだ。

「なら御覧あれ! 本来、彼の人間での姿はこうなのですじゃあ!」

いったい、この長老は何者なのだろうか。

ふとルグスの脳裏にそんな疑問がよぎったが、とにかく杖から光がほとばしって魔法が発動する。

「グワァァア、目がつぶれたァ!」

決して、光で目が眩んだ訳ではない。

問題はその後なのである。

透き通るような白い肌は、こんがり焼けた小麦色の肌に。

そしてウェーブのかかった美しい金髪が、見る影もなくスキンヘッドに。

すらっとした肢体の美女が一瞬で、ごつごつの筋肉アニキに変わり果てていたのだ。

あまりのショックに目がつぶれたのも頷ける。

「ぐぉっほん! ようするに彼は、竜魔法でいつもの人間の姿に変身した後、さらに幻影の魔法をかけて美女に見せかけたんですなぁ……」

「おらァ、俺様の美女返せェ!」

ルグスは、鼻高々に講釈垂れる長老を激しく揺さぶって、未練がましく抗議した。

「ぐほっ、げっふん、やめて下されぇ……首がぁ、締まってますじゃぁ。しぬぅ~」

冗談じゃないぜ。

この村に来てから災難続きなんだよ。

やっとありつけた幸運なのに、よくもやってくれやがったな。

「そのままァ、しねェ~」

その時、いきなりアニキな姿をしたドラゴンに左手を掴まれた。

日焼けした小麦色の艶と、彼が発する男の悪臭に思わずふらつく。

同時に、危険信号がルグスの脳裏にけたたましく鳴った。

「クピ~ゥ、クポクプ~ゥ」

そしてドラゴンは、力任せに長老から引き剥がしたルグスの手を自分の胸板へ押しつけるではないか。

ぞわわっと、これまでにない悪寒が全身を駆け巡り、激しい嘔吐感がこみ上げてくる。

そこへ、息を整えた長老のとどめの通訳が冴え渡った。

「はやくぅ、揉んでよぅ~。と、彼は言っておりますじゃ。どうやら彼はまだ、魔法が解けた事に気付いてないんでしょうなぁ」

ぶちぶちぶちっと、ルグスの頭が破裂した。

できる事なら、この村ごとちゃぶ台返しをかましたい。

否、絶対ぶち壊してやる。

ぐぅと、腹の虫が鳴った。

『俺様は今ァ! 猛烈に腹が減っているゥ! ドラゴンステーキを腹一杯ィ! 食ってみたいぞォ!』

やはり、長老は冴え渡っていた。

なんの合図も無しに、同時通訳という荒技をやってのけたのだ。

しかしそれが、村にとって不幸な結末を招いてしまう。

「グビィィイ、グギョエグガァァア」

即座にルグスの意図を理解したアニキは、すぐさまドラゴンの姿に戻って脱兎の如く逃げ出した。

地上をどたどたと這いずり回るドラゴンなど、ルグスの敵では無い。

村の真っ只中で、彼らの格闘戦は派手に繰り広げられた。

「おっ、オラ達の村が……」

「やめてけろぉ!」

踏んだり蹴ったりとは、まさにこの事。

こうしてまた、一つの村が地図から姿を消したのであった。


もちろん、一次落選の結果に終わってしまいました。

梗概(あらすじ)の書き方もなってませんでしたし、話の作りも無茶苦茶です。

もう、とにかく完成させてしまおうという焦りと、もういいやって投げやりになってしまった小説でした。

こんな拙い小説ではありましたが、何かの参考になれば幸いです。

ありがとうございました。

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