復活3
「うーん……」
「これしか書けなかったんだけど、いいかな?」
「ゴミみたいですね(呆れ)」
とおれの三日三晩寝ずに書き溜めた原稿を判読不可能になるまでビリビリに引き裂いた。
「なんで?(殺意)」
おれは手を突っ込んでいた両側のポケットから二丁のバタフライナイフを取り出し、カシャカシャと閉・開刃を繰り返す。
「まず文章がめちゃくちゃ。冒頭の『かれは鳥におけるそれのような白く粘性のウンコを出しトイレットペーパーを左腕にぐるぐるとちょうど厨二病の包帯の要領で巻きつけたのだがそれで尻を吹くことは非常な困難を伴ったのでトイレから出ることの叶わぬ苛立ちを隠さず出入り口のドアを蹴破るとビチビチのハンバーグをヤクザみたいな風貌をしたその実ある上場企業の部署を任されている部長で部下や上司からもオジキというあだ名で親しまれており愛する年下の妻と娘ーーその娘は今月の十七日に二十二歳の誕生日とともにかれの会社と懇意にしているベンチャー企業の社長とまことにもって偶然であるが街で買い物をして帰るさい地面の亀裂に蹴つまずいてスーパーマーケットで購入した食材がいっぱい詰まった買い物袋からからリンゴを数個地面に落としそれを拾おうとしたら手伝おうと手を伸ばしたその男と手が触れ合ったというベタベタに手垢のついた出会いの果てに先日帝国ホテルのレストランでシャンパンの中にダイアモンドの指輪を混入されるというこれまたベタベタなプロポーズを承諾し結婚する予定であるーーの父であり家長であるということに人生において一番の誇りを置いている中年男性のもとへと運んでいた今日夜の七時に退勤し付き合って二年目の恋人とラブホテルでしっぽりやる予定を持つ店員をちょうどそのかれが高校生の頃暴漢に襲われてビビり大小便を垂れ流した時よりも数千倍恐怖せしめるとその哀れな青年はショックのあまり心停止を起こし同僚でアメリカから日本に機械工学を学ぶため留学して来て二年目のボブの必死の救命措置も叶わず命を落としたーー余談であるがその後かれの葬儀は恋人、友人と親族のみでしめやかに執り行われ……』冒頭長えよ! こんな調子でどうでもいい脱線が原稿用紙換算で7000枚続くんだぞ? 何にかぶれたのか知れないけれどこんなクソ話に付き合わされる読者の気持ちになってみろ!」