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俺もそろそろモテたいとですよ……

部活棟は教室を出て連絡廊下を突き進み裏口を出てから学校所有の山を二つ三つ超えた国境にある。運動部は本校舎で活動するのにどうも不公平の感がしてならない。


生い繁るシダの葉を踏み潰しつつ急な斜面を登って行きながら俺は今朝がたの出来事を考えていた。


なんだってあいつは怒ったのだろう。俺は彼女に何か悪いことをしたという覚えがない。


あいつはいつだってそうだ、平生は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるくせに、ふと癇癪を起こすものだから胃腸が痛い。


それはしかし俺の意識の知らぬことで何か悪いことをしたかもしれぬという、罪悪感といった心持ちがそうさせるのだが、自覚のない悪意が一番タチの悪い、なぜなら改善のしようがないのだから。


しかしながらこうも考える、もしそうなのだったら進言してほしい気持ち。無自覚なだけに治しようがないのだから、他者の指摘をもとに改善してゆく他ないのだ。


その点でアカネは不親切とも言える。


だがあいつは弁舌鋭く、思ったことはわりかしはっきりいう方だ。いわゆる真面目な委員長ってやつ。だが俺には黙って拳を見舞うのみだ。


そんな人間が俺に対する返事を韜晦するよほどの理由があるのか?


それは突然だった。ーー脇の草むらから鳥が弧を描いて躍り出るように突如として頭の上を切って過ぎた。


それはなんとも奇妙な想像だった。たとえ宇宙の法則が乱れたとしてもこんな頓狂な結論は起こらぬだろうというくらいだ。なのに閃いてしまう人間の心理の不思議よ!


あいつは俺のことが好きなのか?


「あほくさ」


思わず声に出てたよう。(どこからか呻くような動物の鳴き声がした)


そうだ、気の迷いとは恐ろしい。何をどう考えたらあいつが俺に惚れるのだ。


あいつは容姿もいいし、キツめの性格と情緒不安定を斟酌しても結構モテる。マゾな男は意外と多いものだ。男は引く手あまた、何を持ってなんの取り柄もない普通人に想いを寄せているというのか。女はいつの男に強さを求めるものさ。


偏頗な想像を人は妄想と呼ぶ。俺はその邪念を頭から振り払い六合目の傾いた地に足をかけた。


部活棟はここからあと二百メートルほど登ったところにある。


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