モテモテぐうシコハーレム学園物語
トントンという音がしたから暫くして目を開けたら美少女の顔が俺の目の前にあった。
女は
「早く起きないと遅刻するわよ?」
といった。
彼女は霧島アカネ。
キラキラとした意志の強そうな瞳を縁取る長い睫毛、薄い桃色の唇、それらを包む輪郭は小さく、おさないあどけなさが残る。
隣の家に住む俺の幼馴染だ。
幼馴染の義理だろうか、彼女はやたら俺に構いつけてくる。
海外出張で家を長いこと空けている両親にかわって、寝不精で遅刻魔の俺を起こすために、彼女にお世話係を依頼した母さんに渡された合鍵を使ってて家に上がり、そうして勝手に部屋に入ってくる。
しかしこうしてみるとやっぱり美少女だ。
「ふえっ……!? ア、アンタっ、何いってんのよっ!?」
どうやらうっかり言葉に出してたみたいだ。彼女はイチゴのように顔を真っ赤にすると俺の右頬にビンタをかましてきた。
俺はふっとんで部屋の向かいに設置してある本棚に背中をしこたま打ち付けた。
グラグラグラグラグラグラ!
本棚がグラグラと揺れたかと思うとそれに収まっていた書物が滝のように吐き出され入り口のドアをぶち破った。
「何しやがる!」
「なっ、何よっ! アンタが悪いんだからねっ! この鈍感!」
奇妙奇天烈を吐き捨てて彼女は部屋から出ていった。なんなんだろうな、女の考えてることはよく分からない。
しかし起こしてくれたことは感謝しなければならない。時計を見ると短い針が8時を指している。学校に行かなくてはならない。
こうして俺はハイスクールというルーチンワークに従事すべく、家を飛び出したのだ。