幹部編 第8話 前 ゾーンでございますか?
「ウィンドブレイド」
こいつ、無詠唱で下級魔法をバンバン打ってきやがる! 魔法に対する防御は全然してないし、魔力も彼女の下級魔法を防げるほどの量はない。下級魔法とはいえ一発食らったらあの世行きだ。でも、ウィンドブレイド自体はそんなに早くない。よし、距離を詰めた。この剣は特注品で魔法石と俺の魔力両方でチャージ出来る。しかも、魔法石が切ったら交換出来る。魔法使いの魔力バリアだって斬り裂ける剣なんだ! 死ね!
「ウィンドブレイド!」
うお! ウィンドブレイドが早くなった! このクソアマ…ハメようとしやがったな! わざと出力を抑えやがって…が、同じ手はもう通じない。
ウィンドブレイドは水平と垂直の二種類の斬撃を飛ばす魔法。が、このクソアマなら斜めの斬撃も出来るかもしれない。スピードももっとあげられると考えるべき。だが、避けるべきものはウィンドブレイドではなく、杖だ。魔法は杖から出る、つまり、杖に向けられなければ魔法は当たらん! さよなら、強かったよ、魔法使いとしては。
「自由でマイペースな少女、それは疾風。風の壁よ、敵から守って!ウィンドバリア! そして、ウィンドブレイド!」
くそ、風圧が…やばい! この体勢じゃ避けられない! 死ぬ…
ふ、ははは! きたーっ! 世界がスローモーションになった。これだけを求めて俺は死線を潜り抜けてきた! 腰を狙って水平で撃って来てるから、体前屈したら避けられるはず!
髪切られた! ハゲになったがなんとか避けたぞ! 体勢も立て直した。反撃と行こうか。まずあのバリアを何とかしないと。
魔法を消すには魔力が必要、そしてあのクソアマの魔力バリアを切り裂く魔力も…あの風の壁は多分持続性魔法だから完全に消すのは無理なのだが、一瞬でも風の壁を切り裂いだらあのクソアマを切れるはず。そうなると、一秒以内に魔法石を交換しなければならない…
行くぞ、今の俺なら出来るはず。あのクソアマをゆっくり動いて見える! これこそ俺が天に授かれた俺だけが持つ才能だ。時間を遅らせる俺だけの才能だ! そう、魔法なんかより全然強い俺だけの才能だ!
待って。あのクソアマ、杖をしまって魔法石を取り出したぞ。火球? 範囲広すぎで避けるのは無理だ。 剣で切るしかない。くっそ、上級魔法をバンバン撃って来やがって、風を身に纏いやがって、そんなに魔力自慢したいのか! くそったれ! こっちは人並み程度の魔力しかねぇんだよ。仕方ない、相打ち覚悟で火球を避けるしかない。大丈夫、今の俺なら出来る。
火球は何かに当たらなければ爆破しない。爆破の範囲は五メートルくらい。火球の軌道を予測して、着弾、爆破のタイミングを把握した。ちぃ、それでも避けきれないのか…服が着火した! 知るか! 俺はあのクソアマを切らなければ!
青い光? 後ろから、青い炎が…バカな! 深く切ったはずだ! 何故生きてやがる?!




