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幹部編 第7話 乙女でございますか?

  命知らずが追ってきた! え? どうして今冒険者を襲うの? 報酬目当てじゃないの? 私達を殺して、魔獣を倒せるの? え、だから命知らずだと言われてるの? いつも仲間を殺すから、いつも一人しか生き残っていないってこと? やばい! 殺される! 勇者、何やってんの? 早く…


  「うおー。仲間を? ハロルドさん、何を?」


  もう! 頼りにならない勇者だな…

  それより、勇者があのざまじゃ…私が冷静にならないと。


  「ユアンさん、ハロルドさんに構わないで四時方向へ走って逃げて! 皆も早く! 魔獣が迫ってる!」


  魔獣は前、十時方向から来てる。ハロルドは六時方向から。魔獣はハロルドより早いから四時方向に逃げるのは無難かな。

  命知らずと魔獣を戦わせればこのピンチを抜け出せるはず…


  「ハロルドさん、やめてください! 報酬要りませんから!」

 

  出来れば命知らずを魔獣と戦わせたいんのだけれど、流石に命知らずも魔獣を一人で挑もうと思っていないから…


  「報酬だけの問題じゃない! 俺が冒険者を皆殺しにしたことを知っているお前達を生きて帰す訳にはいかないんのだ! わかったらささっと止まれ」


  このままでは追いつかれてしまう…。


  「な、何も言わないからぁ! だれにも言わないからぁ! お願い! 見逃して!」

  「ダメだ! 秘密を守れるのは死体のみだ! 大丈夫、修道女ちゃんは俺の輝かしい人生の一ページになるから」


  え? 言ってる意味が分からない? それより、あれの出番が来たようだ。


  「ハ、ハロルド! リリーナちゃんに手を出すな! ぼ、僕だって! 人くらい、殺せるんだから」


  勇者は殺人未経験者か? まあ、私もそうだけど。見っともないとういうか、健気というか…


  「ユアンさん、せめて魔獣のテリトリーから離れないと!」

  「そ、そうか」


  でも、やはり命知らずを魔獣に戦わせたい。これを使おうしかない。昔、私が氷属性の魔法を使えるように作られたライフル型の杖。六つの魔法石がマガジンに内蔵され、魔法石の魔力が切ったらここのレーバーを引いて戻しだら次の魔法石が杖の中に充填されてまた魔法を発動出来るようになる。杖には私の血で出来た魔法石が入れられて、それを媒介にして私の心臓と杖の魔法回路を繋いで魔法を発動するのがこの杖の仕組みみたい。

  そう、私のとアサの心臓を魔法石にしたら、混合属性魔法を使えるようになる。本当はやすやすと人の前に使うべきじゃないが、今は使うしかない。

  氷属性の魔法はよくわからないので魔法について詳しいアサに頼んでいくつか魔法を考えさせてみた。アサは人を凍らせる魔法や、氷柱を飛ばす魔法を作ってくれたけど、私が一番気に入った魔法は、私が考案して、アサが完成させたこの魔法!


  「儚くて無機質な乙女、それは氷。凍える大地よ、冬眠せず走り回る獣達の自由を奪えたまえ! アイスグラウンド」


  もちろんアサが考えてくれた呪文だ。ちなみに私が考えた呪文は、『氷よ、滑らせろ』なんだけど、どうかな?


  「痛え。どうして平原の地面が凍っているんだ?」


  うん、中々使える魔法だ。これでもう大嫌いなバナナを食べずに済む! バナナの皮も黒くなるし…

  この距離があれば多分追いつかれる前に魔獣のテリトリーから出られる!


  「小癪な真似を! これで逃げられると思うなよ!」


  こう言って命知らずは飛んだ! え? うそ、命知らずが飛んでいる!


  「魔獣のために温存したかったが、お前達を野放してはいけない! 死ね!」


  え、ちょ、あ、私? ダメ、死ぬ… あ、リリーナのお父さんってこんな顔だった。初めてアサと出会った時、馴れ馴れしくて嫌いだった。ゴブリンキング、シスコン、ハエハンター…


  先輩の口から暖かい液体が私の顔に…


  「せん、先輩?」

  「リリーナ!」

  「ヴァン!」


  え、どうなってんの?


  「ウィンドブレイド! 勇者、私が命知らずの相手をする、お前は魔獣を」

  「でも、ヴァンが!」

  「だから二人を守るのよ!」


  先輩の背中から、血が…


  「よかった、無事で…」

  「何言ってんの? 回復薬!」


  私を庇うから先輩が死ぬの?


  「飲んで!」

  「くは…」


  飲めない…直接に傷口に! ダメだ、出血がひどくて、薬が…


  「学院に居た時、リリーナちゃんに、本を取ってあげたこと、覚えてる?」

  「喋っちゃダメ!」


  あ、いや、これはドラマの。実際、意識を保たせるためにも、一杯喋らせないと。


  「そんなことあったの?」

  「あっ、たよ。それ以来、リリーナちゃんのことを、気になっちゃって。思えば、クホッ、初恋なの、かもしれない。クホッ」


  どうにかして薬を飲めさせないと。


  「先輩、これを飲んでください!」

  「クホッ」


  ダメ! あ、やはり止血が先なのか? わかんないのよ! どうすればいいの? 血を凍らせた方がいいの? 却って心臓に悪いかも…


  「僕がいないと、ユアンが、ダメになる、かもしれない。コホッ。面倒を、見てくれ…ああ、寒い、暗い。リリーナちゃんの、顔が、もっと見たい、のに…なんか、眠く、なって」

  「先輩? 先輩! 寝ちゃダメ! ねぇ! 起きて! 起きてよぉーっ! 先輩ーっ!」


  死んだ? 先輩は死んだの? 私を庇って? 先輩の運命を知ってるのに見殺しにした私を庇って? 私のせいだ! 私のせいで、先輩が… どうしよう、どうしよう、どうしよう…

  そうか。先輩はもう死んちゃったのか…はぁ…あーあ、先輩死んちゃったよ…先輩が死んでくれて本当によかったぁ。だって…


  「今、亡骸が新しい魂を迎え入れることになるでしょう。我が意思によって生まれし魂よ、我が言葉に従え、新しい体に入り、あたしのために命を捧げよ、レイズサーヴァント!」


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