幹部編 第5話 後 命知らずでございますか?
誰にでも人生を変えるチャンスは必ず一度だけ訪れる。俺の場合はまさしく今だ。
俺の魔力の量は高くないし、魔法の才能は人並みだ。誰でも俺を期待したことはなかった。才能はないから別に魔法使いになろうとは思わなかった。俺はごく普通な人生を過ごし、死んでいくのだろう。どうせつまらない人生を送って死ぬのなら、いっそ冒険者になって、緊張感に溢れた毎日を楽しもうと思って冒険者になった。
そして、俺、命知らずのハロルドは死なずに平均以上までに登った。平均以上になると、どれだけクエストをこなしても、ギルドに大きな貢献を果たさなければ、ランクをあげることは出来ない。俺にとっては、冒険者はもう俺に緊張感を味わせる職業ではなくなった。どうにかしてランクをあげて、もっと難しいクエストに挑戦したい。
そして、南の魔獣がやってきた。南の魔獣、それこそが、俺の命を輝かせる存在なのかもしれない。俺の通り名は命知らずのハロルドなんだけど、俺は別に死にたい訳じゃない。命を有意義なものにしたいんだ。強い魔物と相打ち出来るなら本望だ。だから、こんな魔獣が現れて本当にゾクゾクした。が、五十人揃わなければ出発は出来ない。クエストを受けなけらばランクアップは出来ない。ふざけんな、俺の輝かしい人生の一ページを49人と分け合わなければならないなんて、冗談じゃない。
命知らずのハロルドか? そうかもしれないな。何故なら、俺は、仲間を何度も皆殺しにした。挑戦になりそうなクエストはいつも仲間を殺してから目標との戦闘を楽しむ。全滅されてもおかしくない標的ばかりだから、俺だけ生きていても別に疑われてなかった。が、今回はさすがの俺でも、平均以上ランクの冒険者四十九人を始末するのは無理だ。なんとか考えないと…
クエストを受けてから三ヶ月、また34人しか集まっていない。そんな時、勇者と名乗る人物がクエストを受けに来た。あの人物が携えるあの羽のような剣は確かに聖剣メガミノハネだ。前代の聖剣の勇者が亡くなって、聖剣が新しい勇者を選んだのは聞いていたが、まだ国王が勇者に称号を授ける儀式は行われていない。
ひよっこ勇者のお陰で、出発出来るようになった。排除すべき冒険者も37人までに減った。でも、37人も無理だ。やはり確実に人数を減らせる方法を考えないと。
このチャンスを逃せば、俺はもうランクアップ出来ないなのかもしれない。南の魔獣と戦える機会なんて二度と出会わない可能性が高い。上手く勇者を利用して前に特注したこの天国に行かせるお守りで冒険者の数を減らさないと。




