幹部編 第4話 口車でございますか?
目安が50人で私達入れて38人か…まあ、ここは勇者に期待するしかない、か…でも、南の魔獣は聖剣に弱い訳ではない…南の魔獣については学んだことがないから、調べる必要がある。
図書館には南の魔獣の資料はなかった。昔南の魔獣を撃退したという亡き魔界の戦神シュウフリットの物語しかなかった。でも、この話は実話であの戦神が書いた南の魔獣に関する報告書のコッピーがギルドにある。
この報告書はあくまでも報告書で、未だ調べがついてないことが沢山書いてある。南の魔獣を、戰神は咆哮の魔獣、ハウリングと名付けた。でもその名前は認められていなかった。それは、魔獣の大技と関係している。戰神の報告書によれば、魔獣は体に鱗で覆われて、六本足で歯が多くて鋭い。戦闘体勢に入ると、全身の鱗が逆立ちして、顎が二つに割れる。三十メートルを越えた巨体でありながら六本足で持たされた凄まじい機動力で獲物を翻弄し、1本の指につき二本の二メートルを越えた鋭い爪で獲物を切り裂いて、推測四十メートルの舌で獲物を貫いて口に持っていき、60本以上の鋭い刃で切り刻む。外敵と戦う時は近く寄った敵を咆哮で吹き飛ばすとんでもない化け物だ。
南の魔獣の咆哮は戰神を咆哮の魔獣、ハウリングと名前をつけるほど危険性が高い。でも、この名前は魔界魔法審議会によって否決された。戰神の報告書によると、魔獣はいつもより深く息を吸い込んで咆哮をする時があるのだが、咆哮してるような動きをしても咆哮が聞こえない時がある。その時、何十人の兵士の体がバラバラになった。戰神は咆哮を集中させて、体をバラバラしたと推測したのだが。声だけで魔人をバラバラにできないと否定された。魔獣は撃退されただけで、死体は手に入れてなかったし、真実は謎のまま。
この世界の人達は音が振動だという常識はないみたい。でも、体をバラバラにできるあれの正体はさほど重要なことではない。重要なのは、あれは直線攻撃であること。あの攻撃は目に見えないけど、一直線でバラバラになっていく兵士の姿を見て戰神は直線攻撃だと判断した。
魔獣の狩場はよく変えるからほっておいても一年くらいで勝手に何処かに行くのだけれど、魔獣は夜行性で咆哮してばかりで近くに住んでいる住民の苦情もあって…それに、街に入って来ないけど、狩場に入った魔人は捕食される。隊商も襲われる可能性が高い。
こんな訳で、桜子達は危険な魔獣を処理しなければならなかった。そして、勇者が魔界に足を踏み入れた。
まあ、とりあえず、アサと勇者達に魔獣に関する情報を伝えた。
「お疲れ様、リリーナ」
「すこいじゃないか、リリーナちゃん。修道女なのに、物知りだね」
あ、そうだ。勇者は私のことを修道女だと思っていた。あの時の計画は上手くいきすぎだかな…変に修道女のフリをしないで、聖書の内容だけを覚えていればいい。ま、これはさておき。
「うん、だから咆哮に注意を払わなければならない」
「分かった」
「あ、いたいた。勇者様」
「誰?」
「勇者様は俺のことを知ってる訳ないだろう」
「すいません」
「謝らなくてもいいよ。勇者様」
「ユアンでいいよ」
「そうか。ユアン、ひとつ提案がある。ユアンはリーダーになる気があるのか?」
「リーダー?」
「そう」
え? いや、でもリーダーは要らないでしょ。だって、寄せ集めに連携は期待出来ないし。それはまあ、たまに作戦を考える人がリーダーに名乗り出る人もいないわけでもないけど、他人を推薦するなんて…元々、冒険者とは協調性が悪いとされるのだが…
「僕が?」
「そうだよ。ユアンなら出来る! 魔人のために魔獣を倒そうとする正義感。さすがに聖剣に選ばれた勇者だけある」
「は、はは、それほどでも」
何言ってんの? お前は魔人を助けたくて魔獣を倒そうとしてるわけじゃないでしょ。
「ユアンなら命を預けられるよ! みんなをまとめられるのはユアンをおいてほかにはないんだ。お願いんだ! 人助けだと思って、リーダーをやってくれないか?」
「分かった、そこまで言うなら、引き受けよう」
これはどう見ても勇者はうまいこと乗せられてる。先輩は止めないの? あ、いや、先輩は出来る人なら、最初からアサの嘘を信じて桜子の屋敷に来ることはなかった。
かと言って、私は勇者にどうこう言える立場じゃない。
「そうか! 良かった、皆に伝えておくよ」
行っちゃった。あいつ、何を企んでいたのか…
「ユアンさん、本当にリーダーになるんのですか? 冒険者じゃないのに、いきなりリーダーになるのは、嫌われるかもしれないですよ」
「それでも構わない。僕は勇者だ。人の頼みを断るわけにはいけないのだ」
これは言っても無駄みたいだね。
実は運を確認するのはそうなに好きじゃない。だって、運を確認するのはある意味未来を読むと同じじゃないか。でも、仕方ないわ。あ、アサも私も勇者も大丈夫なのだが、うん、先輩は死ぬね。
さて、どうしようかな…




