幹部編 第3話 前 婚約でございますか?
え、いや、話じゃダメって…無理だから…
「あのね、アサ、ちゃんと状況を考えて。勇者との会話を避けるのは無理なんじゃないのかな?」
「話しかけられたら私が話す。とにかくリリーナは勇者と話じゃダメ」
何? 恋人でもないのに、どうして私が 縛られなければいけないわけ? アサのくせに、生意気な…やはりお払い箱にすべきなのか…でもダメ、アサはすずなお母さんなんだから。でも、性格は昔と違うでしょ? 本当にお母さんだったの? 記憶はちゃんと継承してるみたいだけれど…やり難い…
そのあと、私達は宿屋の部屋で食事を始めた。アサと私は自分の分のお弁当を持ってきたけど、勇者と先輩はパンか…そんなの足りるのかな?
「リリーナ、あーんして」
「ちょ、アサ、やめなさい」
「仲いいんだね」
「ええ、他の人が割り込む余地なんてありませんわ」
「あ、あぁ…それより、見たよ、アサちゃんの手配書。生け捕りのみ。アサちゃんは確か貴族だったよな。どうして手配されるようになったのか? ああ、わかった! アサちゃんは十三歳だから、親の決めた婚約が嫌だから逃げたとか? 何か困ったことがあったら言ってね」
「…」
勇者、うざい…悪意はないと思うけど。
「リリーナちゃんは? 好きな人とか居たりする?」
三つ年下だから13だと思ってるんだ…面倒な…魔界だと赤ちゃんだと思われるけど、人間の国では結婚出来る年齢なんだから…
あ、これ、どう答えるべきか? 普通に居ないよと返事したら面倒なことになりそう。アサが、やはり勇者に気があるんだなとか言われそう。でも、いると言ったら、アサに告白にしてるようなもの…さて、どうしようか…
「あ、そういえば、ユアンさんはどうやって勇者になったのですか?」
「ある日、優しい女の声に呼ばれて山奥に行ったら、そこに聖剣があった」
「そうだったのか」
「リリーナ、話をそらしちゃダメよ。好きな人はいるの?」
アサ…お前…
「そうですね。頭の角が取れる前に恋をするつもりはありません」
「そうか。それもそうだな。よし、頑張って魔獣を倒そう」
なんだ、テンションがたかそうだ。まさか、女の子が助けられたら恋に落ちでしまうような下らない妄想をしているわけじゃないでしょうね。高嶺の花より落とせやすい女の方がモテると言うけど…あれはイケメンに限るから。勇者をイケメンと思う人もいるかもしれないが、頭がねぇ…
「さぁ、出発しよう! 魔獣を倒すんだ」