幹部編 第2話 羽根でございますか?
「えーと、セレンさんは大佐さんのことをどう思ってるんですか?」
「大佐? 平気で女性に恥をかかせる救いのないバカだと思ってる」
「大佐さんと知り合った頃からそう思っていたのですか?」
「いや」
「では、いつからですか?」
「そうね。あいつの父親が亡くなった時くらいかな。厳しかったからその反動でしょうね。昔はもっと、こう、可愛げのあるバカみたいな感じだった」
「では、大佐さんの母親と会ったことがあります?」
「まあ。あっ」
「そうですよ。大佐さんの母親からのプレッシャーと悪い友達の悪い乗りのせいで大佐さんはこうなってしまったのです」
「そうだったのか…だから、一人称が俺から、僕に戻ったのか」
「はい。ですから、大佐さんのことを以前のように接触してくれませんか?」
「そういうなら…よし、わかった」
「ありがとうございます」
おや、全く脈なしという訳でもなさそう?
「リリーナちゃんは大佐のことが好きなのか?」
「恋愛感情はないですけれど、魔人としては好きなのですよ」
「そうか。そうだね、あいつにはリリーナちゃんが勿体ないからな」
本当にそうなのよね。
「あともう一つ聞きたいことがあります」
「何? 何でも聞いて」
「えーと。ゴーストさんが私のことをよく思っていないようですが」
「ああ、それね。人間が怖い魔人は多い。何せ、私達の臓器を魔法石にするからね。だから、人間語を学ぶ魔人はあんまりいないんだ。魔人語を学ぶ人間は多いけど、私達は人間を信用できない。それが原因で、人間と関わることは全部人間語を話せるゴーストに任せることにしてる。でも、今はリリーナに同行させれば誰でも人間界に行けるから、リリーナちゃんのことを良く思わないでしょ」
嫌いじゃなくで怖いなのか…そういえば、以前、大佐に魔法石を見せたことがあったな。大佐は興味津々してたのに…
「そうだ。リリーナちゃん。ここに来る前にゴーストと会ったことある?」
「あ、ありましたね」
「やはりリリーナちゃんだったのか。その時、リリーナちゃんはゴーストの能力が人間界の常識と言ったが、本当なのか?」
あいつ、覚えていたのか…
「常識ほどではありませんか、軍の上層部と貴族なら皆知っていますよ」
「そうかぁ。それも含めてリリーナちゃんのことを嫌っていたんだ。まあ、八つ当たりだけど」
「そうでしたか」
「なんなら私が仲良くさせようか?」
「え? そんな、セレンさんに面倒かけられないよ」
別にゴーストと仲良くなりたくないけど。ああいう人は苦手なのよね。人の気持ちを構えなしで自分の気持ちばかり押し付ける…それに、私は誰からも好かれるより、特定少数の人から好かれたいのだ。関係を維持するのは大変だからね。ゴーストなんかに構う余裕なんてないのよ。
「面倒だなんて、リリーナちゃん遠慮しすぎ。大丈夫、お姉さんにお任せ! あ、嫌だ。私、勝手に年下だと思ってた。リリーナちゃん歳いくつ?」
「来月で十三歳になります」
「十三!? 赤ちゃんじゃない?」
またか…
この後は色々他愛のないことを話した。セレンは結構話しやすい人で頼りになりそうだ。今まで出会った人の中でも一番いい性格してるかもしれない。
「バイバイ、リリーナちゃん。大変だと思うけど、明日は頑張るのよ」
「はい。バイバイ」
大佐にちょっと勿体ないかな。
そして、私は待ってくれた桜子と一緒に屋敷に帰った。
翌朝、私達はスピードドラゴン車を乗って南を目指していた。勇者は後ろ向きな座席が酔いやすいから前向きな座席を私達に譲った。
これが聖剣メガミノハネ。本当に白い羽根なんだ。他には、鼻水とかあるらしいけど。ユアンが剣の勇者で本当によかった。鼻水を持て戦う勇者とか…鼻水に選ばれた勇者とか…
「ふふ」
あ、いけない、声出しちゃった。
聖なる武器はどうやって勇者を選ぶのでしょ? 抜いたら勇者になれるかな? 鼻水を必死に抜くとか… 確か、聖なる盾はメガミノハナクソだったっけ。朝目が覚めたら隣に鼻糞が…
「ふふ」
考えるのをやめましょう。変人だと思われてしまう。
「ナナリーちゃん、ごめん」
また?
「私、謝られるようなことはされていませんよ」
「いや、僕のせいで…」
「ユアンさんは私のために南の魔獣を倒してくれるじゃないですか」
「ありがとう、ナナリーちゃん」
「リリーナっていいですよ」
「じゃあ、リリーナちゃん」
ユアンさんはいい人なんだけど、そういう頭悪そうなお人好しは好きになれない。バカだったころの私を思い出させるから。
南の魔獣が棲む平原の近くにある町に着いた。
「リリーナ、勇者のことが好き?」
はぁ?
「嫌いじゃないけど、好きでもないな」
「嘘だ。好きに決まってる」
はぁ?
「え、アサ、どうしたの?」
「リリーナは勇者のことが好きなんでしょう」
「違うよ。どうしてそう思うの?」
「だって、先勇者に微笑んだから」
「あー。あれは違うのよ。あれはちょっと面白いことを考えたから」
「本当?」
「本当だよ」
「リリーナを信じてみるよ。でも、勇者と話しじゃダメだからね」




