序章 第9話 王女でございますか?
ここはアルフル王国、そして、わたくしはこの国の王様の一人娘、つまり、王女だ。
そう、わたくし、ニーナ・K・Y・アルフルは、この国の、たった一人の王女だ、未来の女王、もしくは、未来の王妃だ。
なのに、どうして、このわたくしがこんな料理を食べなければいけないのよ!
「ニーナ、あなたはもう十六才だ、王たる者は民の気持ちを分からなくてはならない、だから、今日から、あなたは民がいつも食べてる料理を食べなさい。」
急にこんな事言われでも、だって、昨日まで豪華な料理を食べてるのよ。そもそも、こんな硬いパンと味がないスープ、本当に料理と呼べるのかな?
こんな物を食べる人がいるわけないだろう、歯が持たないわ!
わたくしは信じない!だから!
「セバスチャン13、わたくしを、お城から連れ出して。」
「ひ・・・姫様!?」
「外にいきたいと言ってるのよ!」
「いけません、姫様、貴方様に万が一のことがあったら・・・」
「外が見たいと言っておる!」
「姫様、それだけは・・・」
「いいわ、お前がわたくしを外に連れ出すまで、何も食べませんわ!」
「姫様、お気持ちは分かりますが、外は危険過ぎます」
「あくまでもわたくしのお願いを聞いてくれないのね、分かった、晩餐の準備、しなくていいから」
「姫様・・・」
セバスチャン13はいつものように、料理を持ってきた。
「準備しなくていいと言ったではないか」
「仕方ありません、姫様、料理を食べたあと、出掛の用意を」
「セバスチャン13、ありがとう」
「もったいないお言葉です」
こうやって、わたくしは初めて、お城から出た。
馬車に乗ることも、これが初めて、でも、わたくし、お尻のお肉あまりないから、長い時間乗ると、お尻が痛くなった。
セバスチャン13との付き合いは長い、こうやって彼と旅をすると、初めて出会った時のことを思い出したわ。
「あなた、名前は?待って、言わなくていい、どうせセバスチャンなんでしょう」
「姫様、確かにセバスチャンでございます」
「あなたはわたくしが出会った13人目のセバスチャンだから、あなたはセバスチャン13だわ」
「姫様、確かにセバスチャンは多いですが、わたしのような優秀なセバスチャンは他にいません」
「あ!な!た!はセバスチャン13だ」
「はい!姫様」
本当に懐かしいわ、もう三年が経ったか。
「姫様、間もなく、バゼル公爵領に到着します」
「ええ!?バゼル公爵領って、ちょ・・・王都じゃないの?」
「いや、王都を見ても意味ありませんから」
「でも、わたくしが見たいのは、王都での人の食事だけ、王都から離れる必要はありませんわ」
「姫様、国王様が何故貴方様に庶民の料理を食べろと命じたか、分かりますか?」
「ええ、分かるわ、民の気持ちを分かるように、と」
「では、バゼル公爵領でいいです」
そうね、父上が治める土地は王都だけ、あの父上の王都は参考にならないわ。
「姫様、バゼル公爵領に到着しました。」
「あら、そう、では降りるわ。」
初めて外に出った、成程、城と随分違うのね。
汚い、こんなところに本当に住めるの?
「あなた達、こんな食べ物よく食べられるわね。あっ・・」
投げられた、このわたくしに、こんな汚いもので・・・
「セバスチャン13、あの無礼者を・・・」
あ、逃げだ!
「姫様、いけません。」
「だって、あの者は、わたくしに・・・」
「聞いて、姫様、あの者達は、そんなカビパンでも、必死に探した」
「カビって、なに?」
「長い時間に置くと、カビが生えてしまう、貴方様は見た事ないでしょう。でもね、このもの達は、そんなパンでも、一生懸命探しているのよ!」
「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない?」
「姫様!」
「そう言うと思った?」
「姫・・様?」
「セバスチャン13!!!」
「はい」
「もう分かったから、お城に戻るわよ!」
「かしこまりました」
待っているのは、怒っている父上でした!
「何故城から出た?」
怖い!やはり父上は怖い!
「あの、た・・民の気持ちを分かりたくて・・・」
あら?父上いまニヤッとしたか?いや、見間違いでしょう。
「よかろう!で、何か分かったか?」
「はい、わたくし、今まで本当に幸せ者でした、民はわたくしより、ずっと食えない物を食っている」
「まずまずだな、でも、罰は与える」
「え!?あっ、はい。」
「罰として、セバスチャンは三日間謹慎だ」
「父上、わたくしが無理矢理セバスチャン13に・・」
「だろうな。だからだ、王が過ちをおかすと、苦しむのはいつも王ではない、民だ!」
セバスチャン13、ごめんね。
「ニーナ、あなたはもう十六才、だから、使命を知って貰う。知っているだろう。わしが管理出来るのは王都だけだ。でも、いつの日か、あのくそ貴族共から、土地を取り戻す!でもな、あなたが駄目な王なら、何の意味もない!分かるか?」
「勿論です、父上。」
父上、こんな事考えてるのか?そうだね、もし全ての領地が、王都のようになったら、わたくしもこんな物を食べなくって済む、動機は不純でも、民の為なら別に悪くないわ。
先ずはセバスチャン13の見舞いに行くか。