魔界編 第10話 後 先輩でございますか?
「リリーナ様、あの店の中にいる赤髪の少年が勇者です」
「ありがとうございます。では、アサ、行こうか」
「うん」
隣にいるのは元生徒会長だ。本当に良かった、知ってる人がいて。
「あ、アサ、見て。あの人でもしかして」
「生徒会長」
アサの演技も上手くなったな。
「あ、君達。久しぶりだ。三の一の委員長のオカンと、図書室の…」
私の顔は覚えてるが、名前は知らないようだ。
「あ、はい、図書室のナナリーです」
「修道女になったのか! 良かったな。覚えてないか。昔、一度だけナナリーちゃんに話をかけたことがあった。授業に出ないで図書室にこもっていいのかって」
覚えてない…
「今アサと一緒に冒険者やっています」
「そうか、そうか」
「じゃあ、先輩は何しに魔界にきたのですか」
自然な導入だったかな?
「あ、僕達は観光しにきた」
観光? 絶対嘘。
「観光か。観光はおすすめ出来ません。知ってます? この近くの荒野って、リアジュウレウスが出るらしいですよ。そうですね、私達を雇う気はないですか」
「魅力的な提案なんだか、こう見えても僕は結構強いんだ。何せ、首席で卒業して勇者のパーティメンバーに選ばれたらからな。あ、こっちは当代の剣の勇者のユアンだ」
勇者のことは隠していない…
「勇者様サインをお願いできますか」
「サイン、はは、照れるな」
こんなのが勇者なのか…
「勇者様はどうして魔界に観光しに来ましたですか」
「勇者様って…ユアンでいいよ。そうだね、知っている通り、勇者は軍によって管理されてるんだ。だから知っておきたいんだ。これから戦う、かもしれない相手のことを、自分の目で見たい」
「弱点を調べるとか?」
「違うよ。魔人も僕達と同じく、感情を持っていること」
「そうなんだぁ。勇者様…あ、いや、ユアンさんは優しいですね」
嘘はついてない、かも? それなら…
「あ、そういえば、ユアンさん知ってます?南にすごい魔獣が暴れていますよ。討伐隊の被害も大きくて…ユアンさんは魔獣の討伐に参加しますか」
優しい勇者様は魔人も見捨てないでしょ。
「そうなのか。わかった、参加するよ」
嘘かどうかはわからないけど、一応ノルマ達成だね。嘘かどうかの判断は魔界戦隊ファイブに任せよう。
「今日はユアンさんと先輩に会えて本当に良かった。では、私達はこれで」
「あ、ちょっと待って、リリーナ。私はユアンさんと握手したいの」
アサ…そうだな、アサも少女だったな。
「僕と? いいよ、喜んで。あ、これは?」
ん?
「では、ユアンさん、また何処かで」
「また何処かで」
そうか…アサも勇者に憧れるのか…
メリクリです!