魔界編 第10話 前 聖書でございますか?
修道服を着るのはこれが初めて。
「わー! すごく似合ってる!」
「あ、でも、これ、膨らんでるよね。やはりウィンプルでは角は隠せない」
「あ、リリーナ、魔力を抑えてみて。魔法を使う時角が大きくなるでしょ。だから、魔力を抑えば小さくなるはずよ」
私自身は魔力を持ってないからそういうのはちょっと苦手けど、十センチから五センチくらいまでに縮んだ。
「猫の耳みたい! かわいい!」
「でも、これは怪しまれない?」
「大丈夫、大丈夫」
「あ、そうそう。修道女と言う設定だから、聖書も欲しい」
「いいね、雰囲気出るね。直ぐ手配するよ」
「いつ出発するの?」
「明日だよ。勇者が何をやらしかたら遅いから」
「そうか、1日しかないのか…」
「うん? 何?」
「うーん、もっと修道女っぼく振る舞いたいので、聖書を読むつもり」
「そこまでやらなくでも…バレないよ」
「大丈夫。今日は他にやることはない」
「そうか、でも無理しないでね」
一流の嘘つきは人に与える印象をコントロール出来るらしい。少しでも勇者のイメージ通りの修道女を演じる為に、聖書を読まないと。
桜子は魔人だから腹は減らないけど、記憶を取り戻した彼女は、またご飯を食べたくなったらしい。残ったタケノコで炊き込みご飯を作った。調味料は揃っていないのにけど結構美味しい。素材が良かったのかな。
桜子は魔界の生活について色々話した。どうやら幸せだったらしい。アサは私に出会う前の事を話したくないみたい。私は前世と同じくひとり親家庭だと話した。
食事のあと、聖書が届いた。結構分厚いけど、内容は単調。要するに、女神様はこの世界の全てを作った。女神様は人を愛してる。女神様は信じる者に奇跡の魔法、つまり光魔法を授けると、授けられし者達が奇跡を起こした物語。
まあ、前にいた科学の世界なんて、神の存在ですら証明されてないからな。こっちの方はまだましか…
あとは、他人を愛し、他人のために犠牲すべしみたいなことを…
「アサさん」
「うん?」
「勇者って、どんな人?」
「さぁ?」
「さぁって、あなたの国の勇者じゃないか?」
「魔族の人はみんな魔王に詳しいの?」
「それは…」
なんかアサそっけないな…出会ったばかりの頃はお人好しだったのに…
「アサ、知ってることだけでいいから話してあげて」
「リリーナ、ごめんなさい。聖書を読んでいるのに、邪魔しちゃって」
「あ、私は大丈夫。それに私も聴きたいし」
「リリーナ…まあ、いいわ。勇者については聖剣を持ってる以外は知らない。けど勇者と行動を共にする人なら知ってる。リリーナも知ってるはずよ。私達の三つ上の先輩だ」