魔界編 第9話 すずなでございますか?
懐かしい味で前世の記憶が蘇りました。わたくしはすずなでした。リリーナはわたくしの前世の娘でしたか…なるほど、初めて逢えました時感じた懐かしさの正体はこれですか。
ところで、リリーナは何処にいっらしゃるのかしら? 部屋にいっらしゃるど思いましたけれど…まあ、わたくしも整理の時間が欲しい所です。
そう、今のわたくしは、すずななのでしょうか? それとも、アサなのでしょうか? そうですね…多分、アサなのでしょうね。すずなより、アサの方がキャラが濃いかと存じます。
けれど、リリーナも昔と変わりましたわ。しろはそんなに冷たくありませんでしたから。
あ、もしかして、しろは前世の記憶がお持ちでない? いいえ、あの料理、昔の記憶がなければ作れないはずなのです。ですから…
あ、帰ってきました。
「お帰りなさい、しろ」
予想通り、リリーナは前世の記憶を持っていっらしゃいますね。
けれど、わたくしが自殺したのがショックだったみたいです。そして睡眠魔法を使って強制的に自分を眠らせました。そんなリリーナ、初めて見ました…
逃げられないように、手を握って寝ましょう。
翌日、リリーナはすずなの死を受け入れることが出来ました。そういうどころは昔と変わりませんね。充分な証拠と理由を見せれば、簡単に納得します。
「あ、桜子も前世のことを思い出した。一緒に桜子の部屋に行こう」
リリーナの話に寄りますと、桜子がクネス・スネークだったんです。に、憎い! 桜子が憎い! リリーナは桜子なんかのために、冒険者になりましたのね。桜子を会うためだけに、魔界に参りましたのね。桜子と暮すために、ここに引っ越しましたのね。リリーナはわたくしを騙しましたね。わたくしは今までなんのために…
「私もしろがこの世界に転生したことを知ったからここに転生したよ。ねぇ、しろ、お願い、桜子のことは放って置いて二人で住もう」
お願い、リリーナ!
「ごめんなさい、アサ。ちょっとだけ遅かったの…もし、桜子が前世のことを思え出せる前にそう言ってくれれば…桜子の記憶を蘇らせた上で、放って置くのはちょっと無責任だと思う」
左様でございますか…全部、全部桜子のせいなんですね。桜子は邪魔者になってしまいましたか。誠に残念です。殺さなければ…殺すのよ…殺して…あ、けれど、リリーナが悲しみますわ。悲しんでしまいます。そうですわ。死なせますのよ…死んで…死んでくれないと…
「桜子、おはよう」
「おはよう、すず」
日本語ですね。間違いありません。この魔人が桜子なのですね。
「あ、こっちはアサ・オカン。私の前世のお母さん、まだ覚えてる?」
「ああ、おばさん」
「おばさんはやめて!」
「あ、ごめんなさい」
息苦しいですわ。胸が、締め付けられたような…
「すずは全然変わっていないのね」
変わっていない、ですって…リリーナと仲良くなるために、わたくしは一体どれほど苦労したと思っていっらしゃいる? 不公平ですわ。
「ね、すず、これからどうするの?」
「どうするって、今まで通りにすればいいと思う。別にクネス・スネークとしての記憶が消えたわけじゃないし」
「そうだね。あ、前に居た世界の科学をこの世界の人に教えるのはどう?」
「それはやめたほうがいいと思う」
「え? どうして?」
「だって、この魔法の世界を選んだ人に悪いから」
「それもそうだな」
あれ、もしかして?
「リリーナは生まれた時から前世のことを憶えているの?」
「そうだけど」
そうでしたか…魔力がないのはこれが原因なのですね。五千点もするもの。桜子のために…
「あ、そうそう。勇者の調査に、アサも同行させるから」
「勇者の調査?」
「うん。剣の勇者が魔界に入ったから、目的を調べることになった」
「剣の勇者か…剣の勇者は私達の国の勇者なのよ」
「そういえば…あ、でも、角隠さないと」
「それなら、私と同じ、魔女帽子を被ればいいんじゃないの?」
「うん、でも、私、魔法殆ど使えないし。魔法使いの格好はちょっと。頭巾でいいよ」
「「ダメ!」」
この子は昔からこうなのですよ。今は昔のように貧乏なわけでもありませんし。
「白いワンピースと麦わら帽子でどう? 昔ずっと思ったけど、すずなら絶対似合うよ」
「いや、それは流石に、ねぇ。ほら、ここ中世みたいな時代だし」
「ドレスはどう? ドレスなら持ってるよ」
「ドレスを着ているお嬢さんと魔法使いの組み合わせもどうかと」
「それじゃさ、修道女はどう?」
「修道女? 司祭ではなくて?」
「うん。光と闇属性の魔法適性は後天的なもので、光適性は女神信仰で得られるものなんだ。光魔法を習得した修道女は司祭になる」
「あ、なるほど。じゃ、桜子、修道服調達してくれないかな?」
「もちろん。あ、私は何を着ればいい?」
「桜子は影に隠れるから別になんても」
え、桜子もご一緒に?
「私とリリーナ二人でいいじゃないか? リリーナは私が守る」
「いや、勇者は人間の中でも最強と聞く。私がついててあげないと」
左様でございますか…そうですね、勇者なら桜子を殺せますね。悪く思わないでくださいな。