ドラゴン編 第12話 ゾンビでございますか?
「さあ、リリーナ、勝負だ」
「うん、じゃあ、ルールを説明するね。5回戦制で、勝者が決まっても5回戦までやります。1、2と5回戦の内容は私が決めます、3回戦と4回戦の内容は大佐さんが決めます」
「おお、いいぜ」
「では、第1試合の内容を説明しますね、第1試合は一対一の戦闘になります」
「おお、じゃあここに来て死体を選べ」
色んな種族がいるね、私は魔物研究員で、魔人研究員ではない…どの種族が強いのがわかんない…まあ、大佐と同じ種族を選べばいい。
「僕は鬼人にするよ」
「では私も」
「さあ、いくよ。古より伝えられし生命の秘術で蘇りし者よ、我が剣と盾になれ、コントロールアンデット!」
おお、死体が動いた! へぇ、初めて見た…死霊術はすごいんだね…
では私も…うん、魂が抜けてる…ではレイスアンデットで行くか。
「死せる者達よ、目を覚まして、目の前にいる生ける者達を糧にし、その肉を貪り食う、その血を啜り、己の肉体を作りたまえ、レイスアンデット! 」
あれ、角が木の枝みたいに広がって、紫色で光ってる…え、これどうすんの? 元に戻るの?
なるほど、角の魔力を消費して死霊術を発動するんだな。それに、角の魔力は休めば回復する、けれど、角の魔力は死霊術しか使えない…
あ、私のアンデットが立ち上がった…
「エグい呪文だね」
「うん、まぁ」
「これを考えたのはリリーナちゃん? 」
「いいえ、友達が考えてくれました」
「なるほど」
「うおおおおー! 」
え?
「おい、不意打ち? また試合が始まっていねぇぞ、はぁ、いいか、アンデットよ、敵を攻撃しろ」
角が元に戻った…
この呪文で蘇った死体は私以外の動く物を見境なく襲う…やはり使いにくい…
「うおおおー! 」
うるさい!
「なんだその呪文、ゾンビをバーサーカー化しただと!? 」
うわ、これは酷い…アンデットって、痛覚がない、筋肉のリミッターがないから力強い、ゆっくり歩く印象だったけど…うん、大佐のゾンビは全く想像通りのゾンビだったけど、私のは…走るし、叫ぶし、動きも早い…なんが、ゾンビより、飢えた野獣みたい…
あっさり勝ったけど、クエストで使えそうにないわ…アサを襲ったら大変だから…
「なるほど、流石、不死を司るドラゴンが使う死霊術だ、すごいよ! さあ、二回戦の内容を」
「そうだなぁ、では、アンデットを歌わせて、上手い方が勝ち、と言うことで」
「はあ? 何言ってんだ! ゾンビが歌えるわけないだろう? 」
「ここにいる死体、歌えない種族はありますか? 」
「ない、が、本当に歌えるゾンビが作れるならマーメイドがおススメ」
「わかりました、では…今、亡骸が新しい魂を迎え入れることになるでしょう。我が意思によって生まれし魂よ、我が言葉に従え、新しい体に入り、あたしのために命を捧げよ、レイズサーヴァント! 」
また角が…毎回こうなるの?
「あなたが私のマスターか? 」
「そうだよ」
「どうぞご命令を」
「待って、リリーナちゃん、あのバーサーカーゾンビは放置? 」
あっ!
「ごめんなさい、あのゾンビは、あたしの言うことを聞かないのです…」
「はぁ? 」
「ですから、あの死霊術は死体を蘇るだけで、コントロールするわけではない」
「まじかよ。仕方がない、古より伝えられし生命の秘術よ、土に生命を与え、我が壁になれ、コントロールゴーレム! 」
これが噂の…死体がなくでもアンデットを作れる。私の死霊術が出来ないこと…
それにしても、あの暴走ゾンビ、本当に強いのね。でも頭が悪い、ゴーレムを噛むなんて…
「リリーナちゃんの尻拭いをしたよ」
く、屈辱だ…
「セクハラですよ、大佐さん。やはり大佐さんはエロスケべなんですね…でも、一応、ありがとう…」
「おお、リリーナちゃん、かわ…」
「さあ、マーメイドさん、歌って」
「スルー?」
「かしこまりました」
何というか、急に眠気が…
「マスター、起きて」
「あ? 」
私、寝ちゃったの? ふん、すごいね、ゾンビなのに、歌えるだけではなく、マーメイドの能力も使えるんだ…
「これは驚いた、まさかマーメイドの催眠術も使えるとは。リリーナちゃんの勝ちだ。が、次の勝負内容は僕が決める。 死体なしで出来るだけ多くのアンデットを作る、より多く作った方の勝ち」
やはりそうきたか…
「死体がないと、私、アンデットを作れないけど」
「じゃあ、僕の勝ちだな」
「うん…」
「4回戦の勝負内容は、1分間でゴーレム含めず、より多くアンデットを蘇らせる方が勝つ」
これもだめかも、私の死霊術は1回の詠唱で蘇らせるアンデットは一体だけ…
「始め! 古より伝えられし生命の秘術で蘇りし者よ、我が剣と盾になれ、コントロールデット!」
詠唱一回で全てのアンデットを蘇らせた…
まあ、焦ることはない。何せ、5回戦の内容を決めるのは私だからね。大佐もバカだね。こんな不公平な勝負でも受けてくれるなんて、よほど私を家に連れて行きたかったでしょね。大佐の先の反応を見れば分かる。大佐の死霊術は細かいことは出来ない。
「5回戦になりましたね、では、アンデットに絵を描いてもらいましょう」
「リリーナちゃんそれはねぇだろう」
「どうして? 死霊術は別に戦うためだけに編み出した魔法ではないでしょう」
「それはそうだけど…はあ、結局うちに来てもらえないのか…」
「行ってもいいですけど…」
「今なんと言った? 」
「ですから、大佐の家に行ってもいいですって」




