序章 第7話 親友でございますか?
桜子視点です
あたしは佐倉桜子だ、美人でなければ、不細工でもない、成績も普通、特別な才能はない。才能が無いなんてのはちゃんと頑張ったから言えるのよ、母がいる限り、努力しなくちゃならないのよ!一人娘だから、母はあたしに対して過剰な期待をしている、ピアノ、バレエ、生け花も習った、でも何一つ出来なかった。
ある日、母があたしに期待しなくなった、あの日から、母はあたしの事を出来損ないと呼び始めた、あれから、母の事が嫌いで嫌いで仕方がない、同じ空気さえ吸いたくない。
時々思う、あたしは本当に出来損ないでしょうか?神様はあたしに一つも才能も与えなかったの?
家に居たくない、だから、出来るだけ、友達と遊ぶ、外で寝る、母と会わない為に。母も仕事が忙しいせいか、それとも、あたしのような出来損ないに愛想を尽きたのか、特に何も言わなかった。
高校生になって、引っ越した、いや、母のせいで、昔の友達と離れ離れになった、母が引越ししたかったそうだ、一体何の為に?
ずっと友達だって言ったのに、全然連絡してこない、こっちから連絡してみだけど、少し話をしただけで電話を切ってしまう。
まぁ、いいけど、新しい学校で友達を作ろう。
「先ずは、出席番号順で自己紹介しましょう。」
第一印象は一番大事だから、印象を残るような自己紹介をしないと。
「さくら、さくら、のやまも、さとも~はい、佐倉桜子で~す~!好きなものはさくら、好きな花もさくら、好きな食べ物もさくらだよ!よろしくお願いします!」
あれ?視線が痛い、まさか、滑ったのか?
「鈴川すずしろです、よろしく。」
視線がすぐにあの子に集まった、無理もない、こんな綺麗な人は初めて見た、見た目よりも、気品が溢れて、目が逸らせない、こんな人って本当にいるんだ・・・
そんな人がクラスの中心になってもおかしくないけど、そうでもないみたい、チャイム が鳴ったら、すぐにいなくなるし、いつも本を読んで、近寄り難い雰囲気を出しまくって、中心になる所か、友達の一人もいない。
近寄り難い雰囲気と言っても、話しかけるなと言う雰囲気じゃない、邪魔したら悪いみたいな感じ。
あたしが勇気を出して話をしてみたけど、シンプルな返事しか帰って来ない。しかも、男子から高嶺の花扱いされ、かわいそうに、完全に一人ぼっちだ。
あたしは、彼女の事が嫌いだ、見る度に思う、そんな完璧な人間がいるのに、何故あたしは、こんな出来損ないなのよ!神様、不公平だ!
自己紹介で滑ったせいかな?高嶺の花じゃないのに、あたしも友達がいない。だから、一人外で夕食を済ませなくちゃ、母と一緒に食べたくないから。
引越し前に友達と色んなファミレスを回ったけど、今は一人で回るしかないな・・・
おっ!このファミレス、いいね、入ってみるか。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
うわっ!鈴川さんだ!こんなところでバイトしてるんだ。
「はい、一人です。」
「ご案内致します、こちらへどうぞ。」
うわっ!全然表情が無い、バイト先でもポーカーフェイスなのね、こいつは!
「こちらがメニューでございます、ご注文が決まったらお呼びください。それでは失礼致します。」
笑うと気品がなくなるかもしれないけど、やっぱりポーカーフェイスは嫌だな。
「ねぇ~ウエイトレスさん、LIXE教えてよ~」
うわっ!やっぱりナンパされるんだ。
「ご注文はいかがなさいますか?」
「教えたら注文するよ」
「今日のお勧めはハンバーグセットでございます。」
「へぇ~冷たいな~でもこういうツンツンの子も好きよ~」
「ハンバーグセット一つ、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「注文したら、LIXE教えるよね?」
「お客様、そんなサービスは行なっておりません。」
「つれないこと言わないで、ほら、こんなに頼んでいるんだからさ。」
「困ります、他のお客様にも迷惑をかけます。」
「文句ある奴はあるのか?へぇ!」
「お母さん、あのお兄さんが女の子をいじめてる!」
「見ちゃだめよ!」
「ほら、誰にも迷惑掛けてないだろう。」
腕まで掴んでる、キモい!
「迷惑だ!あたしはウエイトレスさんを待っている、他を当たれ。」
「佐倉さん!?」
「不細工は黙ってろ!」
「不細工だと!?」
あたしは電話を掛けた。
「おじさん、いま勤務中?ファミレスにナンパ野郎がいるんだ、強制わいせつで逮捕して、あ、場所は・・・」
「分かった、分かったから警察呼ばないで。もう帰るから!」
「ありがとう、佐倉さん、助かりましたわ。」
「あたしの名前知っているの?」
「はい、自己紹介、あの、印象に残るから。」
「うわっ!恥ずかしい、忘れてくれ。」
こうやって、あたしはすずしろと友達になった。彼女も間抜けな一面がある、あの子、買い物したあと、お釣りを受けとって、買ったものを取り忘れたり、炊飯器のスイッチを入れ忘れたりするのよ、本当にあたしが居ないとダメなんだから。
あたしを頼っている、あたしはこんなに出来る人に頼られているから、存在意義を見つけた。
あたしがいないと、彼女は何も出来ない、彼女の友達はあたし一人で充分だわ!あの虫けら共があたしと彼女がいるところを見て、彼女は冷たい人じゃないと気づき、彼女をお出かけに誘った!恥を知れ、俗物!
幸い、すずは行かなかった、代わりにあたしが誘われた、いいだろう、あたし達の間に入り込まないでと、きっちり教えてあげるわ!
そして、あたしはあの虫けら共と一緒に、事故で死んだ。