ドラゴン編 第7話 呪文でございますか?
「話は済んだか? もう続けてもいいのか? あたしの大切な時間を無駄にしないで欲しいな」
そう言ってるけど、ちゃんと終わるまでまってくれるんだね、ちょっと見直したかも。
「はい、待たせてごめん、もういいよ」
「じゃあ、早く呪文を考えろう、そうだな、まずは一番基本な死霊術、レイスアンデットから始めようか。これはもう魂が抜けだ死体にしか使えない死霊術だ、術者以外は見境なく襲う、けど魔力の消費が一番低い死霊術だ」
呪文か…あたし、こう言う才能はないと思う。困ったな、それに、こういうことを考えるのはちょっと恥ずかしい!
何? こういうものを考える人って、元の世界では中二病とか、厨二病とか呼ばれるんじゃないの?
それに、あたしは理系だったの。困ったね、本当にどうしよう?
うん、呪文は魔法を形にする言葉、そう理解してもいいよね、あたしはアンデットに何を望むの?
違う、これは魔力節約出来る死霊術、簡単な呪文ほど魔力を節約出来る。
「うん、アンデット、起きなさい! 」
「え!? 」
「リリーナ、もしかして、今のが呪文? 」
「うん、そうだよ」
「こんな呪文じゃあ…リリーナ、呪文は一度決めたら変えられないのよ」
「悪くはない、けど、この呪文なら、一度に一体しかアンデットを蘇らせない、それでいいのか? 」
「じゃあ、アンデット達、起きなさい、と言うのはどう? 」
「リリーナ…」
「いいんじゃないかな」
「そんな適当な…」
「じゃあ、次はレイズサーヴァント、魔力で死体に仮想人格を与え、服従させる、高位な死霊術だ」
これは難しい…
「アンデットさん助けて! 」
「リリーナ、まさか…」
「うん、そうよ、これが呪文」
「リリーナ、あたしに考えらせるのは、どう? 」
「呪文と術者の相性はとっても重要なんだ、自分が考えるべきだ」
「そんなことは分かってる、けれどリリーナ、本当にこれでいいの? 一生後悔することになるわよ」
「おい、娘、呪文は術者を映す鏡でもある、他人に決められていいものじゃない」
良かった、アサが考えてくれる、恥ずかしいからね、アサが考えくれるのは有難い。
「それなら大丈夫、アサとは長い付き合いだからな」
「リリーナ、うん、うん、あたしに任せて、必ずリリーナとビッタリの呪文を考えるから」
「はぁ、勝手にしろ、どうせあたしの言うことなんて、だーれも聞かないから」
うわ、めんどくさい…
「少しでもドラゴンさんのカコイイ呪文に近づきたいからね」
「そうだよな、カコイイだよな、あたしの呪文、そうだ、不死なドラゴンであるあたししか使える呪文だんだから、一番カコイイ呪文は…」
やばっ! メンヘラを褒めると、よりめんどくさくなる。
「一遍言われても覚えられないからね、アサ、明日までに呪文を作れる? 」
「はい」
「では、今日はここで、明日またくるから」
「絶対に来るんだ、忘れるな」
「はいはい、あ、アサは先に宿屋に戻ってね」
「え? リリーナ、どこに行くの? 」
「あ、ちょっとね、寄りたいどころがあって」
「では、あたしも」
「いや、アサは宿屋に戻って、呪文を考えようよ」
「大丈夫、そんなに時間かかないから」
「ビッタリの呪文を考えてくれるんじゃないの? 」
「う、うん、わかった、先に戻るね」
はぁ、なんなの、この変な気持ち? 不倫とかする人もこんな気持ちになるのかな?
「こんにちは、クレスさん」
「あなた…その角は? 」
「うん、色々があって」
「どんなことがあったらこうなる、あなた人間でしょう」
「ドラゴンさん、自信がなさそうから、自信を付けようと」
「付けようと? 」
「死霊術で大佐とか言う魔人に勝たなければならなくなった…」
「あなた、バカね、初めて会った時からそう思ったけど、あなたはバカだ、どうしようもないバカだ」
「ちょっと、バカ連呼しないでよ」
「バカにバカと言って何が悪い、はぁ、どうしよう、あたしの責任だ、安心して、あたしが責任を持って、あなたを人間に戻せるから」
「いや、別にそんな、あたしは別に気にしてないから、ドラゴンさんも、クレスさんをお友達になれたし」
「あなた、やはりバカだな」
責任を感じさせたか、いい、実にいい。
「でも、嫌いじゃない」
「じゃあ、一つ頼んでもいいのかな? 」
「何? あたしが出来ることならしてあげる、そう約束したじゃないか? 」
「そうだったわね、あたし、一度大佐にあってみたい、合わせてくれないかな? 」
「わかった、次回の会議に、あなたも連れて行くよ、それでいい? 」
「うん、ありがとう」
「あなたって、ちょっと危なっかしくて、なんかほっとけないんだ、お願いだから、知らない男についていかないで、エリックが人間を食べたいと言っても、たべさせないでね。」
やはりクレスは桜子だ、こういうところは全然変わっていないのね。
「それに、あなたを見ると、ちょっと懐かしい感じがする、不思議だね、なんだか、あなたとは前から知り合ったような感じがする」
「そう、あたしも、クレスさんを見って、以前の友達を思い出した」
「そうなのか? 」
「はい、その友達の名前はさーくーらーこ、と言うの」
「う、頭が…痛い…」
「急にどうしたの、体調でも悪いのか?」
ふふ、我ながら白々しい、この調子で思い出させてあげるからな、桜子。一方的に忘れるなんて、許さない。