ドラゴン編 第6話 麻酔でございますか?
「あとはこの角を魔法石に加工しないと 」
「うん? どうして? 結晶化したら、弱くなるのよ? 」
「でも、魔法石にしないと、人間は属性魔法以外の魔法を使えないのよ」
ここはアサに任せよう、あたしは魔法に詳しくないから。
「あぁ、それなら大丈夫、魔法回路を移植すれば」
「そんなことが出来るの? 」
「出来るよ」
あれ?
「ドラゴンさん、魔法回路を移動することが出来るのなら、角を切る意味は? 」
「何言ってるの? 角を魔法回路ごと移植するのよ」
「え? 移植って、どうやって? 」
「任せて、この角は君の体の一部になるのよ」
移植って、つまり、あたし、人間やめてしまうの? あたしは人間をやめるぞ! アサ! 的な? あたしは別に気にしないけど…
「アサ、あたしが人間をやめたら、あたしのことを嫌いになる? 」
「リリーナ…そんなのずるいよ、嫌いになれるわけないでしょう? 」
ずるい? アイの時が一番嫌いな言葉だったけど、今は違う。だって、ずるいは賢いってことでしょう。
「ありがとう。じゃ始めよ、ドラゴンさん、痛くしないでね」
「あ、ごめん、多分、凄く痛いから」
痛いのはいや、麻酔薬なんがないの? あ、そうだ。
「ねぇ、アサ、アサの安眠魔法なら、あたしをずっと眠らせることが出来る? 」
「あ、ご、ごめんなさい、リリーナ、あの魔法は眠らせるだけだよ、痛くしたら普通に起きるから」
「いや、リリーナは魔力なんてないだから、魔法抵抗力も低いはずだよ、案外いけるじゃないか? 」
「馬鹿なこと言わないで、人間の魔法を知らないくせに」
うん? アサ、ちょっと焦ってない?
「アサ、試して見ないか? 」
「しかし、リリーナ…」
「大丈夫、痛くて起きたとしても、アサがまた眠らせればいい」
「そう…だね、分かった、やって見るよ」
どうして焦るのでしょう? ドラゴンが何か言ったから? なんて言った? あたしの魔法抵抗力が低いから、いけるかもしれない。いけるって何? 痛くしても起きないかもしれない? そしてアサは焦った、つまり、多分あたしが眠りの魔法をかけられたら、簡単に起きない。そして、アサはそれを知っていた…
それに、アサはそれを隠そうとしてた、つまり、アサは、あたしが寝てる間に…ごくり…
そうか、そうだったのか、なるほど。
「リリーナ、行くよ」
「うん」
アサに何をされても、あたしは別に気にしないけど。失うことは、まぁ、精々処女くらい? まぁ、女の子同士だし。でも、あたしが寝てる間に、アサは何をするのか、少しだけ興味がある。うん、何もしないかもしれないけどね。でもそれでは、アサが焦る理由を説明出来ない。うん、今度寝たフリをしてみようか。
「リリーナ、終わったよ。あ、リリーナが起きなかったのは、あたしがずっと魔法をかけ続けたからよ」
嘘つけ…
「あ、そうだったのか、ありがとう、アサ」
「う、うん」
あ、頭に角が、鹿みたいな角が、鏡、うん、よかったじゃないか…
「あぁ、あたし、竜人になっちゃたよ」
「ハッピーバースデイ、竜人」
「あ、これで死霊術使えるね」
「おお、じゃあ早速始めようか」
「お願いするよ」
今? いや、アサちょっと席を外してよ。
あ、アサと目があった。
「ふふ」
微笑んでないで、帰れよ! 死霊術の秘密を他人に知られたくないよ、察してよ!
どうしよう? 水臭いことを言いたくないし。はぁ、仕方ないか。
「よし、始めよ、まずは、あたしがどうして死霊術を編み出したのを教えよう。あたしのブレスは生き物をアンデットに変える」
「凄いな」
「ははは、そうだろう、凄いだろう。フェニックスの生属性と女神の聖属性以外に抵抗出来る手段はない」
いや、自慢話はいいから。
「でも、ブレスは味方を巻き込むから、魔法を研究始めた。死霊術は魂の代わりに魔力を吹き込むのよ。一番簡単の術式は死体をゾンビとして蘇らせる、術者以外は見境なく襲う。上級の術式なら仮想人格で死体を操られるよ。まぁ、リリーナにはちょっと早いかな、そう、まずは呪文を考えてみよう」
「呪文? 」
「そう」
「ドラゴンさんが使ってる呪文を使えばいいではないのか? 」
「ダメだ、あたしのはドラゴン専用だ」
「そうか、参考に聞かせて」
「ああ、どれにしようかな? じゃあ、その前に、ちょっと説明しようか。死んだばかりの死体はまだ魂が残る、これは魂が残る死体を蘇る時に使う術式の呪文だ。冥府に招かれし者よ、不死を司るドラゴンの名の下に、再びこの世に蘇れ! レイズゾンビ」
あれ? 魂を残すまま蘇らせる、うん、話を聞く限り、この死霊術は意識を残すまま、アンデットにする魔法なんじゃない? それじゃあ、復活魔法と同じ、いや、復活魔法より強いなのでは?
「ねぇ、この魔法って、意識を保たせるまま、アンデットどして復活させるの? 」
「ああ、そうよ、凄いでしょ」
凄い、死霊術って凄いかも。
「そんなことないよ」
あ、そうだった、アサは死霊術がきらいだった。
「アンデットは視覚と聴覚しかないの、温もりを感じることも出来ない、何を食べでも味がわからない。知ってるか? 力加減も出来ないのよ、恋人を抱きしめる時に絞め殺したアンデットもいた。術者の命令で生前に大事に思った人を平気に殺せる話も…」
「そうなのか? 」
アンデットは別にどうでもいいけど、問題はアサなのよね。
「あたしはドラゴンだから人間の気持ちは分からん、けど、魂を抜けたあとでアンデットにすればいいじゃないか? 」
「そうか、それなら問題ないな、ねぁ、アサ」
「それは、う、うん、まぁ、う、でも…」
アサ、人を平気に殺せるのにな…変なの。