ドラゴン編 第4話 偽物でございますか?
「君の提案が一番だ、それは分かっている、分かっているけど・・・はっきり言いよう、君は角を少しだけ削ると言ったか、魔力回路を移植するには、角二本とも切り落とさないとダメだと思う。骨しかないあたしにとって、角は唯一の弱点だ、不死身なあたしでも、角の再生は1日が掛かる、その1日はろくな魔力バリアさえ展開できない、無防備になるんだ、その1日にバラバラされたら、大変なことになるんだ」
なるほど、あたしは信用出来るかどうか、そう言う問題になったのか。
信用を得る方法は二つある、相手によって使い分けるの。方法一は利益しか動かない人を演じる、合理的に物事を考える人間に対する効果は抜群だ、でも目の前にいるドラゴンさんは明らかにそういうタイブじゃない、つまり・・・
「あたしを信じて欲しい、あたしは決して友達を裏切らない」
はっ、どの口が言うか・・・
「本当に信じていいよね」
「うん」
「分かった、でももう一つ問題がある、先も言ったが、あたしの魔力は角に集めているんだ、聖剣でさえ傷一つ付けないんだ。あたしが魔力を抑えていても、簡単に切れないんだ、魔力を持たない君はできないでしょう」
「切れそうな人なら知っている、大丈夫、彼女は信用出来るから」
アサならきっと切れるはず、一旦宿屋に戻ろう。
「アサ、ただいま」
「お帰り、リリーナ、一緒にお風呂り入ろう」
「うん、今日のこと、色々話さなければね」
あたしはドラゴンのこととスネク家の当主と知り合ったことだけを話した。
「そう言うわけでアサ、角切れそう? 」
「出来ない」
「そうか」
おかしい、アサに無理なお願いをするのは、これが初めてじゃない、アサはやれるだけのことをやって、それでもダメなら素直にあたしに謝る、そんな風に直接に出来ないと言わないはずなんだけどな・・・
「アサ、本当に出来ないの? 」
「出来ません、リリーナこそ、どうして強くなりたいですか? わたくしが守りますからリリーナは何も心配しなくでもよろしいのです」
そうか、そうだったのか、アサもあたしの寄生虫だったのか・・・桜子と同じ・・・
そう、桜子はあたしの寄生虫だった、あの時はずっと変だと思った、あたしは確かに桜子と同じ、ぼっちだった、でもあたしは別に友達を作れないわけではない、あたしは人を避けていた、だって、あの頃のあたしは友達と遊ぶ時間なんてなかった、だから、ファミレスで助けられたけど、桜子と友達になってみようと、別に思わなかった。
そもそも、あれは助けられたより、邪魔された方が正しい、あたしはキッチンで働きたいのに、店長が可愛い子をホールに立たせたいから、わざわざ不良みたいな客を煽ったのに・・・
あれ以来、桜子はあたしを付きまとうようになった、あたしが働いていたファミレスにコーラ一杯で居座ってな、いつの間に、桜子もあたしのファミレスでバイト始めた、思えば、あの頃も、どうして桜子はあたしに付き纏うか、よく思ったな、でもそれは桜子の口癖から理解した・・・
すずはあたしがいないと何も出来ない、それが桜子の口癖だった、でもそれは間違っていた、確かにあたしも間の抜けたところはあるけど、誰かが居ないと出来ないことなんて、一つもいないのよ、つまり、桜子が居ないとあたしは何も出来ないではなく、あたしが居ないと、桜子は何も出来ないんだ、桜子はあたしの寄生虫だった。
それを気ついたあたしは桜子の前に、わざとボケるようになった、簡単に出来ることをわざと出来ないふりをしたり、覚えていることをわざと忘れたふりをしたりした、あたし達の関係は偽物だ、偽物だった。
いつのまに、あたしは寂しさを覚えた、夜に桜子のことを考え始めた、休日は図書館より、桜子と一緒に過ごしたいと思い始めた。
けど、あの頃のあたしには夢があった、金を沢山稼いて、お母さんのために本屋を開けるのが、あたしの夢だった。必死に勉強して、推薦を狙う、取れなかったらお金持ちと結婚しようと思ったけど、桜子のお陰で、いや、桜子のせいで、適当にお金持ちと結婚するなんてきっと寂しくなる、そう思い始めた。
桜子に責任を取ってもらうわないとな、そう思ったあたしは桜子を頼るようになった、桜子にあたしの夢を話して、わざと弁当を忘れ、桜子に奢らせたり、財布を家に置いて、食材買わせたりした。
桜子はあたしに頼らせたい、だからあたしは桜子を頼った、歪んだ友情に見えなくもないが、あたしは桜子のこと、親友だと思っている、その証拠に、桜子が死んだ時、あたしはあんなに悲しかった。
そっか、アサも、桜子と同じだったのか、じゃどうして今まで気付かなかった? そうね、桜子はぼっちで、アサは周囲に頼られてるからな。アサは首席で卒業したけど、桜子の成績はお世辞にもいいとは言えない、つまり、アサは別に人に頼られなくでも良かった、なのに・・・
無駄よ、どうしてアサはあたしを構うだと言う問題は、もう六年くらい考えた、それでも答えは出せなかった・・・
今はアサに角を切るように説得するの、うん、言って見ようか、寄生虫に対して一番効果ありそうな、あの魔法の言葉を・・・
「そう、なら仕方ない、あのクネス・スネクに頼るしかないな、借りを作るのは癪だけど」
リリーナは、いや、すずしろは別に転生前から腹が黒かった訳ではありません、ただ、友情とは何物かが知りませんだけです。
犬に餌を与えるように、すずしろはただ桜子が求めている物を与えているだけです、ちょっと感情が欠落していた、純粋ないい子です。