魔人編 第11話 告白でございますか?
「あのマール様って、誰? 」
「マール様は、愛を司る女神なのよ」
「そうか・・・あ、え? アサは好きな人でもできたのか? 」
「あぁ、マール様よ、これも試練なのか? 」
あたしが寝てる間に、何か起こったの? アサが・・・
「試練って? 」
「マール様は、信者に試練を与えるの、試練を全部乗り越えたら、好きな人と結ばれるの」
え? これって当たり前なことじゃないの? 困難を乗り越えないから困るじゃないの?
「アサ、マールの、あ、いや、マール様のことを誰から聞いたの? 」
お金はまだあたしが管理しているから大丈夫だと思うけど、アサって、騙されやすいかも。
「昨日出会った、あの人間語を話す女性、まだ覚えてる? 」
「男にこき使われた、あの女性? 」
「ええ」
「人間語だったの? 」
「ええ、男の方は人間だから、あの女性はわざわざ人間語を習ったらしいよ」
「そう」
「あ、まさか、リリーナって、魔人語と人間語が区別出来ないの? 」
あ、やばっ。
「そうなわけないでしょう? あ、腹減ったよ、食べ物まだ残ってるの? 」
「あ、もう残ってない」
「仕方ない、女将さんに作って貰うか」
よし、うまく話を逸らした。
「すみません、女将さん、何か料理を作ってくれないでしょうか? 」
「料理? あ〜君たち、人間なのね」
え? どういうこと? 魔人って料理しないの? 生肉しか食べないの?
「あ、リリーナ、そうなのよ。魔人は周りの魔力を吸えば生きられるから食事する必要ないの」
え!? そうな、どうしよう?
「あ、アサ、昨日の男、確か人間だったよね、つまり、人間でも、ちゃんとここで生きられるよね」
「そうよ、魔王城の城下町でも、人間が沢山集まり、住んでいる街があるのよ」
「何処にいるんのですか? 」
「北へ半時間歩けば見えるはずだよ」
「ありがとうございます、行くよ、アサ」
愛を司る神、つまり、アサは好きな人が出来たか・・・アサの好きな人って、誰? オオニ? シスコーン? まさかバリーじゃないでしょうね?
どうして? どうして6年も一緒に居たのに、アサの好きな人さえわからないのよ! あ、当然なことじゃないか、私今まで、アサのことを、一度でもちゃんと見たことあるの?
アサから直接に聞いてもいいけど、アサから好きな人のことを聞いたら、手伝わせるかもしれない、それを拒むこともできなくなる、これは悪手だ。
ん、どうしよう? モヤモヤする、男と行っちゃうの? そんなの嫌。アサは用済みだ、用済みだったけど、何が嫌、アサを側に置きたい・・・
うわー、最低だな、私・・・
でも私、アサの行方を決められるのかな? 私が側に居て、と言ったら、側に居てくれるのかな?
じゃあ、こうしよう、アサに決めさせよう。
「アサ、好きな人、居るんだ・・・」
「え、ええ・・・」
「知らなかった」
「まあ・・・」
「えーと、あの、アサ、私達の旅、もう終わったの・・・」
「あ、マール様よ、これは新しい試練なのでしょうか? 」
「私とアサ、もう六年も一緒に居たよね」
「はい」
「もう友達、いや、もう親友なのね」
うわー、何友達ヅラしてるのよ、私・・・
「ええ! ええ !大親友なのよ」
「これは自分勝手で、ワカママなお願いだと、ちゃんと分かってる、アサもちゃんと自分の人生を歩みたいし、やりたいこともあると思う、でもね、もしこれからも、そ、側に居てくれるなら、嬉しいな、なんて・・・ 」
「・・・」
やはり反応に困るのかな? 急にそんなこと言われて。
「夢ではありませんよね? 」
何?この反応・・・なんか嬉しそう、想い人より、私を選んだのかな?
「マール様凄いです! ありがとうございます! 」
どういうこと? アサの想い人って誰? 私じゃないでしょうね?
いや、そんなバカな? 女同士なのよ・・・いや、いくらなんでもこれはありえない、よね?
え、ちょっと、変な方向に考えるのをやめなさいよ。
恥ずかしい、アサが私のことが好きだなんて、本気で考える自分が恥ずかしい。
じゃあ、アサの想い人って、誰? 私の側にいるの?
もういい加減にしなさいよ、単純に私に引き止められたことが嬉しいでしょう、ほら、私、ずっとアサを冷たくしたから。
「ごめんなさい、アサ、でも、ちょっと嬉しい」
「リリーナ、私、何処も行かないから、ずっとリリーナの側にいるから」
これで一件落着、あとは、桜子のことだね。
居場所は大体分かる、食事が済んだら探しに行こう。
魔王城に住んでいることは、桜子、魔人になったよね。私を見たら、どんな顔するのかな?楽しみ〜
これからは、魔王城に住むことになるでしょう、家も買えなくじゃ! クエストが失敗したけど、馬鹿高い交通費は節約できたから、しばらくお金に困ることはないでしょう。
家を買うなら、何処にすれば良いのかな? 自炊も出来るけど、魔王城で食材買えないから、やはり人間町に近い家が良いと思う。
「アサ、小さい家を買って、一緒に住もう」
「うん、リリーナと一緒なら、何処でも」
「そうね、親友だもんね」
「うん、親友、親友! 」
桜子に、アサのことも紹介しなくちゃ。
もうすぐだ、もうすぐ以前のように暮らせる。いや、以前より楽しく暮らすよ、きっと。
ごきげんよう、トラバサミでございます。次回からは魔界編になります、どうぞお楽しみにしてください。 新作の『あなたの心の中で生きている(物理)』も面白いので、もしよろしければ読んで見てください、何卒よろしくお願い申し上げます。