魔人編 第9話 仕返しでございますか?
ハエハンターだけじゃない、仲間もいるようだ、あっ、依頼主さん死んでる、やばい、報酬は全部パーになった・・・
あれ・・・ゴレーム以外にも、ひとり足りない・・・
何より、リアジュウレスが見当たらない・・・
うそでしょう、負けたの? だって、あのリアジュウレスはもう瀕死だったはずだけど・・・
リアジュウレスの運を抜いておけば良かったのかな? 少なくとも報酬は貰えたはず、はぁ~
「り、リリーナ! 」
「何? 」
「ハエハンターが・・・」
うわ、まだ生きている、でも、酷い怪我。
「ぐぅ、お、お前ら、ジョンは? 」
「ジョンって、誰? 」
「俺の仲間だ、そうだ、ジョンはリアジュウレスに巣まで連れて行かれた! 」
あら、おかわいそうに。
「お気の毒さま」
「てめぇ! 」
「あら、怒ったの? 」
「てめぇ! おい、早くポーションを渡せ! 俺はジョンを探しに行くんだ」
「厚かましいにも程があると思うけど」
「なん、だと! 」
「ねぇ~アサ」
「そうよ、あたし達を囮にしといて、良くポーションを渡せと言えるよね」
「仕方ないだろう、俺だって、卑怯な真似はしたくないんだ、許せとは言わん、金もちゃんと払う」
こいつ・・・でも、ホントにこの人、いや、このエルフがあたし達を囮にすると、仲間に指示したの?
「リリーナ、こいつを置いて行きましょう、自分が悪いだと全然思っていない。こんな奴、助ける義理はないわ、さぁ、行こう」
「おい、時間はもうねんだよ、早くよこせ! 」
「その前に一つ聞きたいの」
「なんだ? 急げ」
「ホントに君が、あたし達を囮にしたの? 」
「ああ」
「仲間じゃなくで? 」
「そうだ」
「行くよ、アサ、噓つきにあげるポーションなんてない」
「おい、ちょっと待って、提案したのは確かにジョンだったが、承諾したのは俺だ、嘘はついていない」
「で、承諾した時、あたし達を死なせ、報酬を独り占めする、そう考えたことある?」
「それは・・・」
「でぇ、あたし達は君にポーションを渡し、あたし達を囮にした人を助けさせるわけ? 」
「・・・」
「ほら、自分だって、そんな図々しいことを言えないでしょう」
お願いの一言も言えないのか・・・まぁ、言ったところで、助けないけどね。
「お金十倍出すから、これで良いだろう」
「はぁ? 」
ムカっ!
「アサ、ポーションをあたしに」
「え!? 助けるの? 」
「いいから」
「あっ、はい」
笑顔で、笑顔で。
「これ、欲しいの? 」
「あぁ、俺にくれ」
「これが人にものを頼む態度?」
「おい」
「言うの? 言わないの? どっち? 」
「俺に・・・く・・・く・・・」
「ク? 」
ダメだわ・・・笑っちゃダメだ、我慢、我慢。
「くだ・・・く・・・言えん、言えるか! 」
「あ、そう? では、さよなら」
「ま、待って、く・・・くだ・・・」
「十、九、八・・・」
「おい、ちょ、く・・・くだ・・・」
「七・・・」
「ください! ぐっ、屈辱だ」
「くれって、何を? 」
気持ちいい!
「調子に乗るな? 」
「なんが言ったか? 」
最高の気分~
「ぽ・・・ポーションをください」
「え? なぁに? 聞こえないよ」
「ポーションをください!!!」
「人間の魔法ってなんだって? 確か、手品と言ったよね? あたし達、リアジュウレイアを倒したのよ。エルフの魔法は強いなんじゃなかったの? どうして負けたの? 」
「・・・すまない」
「魔法研究員が役に立たないって?」
「すまなかった」
たまらない! 気持ちいい!
「ふふふっ、素直でよろしい、はい、どうぞ」
でも、だ、ぁ、め☆
「ありが・・・」
「あ、手が滑った」
わざと棒読みしてみた。
「あ、残念、これが最後のポッションなんだよね、ねぇ、アサ」
「あっ、はい」
「てめぇ・・・」
「地面を舐めたら回復するかもしれないよ」
「て、てめぇ! 」
「あら、仲間を助けたいでしょう? ならためらうことないでしょうに」
ハハッ、舌を出して、すごくためらっている。いい気味だわ。
「ジョンとか言う人、今どうしているのかな? あなたを待っているかもしれないのよ」
「く・・・く! 畜生!!! 」
舐めた☆
「アハハハハッ! 誇り高いエルフなんじゃないの? いいざまよ! ねぇ、今どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち? 」
「くそが! 殺してやる! ぶっ殺してやる! 」
「あら、そんな体で出来るものならやってみなさいよ、この、死に損ないが」
「殺す! 殺す! 殺す、殺す、殺してやる! 」
「こっちは何もしなくても君は死ぬけどね。あっ、遺言があるなら聞いてあげるよ」
「死ね! 死ね! 殺してやる! 」
「あなたの顔はもう見飽きたわ、では、さ、よ、な、ら~ハエハンターさん~ アサ、行こう」
「うん」
「くそ! くそが! 」
はぁ、楽しかった、恨み全部晴らして、清々しい気分だわ。
「ねぇ、リリーナ、止めを刺さなくていいの? 万一生き残ったら・・・」
一理ある、一理あるけど・・・直接止めを刺すより、じわじわと苦しめて、絶望と後悔を味わいながら死なせるほうが、気分がいいから。
「アサって、用心深いのね」
あ、やばい、またアサに、嫌な一面を見せてしまった・・・
「ねぇ、アサ、あたしのこと、嫌いになったの? 」
「え? どうして? 」
「だって、あたし・・・」
「大丈夫、どんなリリーナも大好き。それに、リリーナ、先は凄く輝いたよ」
「輝いたって」
「うん、輝いた」
「やめて、恥かしい」
「恨みも晴らしたし、今夜はいい夢が見られそう」




