魔人編 第8話 戦利品でございますか?
「まさか本当に二人で倒せるとは」
「うん、それより、戦利品を取らなきゃ」
「戦利品? 」
「そう、魔法石を取らなきゃ。さぁ、アサ、早く」
「早くって? え、ちょ、あたし、魔法石の取り方なんて知らないよ」
「リアジュウレイアの魔法石は喉でしょう、首を切り開いて、喉を取り出せばいいでしょう」
「えーと、うん、あの・・・」
「ん? 何? 」
「あのね、リリーナ・・・えーとね」
「言ってくれなきゃわかんないでしょう」
「う、うん、あのね、リリーナ、あたし、グロいのは苦手で」
はぁ!? 何言ってんの、この子・・・
「え、ちょ、アサ、あなた、人を殺めたことが、あったよね」
「魔法で殺すと、ナイフで死体を解剖するとは全然違うの、あの、ほら、手触りが」
ふむ、欲しければ自分でやるしかないか・・・
まぁ、アイだった頃、料理当番で鶏と魚を沢山さばいたから、今更緊張することもないか。あ、でも、ワイバーンは初めてだ。
いや、ちょっと待って、これはいい機会なのでは?
「ねぇ、アサ」
「なぁに? 」
「あたし、どうしてもあの魔法石が欲しいの。言っている意味、分かるよね」
「え、でも・・・」
あたしの言うこと、どこまで聞いてくれるのかな?
「う、うん、わかった、やる」
あれ、もうひと押しが必要かと思ったけどな。
「ありがとう、アサ」
「でもどうやって、ナイフ持ってないよ」
「あなたの魔法でさばくのよ」
「魔法で? 」
「うん、先ずは、そうね、ウィンドブレイドを使ってみって」
「ウィンドブレイド? 何処に? 」
「前に」
「あっ、はい、ウィンドブレイド! 」
ふむ、長さはおよそ半メートルか。
「目を閉じて」
「え!? でも閉じたら・・・」
「大丈夫よ、あたしを信じて」
「うん、リリーナがそう言うのなら」
「はい、前に向かってウィンドブレイドを放て」
「ウィンドブレイド! 」
「もうちょっと下」
「ウィンドブレイド! 」
うん、首を切り落とした。あれ、これおかしくないか・・・一撃で切り落とした?
「ねぇ、アサ、リアジュウレイアって、下級魔法で首を切り落とせるの? 」
「死体なら出来るよ、魔力が流失して、魔法バリアがなくなるから」
「なるほど」
「はい、もうちょっと右」
「こう?」
「あ、ちょっと左」
「こう」
「うん」
「ウィンドブレイド! 」
喉辺りを切り落とした、後はあたしが手でもぎ取るだけ、うん、近くに手を洗えるどころなさそうね。ああ、このハンカチ、お気に入りだったけど、仕方ないか・・・
あ、待って。
「アサ、前に向かってウォーターボールを使って」
「はい、ウォーターボール! 」
「もっと下、ちょっと左」
「こう? 」
うん、水洗いもばっちり、まぁ、どの道ハンカチは捨てるけどね。
「後ろを向いて、向いたら目を開けていいよ」
「終わったの? 」
「うん」
これがリアジュウレイアの魔法石、の、材料か・・・? 材料? 原石? 結晶化?
一体どうやって、臓器を魔法石に変えるのでしょう?
まぁ、あたしの魔法石の容量じゃせいぜい一発・・・あ、そういえば、アサは火属性の上級魔法を使えないだったね。これを手に入れられて本当に良かった。
「リリーナって、やはり優しいのね」
「そう? 」
「そうよ、ふふ」
わかってないな、先まであたしが何を考えていたのも知らないくせに。やはりアサはあたしの理解者には成れない。
理解者、ハッ・・・あたし、理解者を求められているのか? 心を閉じているのに? あたし、一度でも人を理解いようとした?
理解者など・・・いや、理解者はいった、スズナお母さんと桜子だ。そうよ、桜子に会えば、きっと昔のようになれるはず。
そうなったら、アサはお払い箱だ。
あ、駄目、またそんなことを考えて始めた、違うよ、アサを大切にすると決めたじゃないか・・・
まただ、また罪悪感を感じてアサを優しくするパターン、これじゃDV男と同じではないか。
はぁ、あたしって最低、どうして生きてるの?
「あ、そうだ、リリーナ、あのハエハンター達、本当に酷いよね」
「う、うん、そうなのよね」
あたしの方が酷いよ、六年も傍に居てくれた人に、沢山、酷いことを・・・
「着いたらギルドに報告しないとね・・・それとも、問答無用で上級魔法を一発お見舞いするのかな? 」
「やめたほうがいいよ」
「え!? どうして? リリーナ、あのハエハンター達を許せるの? 」
もちろん許せないけど、もうすぐ桜子に会える、今は面倒ことを起こす気なんてない。
「冒険者ってそう言うものでしょう」
「リリーナ、心が広いのね」
「そんなことないよ」
別に謙虚しているわけではないけれど・・・
桜子があの魔王城の城下町にいるはず、あそこに騒ぎを起こしたら、住民に悪い印象を与えてしまう。
でもまぁ、もし別なところで逢えたら・・・
「ねぇ、リリーナ、あそこを見て」
誰かが倒れている、えっ、あれって・・・
「リリーナ、あそこに倒れているのは、ひょっとして・・・」
「うん、そうみたい」
まさかこんなところで会えるなんてね、ハエハンター・・・




