魔人編 第6話 自然魔法でございますか?
そうよ、責任取ってよ、あなたが呼び寄せだから、あなたが倒してよ。
「アサ、もう少し様子を見てみよう」
「はい」
ん? 依頼主さんからリアジュウレスの話を聞いたでしょう? どうして翼膜を攻撃しないのよ? 聞いてなかったの? それとも、依頼主さんが言ってなかったの?
「アサ、ちゃんと見て、リアジュウレスの火球ブレスは、こんなに連射できるのよ、あたしはあなたに詠唱の時間を稼げないのよ」
「ん・・・」
「でも、アサは確かに、中、下級魔法なら無詠唱で使えるよね」
「ええ」
「あの火球ブレスに衝撃を与えて、爆発させるのよ、だから、無詠唱の魔法で迎撃しなさい」
「わかった」
ゴレームで火球ブレスを防げる、射手で攻撃、ハエハンターが自然魔法の土魔法でゴレームを修復、戦士は何も出来ずただ立っているだけ。
ホントにバカだよね、でかい飛べるものは落とす限りだ、どうしてそれがわからないの? 落としたら、大きなダメージ与えるし、戦士も戦えるのに・・・
私の力で落とすのも出来るけれど、なんか、ハエハンターを助けたくないな・・・あたしの話を聞かないし、人間だけで嫌われるし、何より、ハエハンターは助けられたことに気付かない・・・あたしは、アイみたいなお人好しには絶対にならないからね。
いや、ちょっと待って・・・ハエハンターのチームがやられたら、あたし達はどうなるの? 次に狙われるのは、あたし達・・・いや、あたしなのよ。
アサだけではリアジュウレスに勝てないのは、とっくに知っていることではないか。
はぁ、癪だ、癪だけど・・・癪だけど・・・いや、やはり癪だ・・・
ふん・・・また感情的になっちゃった、理性的、理性的で行こう。ちゃんと考えて、こうするのが一番だ。
翼から運を抜いて、ほら、翼が矢に貫かれて落ちた。
これで安全、と。
あたしなら逃げるけどな、スピードドラゴン車なら逃げ切るのに・・・けれど、彼らはリアジュウレスを倒す為に呼び寄せたからな・・・
でもホントに勝てるの? 飛べなくでもワイバーンなんだよ。
運を見ようか、でも、未来を知ったら面白くないよ。まぁ、あたしとアサの運だけ見よう。
大丈夫、黄色だ。
でも、呑気に観戦するわけにもいかない、彼らが負ける時のことも考えないと。
リアジュウレスに勝てないが、スピードドラゴン車さえ守れば逃げるのは容易い、
あれ? ハエハンターのチームが火に囲まれている、どうして水魔法で火球ブレスを迎撃しないの? 今だって、水魔法で火を消せばいいのに・・・
あ、そうだ、自然魔法って、水がないところで水魔法を使えないんだ。
なんだ、誇り高きエルフと言いながら、役に立たないな。
今回は助けないわよ、全く、情けない、水魔法なんて、あたしでさえも使えるのに。
あっ、ゴレームが燃えている、修復が間に合えない、崩れるのも時間の問題だな。
けれど、リアジュウレスにも確実にダメージ与えている。
「アサ、ホントにリアジュウレス倒せると思う」
「どうかな・・・どっちが勝ってもおかしくない、けれど、あたしが手を貸せばきっと勝ってる・・・」
「でしょうね、ちょっと考えさせて」
今回は訳が違う、アサに手を出せば、後で怒られそうだな、何余計なことしやがるんとか言いそう。
それに、こっちが狙われる可能性だってあるし、ほら、リアジュウレスが逃げる前に何か持ち帰りたくって、あたしを狙うかもしれないじゃないか。今アサを行かせるのは得策ではない。
弱っているリアジュウレスから簡単に逃げられるから、あいつらを死なせても別に困らないし、何より、自業自得だし。
でもな、アサはきっと見殺ししたくないな、ほら、ゴブリンキングの時、凄く必死になったではないか・・・
「アサ、どうしてもあいつらを助けたいの? 」
「いや、別に」
「え・・・え!? だって、ゴブリンキングの時」
「あぁーー、あれは違う、あの時はあたし達のせい、今回は完全に自業自得だ、と言うより、あたしがこの手でハエハンターを殺したいくらいなのよ」
「そう・・・」
ちょっと意外・・・アサって、怒らせたら怖いかも・・・
それはそうと、リアジュウレスって、結構カッコイイよね、火を吐くワイバーンを見ると、ホントに異世界に来たと実感出来るよ。
でも、この火球ブレス、実は魔法なのよね、リアジュウレスの体の中の火の魔石から出るんだ、あの魔石欲しいな、この魔法石があれば、アサは無詠唱で火属性の上級魔法を使えるかもしれない・・・
うん、どうしよう? だって、ハエハンターがリアジュウレスを倒せば、あの魔法石は彼のものになるでしょう。
ほら、あいつらを死なせたら、報酬だって全額貰えるし・・・
ホントにどうしようかな・・・
それに、ハエハンターが勝てばドヤ顔されるし・・・
はい、死刑確定!
でもね、ハエハンターを嫌ってるけど、別に憎んでいるわけでもないし、目覚めが悪くなるし、いや、でも、魔法で眠っているし・・・
うわ、面倒くさい、もう何も考えたくない・・・
あたしの手を汚さずに勝手に死んじゃえば?