魔人編 第5話 水面でございますか?
「お詫び申し上げますわ」
謝るのか・・・
「謝れば何でも済むと思うな! 」
「ごめんあそばせ、リアジュウレスに勝てませんから、必死に虫を倒していたのね、ごくろうなこと」
「なん・・・だと・・・」
「いかがなさいましたか? 誇り高きエルフの・・・・ハエハンターさん」
「貴様! 」
「何が間違ったことを言いましたか? だって、ハエを逃がしたくらいできゃあきゃあ騒いでいるではないですか? ハエハンターさん」
「貴様ぁーーっ!」
アサに手を上げようとしてる・・・
「サイモン、相手は女の子だぞ」
「ちっ・・・おい、ドラゴン車に戻るぞ」
ちょっとすっきりした、アサって、意外と毒舌・・・
「アサ、ありがとう」
「ごめんね、我慢できなくて」
そうね、全くその通りだ、あのチームとの関係を悪化しないように少し努力したけど、アサが台無しにした。けれど、気持ちよかった、清々しい・・・かな・・・
はぁ、どんなに理性的に振る舞っているつもりでも、所詮人間と言う生き物は感情的だ。
でもアサ、今は謝るどころじゃないでしょう、あたしを慰めるべきなのに、逆に慰めを求めてどうする。
アサ、怒ってくれてありがとうと言うべきか? けれど、これでホントにいいのか? そんなこと言ったら、アサは勝手なことをするようになる。
「アサ、怒ってくれてありがとう、でも、分かっているよね」
「はい、ごめんなさい」
「まぁ、ちょっと、嬉しかった」
「え!? 」
あっ・・・やばっ・・・
「今何とおっしゃいましたか? 」
「言葉遣い!」
「話をそらさないで、顔もそらさないで」
ど・・・どうしよう。
「顔隠さないで、はぁはぁ、ちゃんとあたしを見て」
「アサ強引、ちょっと怖い」
「あ、ごめん」
アサ時々怖い顔するよね、甘えすぎるとこうなるのか・・・
「おい、人間」
またこいつか、アサのおかげで、いや、アサのせいで愛想よく振舞わなくて良くなったから、別に相手しなくていい。
「何が用? ハエハンターさん」
「え、リリーナ? 」
「チッ」
行ってしまった、何しに来たでしょう?
「汗かいちゃった、アサ、一緒に体を洗いに行く? 」
「うん、行く」
「先に依頼主に言っておかないと」
「リリーナ、責任感強いのね」
「アサの責任感は強くないの? 」
「大丈夫、あれはあたしが決めったことだから、後悔はしない」
「何のこと? 」
「何でもない、さぁ、行こう」
「うん」
何に対して後悔しているでしょう?
「依頼主さん、ちょっと体を洗って行きます」
うわ、綺麗、月が明るい、水面に月が映っている、なんがアイの世界を思い出した、アイの人生も、悪いことばっかりじゃなかった。
「冷たっ・・・」
「ふふふ」
「どうしたの? 」
「いや、先、リリーナの体がびくんと震えた、可愛い」
「もう、なんがアサ、あたしの辱めて、楽しんでいる? 」
「そん・・・そんなことない・・・わよ? 」
噓下手・・・・
でも、アサも意外と意地が悪いのね、まぁ、これくらいなら別にいいか。
「ちょっと、ジロジロ見すぎ」
「あ、ごめん」
「始めて見るわけでもないのに」
「月が、月が綺麗から」
「月が綺麗なら月を見ればいいのに」
「・・・・」
変なアサ・・・まぁ、どうでもいいか。
「そろそろ戻るわよ」
「うん」
依頼主さんとハエハンターが楽しそうに話している、アサが余計なことしなかったら、あたしも情報収集のため、会話に参加したのに。
うわ、睨まれてる、はぁ、無視無視ガン無視。
明日、森を抜けて、日が沈む前に魔王城に着く、つまり、明日でハエハンターとさよならできる。
「おはよう、リリーナ」
「おはよう」
森を抜けたか、よかった、もう虫魔物は出ない。
薬草鹿か、初めて見た、なんが可愛い、目がうろうろしてる。
あっ、殺された、あのハエハンターの魔法に・・・
どうして? 薬草鹿の素材は高く売れないのよ、そこまで金に困ってるの?
いけない、血の匂いでリアジュウレスが寄って来る・・・
まさか、いや、まさかね、ハエハンターは知らないはず・・・いや、でも、まさか、昨日、依頼主と話したよね、まさか、依頼主から?
バカか? 依頼主はバカか?
いや、あたしがバカだ、少し頭を使えばわかることなのに、プライドが高い、あのハエハンターのプライドをズタズタにしたら、もちろんこうなるよね・・・
「あはははは・・・・」
「どうしたの? 」
「絶対にリアジュウレスに攻撃仕掛けないで」
「え!? 来るの? 」
「うん、きっと来る」
「あ、嗅覚が強くて、生肉しか食べない」
「そう、バカな真似しないようにはっきり言ってないけど、リアジュウレスは血の匂いに嗅ぎつけて寄ってくるんだ」
来た・・・でかい・・・
空であたし達と薬草鹿を観察してる、攻撃を仕掛けでいなければ、弱い方を襲う、魔力はあたし達の方が全然高い、大丈夫だ。
い、いや、ちょっと待って・・・ここで、魔力が一番少ないのは、あたしじゃないのか?
やばっ、こっち見てる・・・どうして? あのくそハエハンターが引き寄せたのに、あたしを狙う。
「アサ、あたしを守って」
「はい」
「自由でマイペースな・・・」
あれ? リアジュウレスが魔法に打たれた、でもアサの詠唱は終わってないじゃ・・・




