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魔人編 第4話  虫でございますか?

 「勝てない」


 「どうして? 最上級魔法を使えば・・・」


 「そうね、多分一撃で倒せるけど、詠唱通るの? 」


 「いや、最上級魔法の呪文はそれほど長くないし」


 「でも、リアジュウレスは・・・」


 「リリーナ、もっとあたしを信じて」


 面倒くさい・・・まぁ、遭遇する確率もそんなに高いじゃないし、逃げるが勝ちだもんね。


 「そうだね、頼りしてるよ」


 「ええ、どんどん頼ってください」


 すっかり暗くなった、夜になると、凶暴な虫魔物が出没する。でもまぁ、虫避けもあるし、皆の運も黄色だし、大丈夫でしょう。


 「ねぇ、アサ、虫魔物は平気? 」


 「虫魔物を見たことないから、何とも言えないけど、命を替えてもリリーナを守るよ」


 「頼もしいね」


 「リリーナ~」


 愛しい眼差しで見つめられてる。うん、飴のあとは鞭か。


 アサの顔を撫でながら、耳元で囁いた。


 「あたしを失望させないでね」


 「え、ええ、もちろん、ありがとう、リリーナ、信じてくれてありがとう」


 どうやら今までの鞭が、飴をより美味しくしたようね。


 「ねぇ、リリーナ、ちょっと抱かせてくれないか? 」


 「だめ」


 「やはりだめか」


 「クエストが終わってからにして」


 「え!? それって・・・」


 「うん」


 受付さんはあたし達を心配して、あのチームと一緒に行かせたけど、最初からあいつらを信じていなかった。いざという時、頼れるのはアサだけ。アサだけは、あたしを裏切らない。


 受付さんはホントにバカだよな、心配するのはいいけど、頭も使え欲しいよね、エルフは人間嫌いだということは知ってるのに、はっきり言って有難迷惑だ。


 「おい、戦闘準備しろ、虫魔物が襲ってきた」


 「アサ! 」


 「任せて、リリーナはここで待っててね」


 「うん」


 蛾形の魔物か、灯りをけさ・・・ひぃっ! 蠅形・・・キモイ! それも、犬くらいに大きい。いや、無理無理無理、ゴキブリが一番怖いけど、ハエもそこそこ嫌いなのよ、目がすごく大きいし、足もキモイ、毛もたくさん生えてるし、何より、すごく早い、殺虫剤を掛けると、物凄い音を出すの、想像しただけでも鳥肌が・・・全部燃やせばどんなに気持ちいいのか・・・


 燃やす? ちょっと待って・・・


 「アサ、分かると思うが、ここは森なのよ、火属性魔法は絶対に使わないで」


 「わかった、自由でマイペースな少女、それは疾風、風の刃よ、敵を切り刻め!ウィンドブレード! 」


 よし、あのハエをまっふたつに・・・ひぃ! もう嫌だ!


 あのハエから、沢山白い虫が、蛆虫が・・・


 「ううっ・・・うううっ・・・もう嫌だよ、ヒクッ・・・」


 「リリーナ、目をつぶって、何の心配も要らないよ、あたしがリリーナを守るから」


 「う・・・うん・・・」


 怖い、ハエの羽音が・・・魔物図鑑で見た時、見られた虫だから、別に気にしていなかったけど、まさか、でかくなるとこんなにキモイとは思っていなかった。


 「アサ、もういいのか? 」


 「あと少し、もう少し我慢すれば」


 「蛆虫も一匹残さず殺して」


 「わかった」


 音がグロイ、きっと、たくさんハエが殺されて、たくさん蛆虫が出てきて、地獄絵図になってる・・・


 「数多すぎ」


 「そんな・・・早く片付けてよ」


 今どうなっているの? 蛾・・・蛾から何がツルツルして、白いの・・・


 「ひゃぁーーーっ! ア・・・アサ・・・」


 見なければ良かったのに・・・


 あれは、寄生虫魔物・・・宿主から魔力を吸い、宿主の卵に自分の卵を植え付ける、この寄生虫魔物に寄生されたら、末代まで寄生される。


 人間に寄生しないから、別に気にしていなかったけど、まさかこんなに気持ち悪いとは思わなかった、もう嫌だ、お家に帰りたい。


 「リリーナ、危ない! 」


 蛾が、寄生虫を出して飛んで来てる! 


 「来ないで! 来ないで、来ないで、来ないでぇ!! 」


 鞄から投げれる物を全部投げた。


 「り、リリーナ、落ち着いて、もう大丈夫から」


 「アサ、うう、怖かったよぉーー」


 「も、もう大丈夫だよ、全部いなくなったよ」


 あれ? いつの間に虫が全部去って行った。


 「ハエ怖いよぉ! 寄生虫怖いよぉ! 」


 あぁ、人に甘えるのは何時ぶりでしょう、悪い感じはしないけど。


 「おい、貴様、何故魔物を逃がした! 」


 「え!? 」


 「え!? 」


 「何故逃がしたと聞いている! 」


 「ちょっと、リリーナが怖がっているからやめて」


 「儲けられなくなったじゃねえか、どうしてくれんのよ? 」


 え・・・どうなってるの? アサが虫を追っ払って、あの長い耳野郎がハエの素材が欲しかったから、あたし達を責めているわけか・・・でも、どうして逃げたの? 命知らずの肉食ハエがそう簡単に追い払えるの・・・


 あれ、あの破れた試験管、あ、あれ・・・虫避け、投げったのか・・・


 って、あたしのせいだったのか。


 それはそうと、あの長い耳野郎め、あたしがこんなに怖がってるのに、普通責めて来る? 


 「ちょっとぉ、泣いてる子に向かって何言っているんですか? 」


 「ちっ、何も出来ないお前らと報酬を山分けてんだよぉ、魔物を怖けりゃクエストを受けてんじゃねえよ、人間が! 邪魔ばっかしやがって」


 正論だ、あたしは理性と感情を分けられるから怒らないけど、アサは別に怒っていいよ。


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