魔人編 第3話 ワイバーンでございますか?
「原因については、あたしもよく知らない、ただ、エルフの人間嫌いは半端ない、それだけははっきりしている」
どうしても人間が嫌いでしょう? 人間と似ているのに、魔法だって・・・いや、似てるから嫌いか。
差別、他人から優越感を得って、自分が生きるための糧にする。そこまで人間と似ているのか、エルフは・・・
まぁ、推論でしかないけれどね。
「あっ、そう言えば、アサ、これは護衛クエストだよね、見張り、お願い出来る? 」
「大丈夫だよ、リリーナ、ゴレムは元々護衛のために作られたものなのよ、索敵能力すごく高いよ」
そう考えると、あのチーム、結構いいチームかもしれないね。
あれ、ドラゴン車が止まった?
「おい! 飯の時間だ! 」
ご飯も用意してくれるの? これは、結構良いクエストだね。
全員一緒にご飯を食べるのか、いい機会だ、リアジュウレスに関して色々解説しよう、まぁ、あのエルフのことだから、聞いてくれないと思うけどねぇ。
アイが学んだことが役に立ちそう、人は所詮上辺だけしか見ていない、これは魔人でも例外ではないはず。
あたしは努力したよ、聞いてくれなかった彼らが悪いと言う結果のためにも、一回言って見よう。
「皆さん、あたしは魔物研究員です、この旅に遭遇する可能性があるリアジュウレスについて解説したいと思います」
「でしゃばるんじゃないぞ、人間風情が」
これでこいつらに解説しなくていい、良かった~
ごめんね、あたし、このエルフのこと大嫌い、あたしも上辺しか見ない人間だから悪く思わないでね。
「僕は聞きたいな、時々この交易路を通るから、リアジュウレスと遭遇する可能性が高い、リアジュウスについて色々教えてくれない? 」
「チッ、ルフレ、ジョン、トーリー、ドラゴン車に戻るぞ、人間の話なんざ聞くだけ時間の無駄だ」
「でもよ、サイモン、ドラゴン車に戻っても、別にやることがないんだぜ」
「やることがないなら休んでろ」
依頼主さん残ったのか、付いて行けばいいのに・・・ はぁ、アサと二人きり話をしたかった、アサは口挟まないから。
「じゃあ、始まりますよ、先ずはご存知の通り、リアジュウレスはワイバーンです、前足は翼です、後足もそんなに発達してるわけではないです。翼も樹に引っかかりやすいし、森に火を付けじゃいけないくらいの知能もあるので、森の中でリアジュウレスに遭遇することはまずないでしょう、つまり、森に出る前の道は安全です」
「そうなのか、これはいいことを聞いた」
だから口を挟まないでよ・・・
「リアジュウレスは鼻がいいから、隠れる意味はあんまりないです」
「そもそも、ドラゴン車三輌を隠す術なんてない」
うるさいな・・・
「次は攻撃について、リアジュウレスは火球ブレスを吐くのです、このブレスは火の上級魔法に匹敵する威力を誇っている、依頼主さん、上級魔法の威力、知っていますか? 」
「ああ」
「けれど、リアジュウレスは敵意を感じる相手にしか火球ブレスを吐かないのです、それは、リアジュウレスは生肉しか食べないからです」
「つまり、こっちが攻撃を仕掛けなければ、火球ブレスを吐いて来ない? 」
「ええ、リアジュウレスの腹が減らない時はそうです。次は戦い方、弱点部位、いや、狙うべき部位は翼膜、リアジュウレスの後足はそんなに発達してない、だから早く走られない、翼膜さえ破れば、移動が鈍くなります」
「戦いやすくなる? 」
「ええ、空から一方的に攻撃されることは免れる、何より、逃げやすくなります。あたし達は無理にリアジュウレスを倒す必要はないです、六人もいますし、もしホントにリアジュウレスと遭遇した場合、翼膜を破って、火球ブレスを防ぎながら、射程距離から逃げ出せば安全です」
「倒そうとしないのか? リアジュウレスの素材、高く売れるんだぜ」
「リスクが高すぎます、リアジュウレスが居たら、近くにリアジュウレイアもいる確率が高いです? 想像してください、ワイバーン二つが空を飛びながら上級魔法を詠唱なして撃ち続けるのを」
「うわ・・・」
「そう言えば、依頼主さん、リアジュウレス見たことありますか? 」
「ああ、空を飛んでいるところを見た」
「そうですか、運が良かったね」
「全くだ、まぁ、商人を始めてまだ三ヶ月も経ってないし」
「三ヶ月も経ってないですか? スピードラゴン車が三輌もあるのに? 」
「はは、あれは父から受け継いだ物だけさ」
「ねぇ、リリーナ、スピードドラゴン車と言えば、翼膜を破れず、攻撃もせずリアジュウレスから逃げられないか? スピードラゴン車一輌付きスピードラゴンが三匹もあるのよ」
「無理ですね、リアジュウレスは空の帝王とも呼ばれています、例えスピードラゴン車を引いていないスピードラゴンでも、リアジュウレスから逃げられないでしょう」
「こんなに強い魔物もただ平均以下か・・・完璧ランクの魔物は一体どんな化け物なんだろう」
「魔王に匹敵する魔物らしいですよ、咆哮一つで山を吹き飛ばせるようです」
「山!? 」
「まぁ、伝説ですし」
「はは、そんな化け物あってたまるか。んん、もうこんな時間か、そろそろ出発だ」
「ア、いや、ニーナ、あたし達もドラゴン車に戻るわよ」
「うん」
夜になった、虫魔物に気を付けないと。
「ねぇ、リリーナ、あたし、リアジュウレスに勝てると思う? 」