魔人編 第2話 エルフでございますか?
「あなた達以外にも、もう一組の冒険者もこのクエストを受注しました」
そうやると思ってた。
「ありがとうございます」
「え!? 報酬も山分けになりますよ、あたし、勝手なことをしましたよ」
「それで構いません、心配してくれてありがとうございます」
そういう言葉が聞きたかったでしょう、言ってあげるよ。
「ありがとうございます、なんが、この仕事の意味をわかりはじめたような気がします」
面倒くさい・・・
「受付さん、聞きたいことがあります」
「はい 」
「どんな魔物が出没するのですか? 」
「役立たずランクの魔物が主に、偶に平均以下の魔物に遭遇することもあります」
「そうじゃないです、魔物の種族が知りたいです。あたし、魔物研究員です」
「あ、そうですか、分かりました。まず、虫魔物が多いです」
虫・・・別に怖いわけじゃないけど、苦手と言うか、嫌いと言うか・・・寝る前に虫避けを調合しよう。
「平均以下の魔物ですが、なんと! ワイバーンが出ます」
ワイバーンか、受付さんが心配するのも無理はない。
「どのワイバーンが出ますか? 」
「リアジュウレスが出ます」
ちょっと後悔し始めた。
「大丈夫だよ、リリーナ」
はぁ・・・まだ手を握ってきた・・・
仕方ない、アサを信じよう。
「では、明日九時ここで集合しましょう、他の冒険者も来ます」
「はい、わかりました」
他の冒険者か・・・しつこい男が居なきゃいいんだけど。
「ねぇ、アサ、リアジュウレスが怖くないの? 」
「リアジュウレスって、強いの? 」
「つよ・・・」
「でも、そんなの関係ない、リリーナ、そのクエスト、やりたかったでしょう? 」
「えっ!? 」
わかったの?
「えへへっ」
アサくせに、アサくせに・・・まぁ、いいけどさ。
「さぁ、リリーナ、明日早起きだから、早く寝よう」
「アサこそ、目の下、クマができてるよ、ちゃんと眠れた? 」
「え、あ、うん」
動揺してる、どうして?
「あたしみたいに、魔法を使って寝るのも、悪いことじゃないと思うよ」
「う、うん」
でもどうして? どうしてこんな些細な事で動揺してるの? どうして寝られないことを隠そうとしてるの?
あぁ、でも、アサだから、多分、「「あんなことを言っといて、リリーナを危ない目に遭わせたらどうしよう」」って所でしょう?
「あたし、アサを信じているから」
「え!? 」
「だから、何も心配しなくていい」
「リリーナ~」
そんな言葉を言わせたからには、ちゃんと働いてもらうわ。
「では、自己紹介をしてください」
「俺はサイモンだ、誇り高きエルフの魔法使いだ」
誇り高い・・・プライドが高そうだな・・・
「俺はルフレ、緑族の戦士だ」
緑族? 肌は緑色じゃないのにね。
「ジョン、千里眼一族の射手だ」
千里眼一族の射手か、天職だ。
「トーリー、見た通り、ゴレムだ」
ゴレムか、初めて見た、人工物でも冒険者に成れるの?
種族も言わなきゃ駄目? それにしても、エルフ、誇り高いって・・・まぁ、そこは問題じゃない、問題は、人間を見くびるかどうか。
「あ、いや、ニーナ・アイ、人間の魔法使いです」
「フッ、魔法使い・・・人間のあれって、ホントに魔法って呼ばれてるんだ、手品なのになぁ」
「手品って」
うわ・・・アサもドン引きした。予想はしたけど、こんに人間を嫌っているとは思わなかった。
「リリーナ・ナナリー、人間で、魔物研究員です」
「はっ、魔物研究員? 何それ、役に立てんの? まぁ、役に立てる人間なんざ、一人もないか」
感じ悪い、そこまで嫌われるのは初めてかもしれない、人間だけで嫌われるだなんて・・・
だいたい、エルフって、一体何なの? 耳が少し長いだけでそんなに偉いわけ?
まぁ、後でアサに聞こうか・・・
「その辺にしておけ、荷物と商品さえ守ってくれれば、別に人間でも、魔人でも構わん」
依頼主さんって、現実主義者さんだね、でもこんな人、あ、いや、こんな魔人、嫌いじゃないわ。
「チッ」
「では、出発させて頂きます」
凄い、スピードドラゴン車一両に付き、スピードドラゴン三匹、それも三両があるだなんて豪華だ。
「では、あたし達は一番後ろのスピードドラゴン車に乗ります、行きましょう、ア・・・いや、ニーナ」
「はい」
「後でエルフについて色々教えて」
「うん」
ホントにこのクエスト受けて良かったの? 嫌な予感しかしない。
「じゃあ、エルフについて教えて」
「ええ、先ず外見から、人間と似ているけど、耳は長い、人間より背が高い。次は魔法、エルフの魔法は人間のとちょっと似ている、自然魔法って言うんだ。前に属性魔法について話したでしょう、魔法を発動するとき、魔力は二つに分けるでしょう、エレメント生成と魔法のコントロール、でも、自然魔法は違う。自然魔法は、周りにあるエレメントを直接にコントロールする魔法だ、つまり」
生成を省けた、それって・・・
「つまり、同じ量の魔力で、より威力が高い魔法を使えるわけだね。でも、近くにエレメントがない場合はどうなる? ほら、例えば、砂漠の真ん中でも水属性魔法を使えるの? 」
「流石リリーナ、そうよ、これが自然魔法のいいところと悪いところなのよ。じゃあ、次はエルフの人間嫌いについて」




