逃走編 第11話 イエスでございますか?
「魔王様って、どんな人? そもそも種族はなに? 」
「種族は分かんない」
「え・・・」
「性格も分かんない、会ったことないし」
「え・・・だって、あなた言ったじゃないか、うちのドラゴンは魔王様と互角に戦えるって。なのに、魔王様について何も分からないの? 」
「分からない、うちの祖先は魔王様と戦ったことが有ったが、決着はつけていなかった。うちの祖先が根負けして、魔王の家来になったわけさ」
「ダサい・・・」
「あ、そうだ、魔王と互角に戦える何て、外では絶対に言わないでよ」
「言わないよ、子供じゃあるまいし、あたし、もう十二歳だよ」
「そうだな、あなたももう大人だもんなぁ、でもね、お母さんにとって、あなたはいつまでも子供なのよ」
「じゃあ、行ってきます、お母さん」
「行ってらっしゃい」
そういうわけで、あたし、クネス・スネークは、始めて、闇のスネークとして、イエス!魔界戦隊ファイブの会議に参加した。
「初めまして、闇のスネークです」
「おめえが新しい仲間か? このあと俺と一戦交えろ! 」
「よろしく、スネークちゃん、歓迎するわ」
「俺とも一戦交えようか? 性的な意味で」
「よろしく、あ、だり~」
熱血そうなのは火のゴースト、魂を操れる、亡霊からも情報を聞き出せる凄い魔人。 糸目の女の魔人は水のセレン、戦場の歌姫。歌で生物を強化し、操る。 この軽いそうな男は土のタイサ、ネクロマンサーで、屍さえ操れる。 穏やかな男の子は風のブラント、植物を操れる。
加えて、ドラゴンと共に戦えるあたし、これがイエス!魔界戦隊ファイブ。これからは、この五人で頑張る。
「では、会議を始めようか」
「え・・・そんなことより、スネークちゃんの歓迎会をやろうぜ」
「だり~早く終わらせよう」
「おい、ブラント! やる気を出しやがれ。」
「別に僕、報告したいことないし」
「でめぇ!」
「それより、ゴースト、早く報告しなさい」
「ああ、あの亀を討伐した」
「亀ですか? 」
「あぁ、スネークちゃんが知らなかったか」
「ええ」
「強い魔物が魔界に現れて、あたしが人間界まで誘導したけど、人間に気付かされた。人間どもに責任を問われたから、ゴーストを行かせたの」
「待ってください、相手は亀形の魔物なんでしょう? どうしてセイレーンさんが行かないのですか? あの亀を操れば簡単に倒せるでしょう? 」
「あんな魔物を操るには、膨大な魔力が必要、長くは持たないわ、あの亀、体型から見れば、自殺させるのもむつかしいでしょう、せめてあなたが居てくれれば・・・あ、さん付けしなくていいよ、あと敬語も」
「あ、はい、セ・・・セレン」
「おい、話続けるぞ」
「あ、ごめん」
「でも、俺は人間の魂を使ってなかった」
「え、それで勝てるの? 」
「ああ、自分の魂だけで何とか倒した、あっちのどっかの騎士団長と共に戦った。やぁ、人間にしてはなかなかの者だ、いつか一戦交わりてぇ」
「でもどうして魔法を使えないの? 魔物を甘く見ると、いつか痛い目に遭うわよ」
「俺の魔法が、人間に知られた」
「そんな? 魔界でも、知ってる魔人はなかなかいないぞ」
「そうなの? 」
「そう、表では、人魂はただの変な青い火、熱くないけど、何もかも燃やし尽くす火」
「知られたらまずいの? 」
「まずいわけじゃないけど、この作戦は使えなくなる。そもそもどうやって気付かされた? あの騎士団長は、そんなに魔法に詳しいわけ? 」
「いや、どうやら人間の常識になっているみたいだぞ」
「情報不足だと、こうなるのか・・・ごめん、あの騎士団長に一杯皮肉された? 」
「いや、あの騎士団長、何も言わなかったぞ。あいつと気が合いそうだ」
「あの騎士団長から聞いたじゃないの? じゃあ、誰から? 」
「綺麗な女の子から」
「うほ~ 女! しかも綺麗!? 」
「おい! タイサ、落ち着いて」
「おぉ、戦闘狂なゴーストが女の子に話しかけるなんで珍しいじゃないか」
「ちげぇよ、俺の魔法について色々話をしたから、ちょっと話を聞いてみるだけ」
「そしたら、お前の魔法は人間の常識だと言われた? 」
「そうだ」
「あの子が噓をついた可能性は? 」
「それはないだろう、あの女、子供しか見えないぞ。人間は見た目から年齢を判断することが出来る種族だろう? 」
「他の人間からも聞いてみなかったか? 」
「どうやって聞くんだ? 俺の魔法は常識だろう?ってか? 俺はナルシストじゃねんだよ! 」
「はぁ、とにかく、この作戦はもう使えないし、こっちの企みも人間にバレっているかもしれない。まぁ、スネークが復帰したから、そんなに悪い状況になっていないか。では、今日はここまで、解散」
「おい、プラント、起きろ」
「ふあ~あと五分寝かせて・・・」
「起きろ、帰るんだ」
悪い魔人じゃないと思う、この魔人と一緒に魔界を守る自信は、あるとおもう。