逃走編 第8話 拷問でございますか
「えーと、どうしよう? ねぇ、シスコンの妹、今何処にいるの? 」
「王都・・・」
「無理、遠すぎる」
「そうよね、そうなのよね、でも・・・」
「もうちょっと考えて見よう、今更だけど、シスコンを死なせず、ユニコーンを探し出す方法を考えて見て 」
「でもそんな方法本当にあるの? 」
「ほら、前のゴブリンキング戦で、この力の新しい可能性が発見したじゃないか」
「あーあ、体で運を感じることか」
「あれ、体と言うより、第六感の方が近い」
「ねぇ、ゴブリンキング戦で思ったけど、どうしてオオ二が助かったの? 一度赤黒になって、運もあげてない、死ぬ原因であるゴブリンキングも倒してない、なのにどうしてバナナの皮を踏んで、逆転出来たの? 」
「これは憶測だけど、あの股間撃ちと関係あるじゃないのかな? 」
「そうね、オオ二はあたし達に煽られて赤黒になった、破れた風船のように運が減って行く、でもゼロになったとは限らない。逆にゴブリンキングはあたしに運を全部抜かれたから、きっとオオ二より運が少ない」
「いや、あたしが言いたいのはそれじゃない、そもそも赤黒と言うのは状態でしょう? ほら、例えば六年前の実験でアサから運を抜いたでしょう、でも運を返す前に、何回じゃなくで、一回だけ転びだ」
「つまり、量が減ったから、質が良くなろうとして、不幸を招いていた。それが運を抜いて、一度だけ不幸になるわけか、質量を保つ為に」
「そう、その質を良くする方法がシスコンを死なせずユニコーンを探し出せる鍵になる」
「股間が撃たれたから、オオ二の運の質が上がった! あたし達はシスコンの有限な運から、死なない程度で最高質の運を抜く」
「でも質を上げる方法についてはね・・・」
「大丈夫、彼は死を覚悟していたよ、今更股間が数回蹴られるだけで何とも思わないはずだよ」
「うん、そうしよう。でも、そもそもどうしてシスコンは殺されるの? アサシンである彼は簡単に殺されるの? 」
「相性が悪い、浄化能力があるユニコーンに、シスコンの麻痺薬が効かないからな」
「そっちも手を打たないと。」
あれ? いや、待って。
「ねぇ、どうして麻酔薬? ひょっとして、シスコンはユニコーンを殺せずに角を取るつもりか? そう・・・じゃない・・・よね? 」
「え!? 」
「甘い! 甘々だな、シスコンを呼んで来い」
もう一つのあたしはシスコンを呼びに行った、彼女には悪いけど、シスコンをたっぷり痛めつけないと、腹の虫が納まらないわ。よくもあたしをはめたな・・・
「シスコーンさんが来たよ」
「こんにちは」
「こんにちは、早速本題に入りましょう。シスコンさんはあたしのことを信じているの? 信じていないよね」
「いや、信じている」
「どうして? 」
「なんとなく、信じられる気がした」
ふん、馬鹿め!
「では、とりあえず、あなたの手足縛るね」
「え!? 」
「信じると言ったじゃないか? 」
「あ、うん」
「ポーションも用意しないと」
「おい! 何故足を開いたまま縛るんだ? 何故ポーションが必要? 何をするつもりだ? 」
「ちょっと黙って」
「・・・」
気持ちいい! もっと怖がって!
「ゴクリ・・・」
準備よし、そろそろ蹴るか。
「待って! その足、まさか、やめろぉ! 死ぬぞ! 僕が! 」
「大丈夫、死なないよ」
「女だから、わかんないんだ、本当に死ぬよ」
「だい~じょう~ぶ~あ、口も塞がないと」
「んん! んんん! 」
「えい! 」
「んんんんんんんんんーっ!!」
うわ、冷や汗が凄い、本当に痛そうだ。
あ、気絶した。でも、気絶したら痛くない、不幸にならない、運の質も上がんない。水でもぶっかけて起こすか。
「ねぇ、女の子に股間を蹴られてどんな気持ち? ねぇねぇ、今どんな気持ち? 本当にバカだよな、あなた、ユニコーンを殺したくないだって? あたしからアサを奪うとしたのにね、酷くない? 」
「その辺にしておけ、シスコーンさん、痛かったでしょう? 大丈夫、今ポーション使うから。痛いの痛いの飛んでけ~ 」
流石あたし、男がこんな優しくされたら、きっと落ちる。まあ、ここはちょっと悪役を演じて見るか。
「でも、少なくともあと五回蹴らなければ」
「ん!? んんんーっ!?」
「お願い、シスコーンさん、我慢して、あたし達も色々リスク背負っているから」
そう、今は第六感を使って運を操作している、頭が痛くなってきた。それにこんな露骨に運を操作すると、力の正体が気付かれるかもしれない。
五回蹴った後、あたしはシスコンの運をクローンに送って、倒れた。
「おはいよう、リリーナ」
「アサ? 」
「ええ、あたしだよ、大丈夫? どこか痛いところはないか? 」
「ないよ、それより、シスコンと戦ったか? 」
「ええ」
「負けったな」
「ええ・・・ごめんなさい」
「アサでも負けるのか? 」
「・・・」
「あんなにあなたを信じているのになぁ? それとも、あなたを頼っているあたしが悪い? 」
「リリーナ、あたし・・・」
「もう負けないよね」
「ええ、二度と負けない」