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逃走編 第6話 崩壊でございますか?

 「あ、服まで生成しないよね。勿体ないけど、この服あげるよ」


 「ありがとう」


 この服は、あたしと彼女、リリーナ・ナナリーが持つ服の中で、一番古くて、安い服だ。


 「じゃあ、あとよろしく」


 「任せて」


 あたしは、リリーナ・ナナリーが作ったクローン、ここに倒れているシスコーンを足止めする為に作られた。あたしはリリーナ・ナナリーの記憶を全部持っている。外見も、性格も、魔力も、何もかも、オリジナルリリーナと全く同じだ。だから、あたしは、オリジナルの為に、どんなこともするつもりだ、どうせ、この体は一日しか持たないから。


 今はシスコーンが起きるまで待つ、足止めをしたあと、静かな所で死を待つか・・・


 どうして今日で死ぬのだろう? 昨日まで楽しくアサとご飯を食べたのに・・・


 怖い、死にたくない! この体は魔力が切ると崩壊するらしい、痛そう・・・


 なんでよ? なんであたしが死ななければいけないのよ? トラックに轢かれたことがあった、餓死したことも、処刑されたこともあった、今回は体が崩壊して死ぬのか?


 運、あたしの運はどうなっているの? あれ、運が見えない? どういうこと? クローンはオリジナルと同じ能力を持っているはずじゃん? もしかして、あたしの魂はオリジナルと違うの? 


 そうな・・・もしあたしはすずしろから転生したわけじゃなくで、別の誰かの生まれ変わりだとしたら、死んだあたしの魂と点はどうなるの? 今日でこの世界に生まれ来たから、いいことも、悪いこともしていない、ゼロ点になる。もしくは、人を騙し続け、力で父と叔父を死なせ、多くの生き物を実験台にして殺したリリーナとして、マイナス点になるの?


 そんなのいや、誰が助けて! 


 誰も助けに来ない、オリジナルリリーナも、アサも、セレナお母さんも、桜子も。あたしは死ぬしかない、せめてシスコーンの足止めをして、オリジナルの役に立とうか。


 もう、早く起きなさいよ! あたしが死ぬ前に絶対に起きなさいよ。でないと、あたしは何の為に召喚されたか、何の為に死ぬか? 


 また日が昇った、この野郎、丸一日寝てた。でも、良かった、間に合った、覚悟も出来たし。


 「え!? ここは何処? 」


 「おはよう、よく眠れましたか? 」


 「あなたはリリーナ? 」


 「ええ、そうですよ。アサは今頃スピードドラゴン車に乗って遠いところに行ったから追っても無駄ですよ」


 「え!? 僕はどれくらい寝た? 」


 「丸一日寝ましたよ」


 「丸一日!? いや、リリーナちゃんいつも嘘をついているから僕は信じないよ 」


 「信じるか信じないかはあなたの自由ですが、これが事実です」


 「噓だ、僕はアサ・オカンに麻酔矢を撃った、彼女は今も寝ているだろう、そしてあなたはここにいる、彼女はどうやって駅に行ったと言うのだ? 」


 「それは・・・」


 「きっとこの辺に隠しているのだろう」


 よし、死ぬことしか考えでなかったから、作戦を考えていないけど、上手く騙せた。ここは演技で騙そうか。下水道の蓋、これだ!


 あたしはさりげなく下水道の蓋の上に立っている、シスコーンを見ながら、一歩たりともこの蓋から離れない。シスコーンはあたしから情報を集めたいからあたしを観察している。


 「リリーナ、ちょっとこっちへ来い」


 かかった! あたしは頭を振って、目を泳がせて、こう言った。


 「ア・・・アサは下水道にいないよ・・・」


 「見つけた、下水道で隠しているのか? 」


  駄目、笑うのを我慢しないと。


 「駄目です、待ってください、シスコーンさん、あなた、アサをオカン家に渡すと、どうなるか、知っています? 」


 「どうなる? 」


 「アサは実験材料にされるのよ! 」


 「・・・っ!? 」


 「あなたにも妹があるでしょう? あたしの気持ち、分かれるでしょう? 」


 「それは・・・」


 「あなたの妹の為に、アサを犠牲にしでも何も思いませんの? 」


 「じゃあ、僕の妹はどうする? 僕の妹だって、悪いこと全然してない! 妹の為に、僕は! そこから退け! 」


 説得は無理か・・・まあいいけど、誰もない下水道でアサを探して。


 「退きません」


 痛っ! シスコーンに体当たりされた・・・シスコーン蓋を開けって、下水道に入った。これであたしの役目は終わった、後は死を待つだけ。


 金があれば宿屋のベットの上で目を閉じて、寝ながら死にたいけどね、仕方ないからここで寝ようか、床硬い・・・もし魔法石があるのなら魔法で眠れるのに・・・


 寂しい、寒い、怖い、死にたくない、でも、死ぬ前にオリジナルの役に立った。


 一時間が立って、あたしはもうすぐ死ぬと知った。


 「おい! ないぞ! また僕を騙したな! 」


 静かに死にたいよ! 一人にしてよ! でもシスコーンはあたしを持ち上げ、力一杯で揺らした、あたしの足が崩壊してると気付きまで。


 「おい、あなたの足、崩壊してるぞ」


 「ええ、あたしは嘘なんてついていないよ、あたしはクローンだよ、本物のリリーナはアサと一緒にスピードドラゴン車に乗って遠くに行きましたよ」


 「クローン? どういうこと? 」


 「あたしはリリーナが魔法石で作ったクローンですよ、魔力が切ったらあたしは死にます」


 「でもクローンって、意識があるじゃないか? あなた、怖くないのか? もうすぐ死ぬと言うのに 」


 「こんなこと言わないでよ! 涙を我慢できなくなるじゃない? 」


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