逃走編 第4話 後悔でございますか?
「いい匂いだね、この店にしようか? 」
「ええ」
グゥー。
アサもお腹が空いたか? 早く注文しないと。
注文したあと、アサは嬉しそうな顔であたしを褒めた。どうやらアサは、噓が悪いことだと思っていないみたい。まぁ、あたしだって、好きで嘘をついているわけじゃないだから!
噓と言えば、そう、妹みたいにアサに甘える大作戦、第二弾!
「あーん」
「ええっ!? リリーナ? どうしたの?」
「食べさせて」
「ええっ!? 今、何とおっしゃいましたか? 」
「アサに食べさせて欲しいの、駄目? 」
うわ、びっくりした! アサが突然テーブルに頭をぶつけた!
「ちょ、アサ!? 何するの? 」
「さぁ、リリーナ、口を開けて頂戴」
「あの可愛い子ちゃん達何やってんの? 」
「食べさせるプレイみたいだよ」
見られてる、すごく見られてる! 恥かしい!
「ちょっと、アサ、注目されているからやめて」
「だ~め~さぁ、あーんして」
「・・・」
どうしよう、恥かしい!
「リリーナ、あーん~」
早く終わらせるしかない。
「う・・・あ・・・あーん」
「あの子食べた、二人はどういう関係? 」
「似てないから姉妹じゃないな、百合? 」
「いいもの見たな」
「だな」
ほら、勘違いされたじゃない。
「もう、アサっだら」
「はい、あーん」
「ちょっと、一回でいいよ」
「一口だけ? 」
「恥かしいから一口だけでいいよ」
「ほら、口についているよ」
アサが指で取ったあと、食べた。
「ちょ、自分で取るから・・・もう」
あれ!? このやり取り、どっかでやったような気がするけど。あぁ、桜子とだ。アサも、桜子のように、優しくあたしを接してくれるの? 別に桜子を探さなくでも、アサと暮らせばいいじゃないの?
いや、駄目だ。アサとあたしの関係は嘘だ、あたし達の間は嘘しかいない。今更仲良くなりたいんだなんて・・・もう遅いよ。アサはきらいになれるわけないって言ってくれたけど、建前を信じるほどあたしはバカじゃない。
ごめんね、アサ、あの時は死んでいないよ、死んだ振りをしただけ。それと、あの時、アサが魔法に撃たれたでしょ。あれはあたしが仕組んだことだったよ。どうやって仕組んだって? あたしは運を司る力を持っているから。そう、そう、アサも実験台にしたことがあるよ。あと、今だってアサにメロメロさせるように、精一杯甘えてるよ。ねぇ、アサ、あたしを許してくれる?
許せるはずないでしょう? さよなら、リリーナ。
よくもわたくしを騙しましたね、リリーナ、死になさい!
はぁ、駄目だ、許される未来を想像出来ない・・・嘘をつかなければ良かったのに・・・え!? 今更? 今更後悔しでももう遅いよ。あたしに残された道は、もう嘘を重ねるしかない。
「リリーナ、どうしたの? 顔色が悪いよ、美味しくない? 」
「そうじゃないよ、ちょっと考えことをしただけ」
「ねぇ、リリーナ、これから二人だけでクエストに行けるようになったね、どんなクエストに行きたい? 」
「そうね、自分でポーションを調合すねば節約できるから、次回は薬草採集クエストに行こう」
「え!? でも、自分で作ったポーションや、安いポーションは、傷痕が残るよ」
「え!? 傷痕が残るの? まさか、あたしの背中も、傷痕が残っているの? 」
「だ・・・大丈夫だよ、あたしが使ったポーションは、傷痕が残らない高いポーションだから」
「そうか、女の子だから高いポーションは必要経費、節約できないか。じゃあ、次回はゴブリンの討伐クエストでも行くか」
「え!? どうして? 邪魔者さえいなければ、風の最上級魔法を使えるよ。ゴブリンキングなんて、いちころだよ」
「前に、シスコンが、どうあたし達の居場所を特定したのか、もう忘れた? 使ったら、シスコンみたいな奴が沢山来るわよ」
「その時は、風の最上級魔法で全部倒せばいいことじゃない? 」
「あたしは、アサに人を殺めて欲しくない」
このままじゃ、死んだあと、魂が消されてしまうよ。
「リリーナ・・・わかった、これからなるべく人を殺せない、約束する」
「でも、危ない時は殺しても構わないから」
「うん」
「さぁ、宿屋に戻るわよ」
「はい」
はぁ、一泊の宿泊費が・・・あのシスコン、今度出会ったら、金を返して貰う。
それより、妹みたいにアサに甘える大作戦、第三弾!
まずは枕を抱いて・・・上目遣い!
「アサと一緒に寝たいけど、駄目? 」
「え!? 一緒に何をしますって? 」
「寝る」
「誰と? 」
「アサと」
「リリーナとわたくしが? わたくしとリリーナが!? やりました! リリーナと一緒に寝られる! やりました、嬉しい! 叔母様、遂にこの日がきてしまいました! 」
アサはどっかに走った。
「女将さん、リリーナがわたくしと一緒に寝たいですって」
やめてよ、恥かしい!
「え、ああ・・・おめでとう」
あ、走って戻ってきた。
「わたくしと寝たいのですね、聞き間違いではありませんよね」
「アサ、はしゃきすぎ、あと喋り方も元に戻ってるよ」
「あ、ごめん、だって嬉しくって」
「もう、しょうがないんだからっ・・・もう、寝よ」
この夜、あたしは魔法を使わずに寝た、悪い夢は見なかった。
「お客様当ての手紙です」
「誰から? 」
「オカン家のカミラからです」
「お母様!? 」
あれ? どうしてアサのお母さんはあたし達の居場所を知っているの? いや、しまった!
「ニーナ、その手紙はあなたのじゃない! 」
「ええ!? 」
「もう遅い! お母様って、はっきり聞こえた」
「シスコンさん!? 」
「シスコーンだ! 」