序章 第4話 兄弟でございますか?
あたしはアイ、五人兄弟の長女だよ。
あたしはね、小さい頃からずっと気になる事がある。それは、あたしの肌の色は、皆のと違う。皆の膚は泥、いや、うんこ、いや、皆に失礼でしょう。他にあの色してるものは、えーと、鶏の餌? 駄目だ、考えれば考えるほど失礼な事しか思いつかない。
皆と違ってあたしの膚は雲と同じ色だ。皆は綺麗だと言ってるけど、あたしは皆と同じ膚の色の方がいい。あたしのことを神の子と呼んでいる人もいるし・・・
髪も違う、皆の髪の毛はカールだけど、あたしのはストレート。
時々思うんだ、どうしてあたしだけが皆と違うのでしょう…
あっ、ぼっとしてる場合じゃない、早く鶏さんに餌を与えなくちゃ!
そうよ、あたしの仕事は鶏さんの世話と水くみ、あとは、樹から落とした果物を拾う。地味な仕事だけど、弟や妹達があたしが拾った果物を楽しく食べているところを見ると、心が暖かくなる。
あたし達が住んでいるところは海に囲まれている、泳げる人もいるけど、海の向こうに何があるのかは、誰も知らない、いつか大きなお魚さんの背に乗って、海の果てまで行けるといいな。空と海は繋がっているから、海の向こうにきっと空へ続く道がある。そして、空の上の雲を食べる。きっと美味しくて、ふわふわなんでしょうね。でも、お魚さんって生臭いよね、やはり鳥さんの方がいい。鳥さんの背に乗って、海の果てまでいくのが私の夢なんだ。
でも、それは弟や妹達が自分の世話が出来る時の話だ。お姉さんだからな。率直に言って食べものは七人分に分けられない。だから、あたしはいつも外で食べたと言い張って、実は何も食べてない。親は分かっているけど、弟や妹達はいつもずるい、ずるい、いつも外で沢山果物を食ってるって…悪気はないことくらいは知ってるけど、ちょっと切ないな・・・昔誰かに、微笑めばいいって言われた気がする、お母さん?いえ、なんかあたしと同じ膚の色をしてる女性、一体誰だろう?なんとなく、あの人はとっても大事で、絶対に忘れちゃいけない人だと思う、でもどうしても思い出せない。
今日も足りなかったか、果物・・・またご飯抜きか?まぁ、水でも飲むか・・・お父さんが沢山お魚さんを捕まえられるように祈るしかない。
「ごめんね、今日は調子が悪くってね、魚捕まえられなかった、果物で我慢しなさい」
「あたしは今日も外で果物を食べだ、あたしに構わずに沢山食べなさい」
「またか、お姉さんずるい!ずるい!」
「アイ、いつもごめんね」
「大丈夫だよ、お母さん、あたしもう寝るから」
やはり誤解されるのは辛い。でも知られたら、彼らはもうこんな笑顔で果物を食べることはない。
「アイ、まだ起きている?」
「起きているよ、どうしたの?お父さん、お母さん」
「アイは偉いね、辛いでしょう?でも、大丈夫だよ、彼らが大きくなったら、お母さんがちゃんと彼らに説明するから」
「ごめんね、アイ、お父さんが上手く魚を捕まえるから・・・」
「あたしは気にしていないから、心配しないで。お休みなさい」
「本当に大丈夫?」
「本当に大丈夫だから、お休みなさい」
「お休みなさい」
あたし、心配される程顔に出てた?
あたしは寝る事が好き。いいえ、正確に言えば、夢を見る事が好き。夢の中に、とっても優しい、あたしと同じ膚の色をしてる女性が住んでいるんだぁ。あたしに優しさを教えてくれる。彼女と会える事が、あたしが優しくいられる理由、毎日辛いけど楽しい。
けど、あたしはお姉さんだ。辛みを知らないお姉さんのように、振る舞うしかない、アンインストール。あれ?アンインストールって何?
それに、弟や妹達が元気に育っていく姿を見るのも、楽しいことだよ。例えずっと分かってくれなくても、何も、悪いことじゃない、アンインストール。え? だから、アンインストールって何?
今日も夢であの女性と会えた、けど、あの人は、あたしのことをアイじゃなく、別の名前で呼んでいる。
あ、また起きたのか、もっと夢を見たかった。
今日は自分の分の果物もありますように。そして、鶏さんが休まず、卵を産んでくれますように。でも卵は皆に分けるから、うちが貰える卵は少ない。あたしの分はきっと取れないだろうね。
まず山に登って、一番美味しいお水を酌む。そして鶏さんに餌を。あとは卵が割れないように大事に運ぶ。最後は果物を拾う。夜は弟や妹達と遊ぶ、そしてあたしの一日は終わる。
変わらない毎日だけど、弟や妹達の成長を見るのも意外と楽しかった、アイはもうお父さんと一緒にお魚さんを捕まえに行けるよ!
そして、あの日が来てしまった、災難の始まりが。
あたしは山の上で水を酌む時、海の上にでっかい木みたいな物が浮いているのを見た。これはあたしを迎えに来たお魚さん?
皆も気づいて、砂浜に集まった。
あのものから、輝いている、石みたいな生きものが出てきて、自分の頭を取った。あれ、普通に人間だ、ただ、体に輝く石みたいなものを纏っている。それに、あたしと同じ膚の色をしている、でも、髪の色は違う、月のような髪だ。それに、喋れる、単純な発音ではなく、ちゃんと会話してるみたい。
海を渡れる、喋れる、輝く石を纏う、この人達、間違いなく、あたし達より、頭がいい!それと、強い! 嫌な予感しかしない、自分より劣る、そして、言葉を交わせない、つまり、彼らにとって、あたし達は動物と同じ。ここは隠れて、様子を見るべきだ。
あっ、お父さんが話しかけに行った…無駄だよ、言葉が通じない。あっ、やばい、あの人が腰から何を抜いた。
アンインストールはアニメ「ぼくらの」のOPです、とってもいい歌なので、良ければ聴いて見て下さい。