表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/290

逃走編 第1話 賞金稼ぎでございますか?

結局、あたしの指に嵌めた魔法石について、アサは何も教えてなかった。


 強引に聞きたすのも出来なくもないけれど、それほど気にしているわけじゃないとアピールしたいの。


 まさか、アサがこんな意地悪な一面があるとは思わなかった。あたしはGが苦手と言う弱点は、絶対気づかれないようにしないと。


 痛っ! 首が、何かに刺された。意識が遠のく。


 ここは? まず冷静に状況を分析しよう。荷車に載っている女の子ふたり、あたしの隣で寝ているアサ、焚き火の隣にいる水色髪の男、夜空。


 「起きたか? 」


 やばい、もっと状況を分析し、対策を練る時間が欲しい。仕方ない、あの技を使うしかない。


 狸寝入り! 


 「おかしいな、確かに起きた気配が・・・」


 寝たふりをする時は、絶対に唾を飲んじゃ駄目、涎を垂らしでも構わない。すずしろが読んだ本によると、寝ている人はゆっくりで、深い、安定な呼吸をする。


 「この子やはり可愛い。睫毛長い、唇柔らかそう」


 変態、寝た人に変なことをしようとする何で最低。


 「だめ、こんなことをするために、攫ったわけじゃない」


 では、一体何のために? この人は賞金稼ぎ? 誘拐犯? それとも奴隷商人?


 もしこの人は賞金稼ぎと誘拐犯なら、どうやってアサの顔と居場所を確認したのか? 奴隷商人の可能性は? いや、二人だけ攫って、荷車で運ぶような奴隷商人はないと思う。


 賞金稼ぎはアサの命を狙わないけれど、アサをオカン家に戻せば、アサとの旅が終わる。誘拐犯は一番厄介、身代金を払っても、殺される可能性がある。


 でも、先の反応を見ると、この男は血も涙もない人には見えない。説得できる可能性もある。


 まずは、あたしの口を塞がれているこれを取って貰うか。


 「んん、んんん」


 「起きたか? 」


 「んんん」


 「待って、今取るから。魔法を使わないでよ、また気絶させたくなければ」


 ここは頷くしかない、あたし、魔法使えないし。


 「よし、いい子だ」


 「はぁ、あなたは奴隷商人さんですか?」


 一般民衆を攫うのは奴隷商人だけ、アサの正体はまだばれていない可能性もある、例えもうばれたとしても、人違いと言い張れば惑わせる。


 「いや、俺は賞金稼ぎだ」


 「賞金稼ぎがどうしてあたし達を? 」


 「この子はアサ・オカンだろう」


 「いいえ、彼女の名前はニーナ・アイです」


 「そんなバカな、この絵とそっくりじゃないか? 」


 なるほど、アサの絵を持っているのか、道理で。


 「見せて」


 「ほら」


 「そんな、あたし達は、あなたが人間違ったせいでここまで連れてこられましたか? 」


 「すまない」


 「ニーナ、ニーナ、起きて」


 アサじゃなくて、ニーナで呼び起こすと、アサも状況を理解できるはず。


 「んん?んんんん・・・んん?」


 「ニーナ、あたし達は賞金稼ぎさんに間違ってここまで連れてこられたみたい」


 「んん、んんん」


 「すまない、今すぐに取ってあげるから」


 「縄もお願いします」


 「はい」


 頼むよ、アサ、状況を理解して!


 「賞金稼ぎ!? 」


 「そうよ、なんとかオカンとかいう人と間違って、あたし達を攫ったみたいよ」


 「面目ない」


 「なるほど」


 はぁ、良かった、アサが状況を理解したみたい。


 「えーと、どう称呼すればよろしいでしょうか? 」


 「あぁ、俺はシスコーンだ、よろしく」


 「よろしくお願いします」


 「よろしくお願いいたします」


 信じって貰ったみたい。


 「ではシスコーンさん、元の場所に戻ってくれないでしょうか? 」


 「もちろん、これは俺の責任だ。それより、腹減ってる? あっ、魚が! 焦げる! 」


 行った、この距離なら聞こえないよね。


 「アサ、あなたは今からニーナよ、アサじゃなくてニーナよ」


 「はい、分かっているわ」


 これで大丈夫、やはり人生は演技だわ。


 「待たせたな、焼き魚だよ」


 「ありがとうございます。では、いただきます」


 「いただきます」


 うわ、焦げた焼き魚、まずい。


 「ね、シスコーンさん、どうして賞金稼ぎになったんですか? 」


 「そうね、俺の一族はアサシンの一族だ。でも、俺は人を殺したことがない、殺したくない。昔、犬を飼ったことがある。あの犬が死んだあと、妹と俺はとっても悲しい。家族を失った悲しみを知った俺は、もうアサシンに成れない。でもな、最近、妹が、死に至る病におかされている。治せるのはユニコーンの角や、フェニックスの羽みたいなレア素材が必要。そこでオカン家が出した指名手配を見た。人を殺す必要はない、報酬は高い、正に最高の仕事だ。だから、俺はオカン家に行って、アサ・オカンの絵をもらい、情報を集めた。俺は風属性の最上級魔法を目撃した森から探す、アサ・オカンの絵で情報収集した、ようやく見つけたのは、あなた達だった。凹むな、またゼロから情報を集めるか・・・」


 「なるほど、妹の為に、いいお兄さんですね」


 「俺の妹はとっても可愛い。昔は、俺の指を掴んで、お兄ちゃん、お兄ちゃんって。料理も得意だ。俺には勿体ない、完璧な妹だ! あ、何故妹と結婚できないのだろう」


 この人、シスコンだ、キモっ! いや、別にシスコンがキモイわけじゃないけど、こんな露骨なシスコンは本当にキモイ。


 「あの、シスコンさん」


 「シスコンじゃない、シスコーンだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ