冒険編 第11話 ドラゴンでございますか?
「クネス、お父さんが今日引退したから、あなたが黒竜騎士にならなければいかなくなった」
「そうか、平和で暮らせる日々はもう終わったか。それより、どうしてお父さんが引退したの? まさか、治せない傷でも負ったじゃないよね」
「違うわ、ちょっと疲れただけよ、心配することはないわ」
「それは良かった、それで、黒竜騎士になるには、何をすればいいの」
「まずはドラゴンを選ぶ」
「ジャスティンでいい」
初めてジャスティンを乗っているお父さんの姿を見た時、いつかお父さんみたいな黒竜騎士になりたかった。だから、あたしはお父さんのドラゴン、ジャスティンに乗る。
「待って、早まらないで! せめてジャスティンとエリックのことを聞いたから決断をしよう、ねぇ」
ジャスティンでいいと思うけど、まぁ、話を聞くだけなら。そもそも、どうしてドラゴンを選ぶ必要があるの?
「ドラゴンが二匹あるなら、好きな時に、好きなドラゴンを乗ればいいんじゃないかな? 」
「黒竜騎士の魂は、ドラゴンの魂を支配出来るが、もちろん、支配出来るドラゴンは一匹だけ。二匹を支配しようとした人もあったが成功せず、魂が引き裂かれた」
「でも、ドラゴンと仲良くなれば、支配しなくても、共に戦うことが出来るじゃないのかな?」
「甘いよ、クネス、甘々だね。ジャスティンとエリック程のドラゴンが、あたし達と仲良くなれると、本気で思ってるの? ただでさえプライドが高いドラゴンが、ドラゴンの魂だけを支配出来る程度の魔人と仲良くなれる何で。いや、黒竜騎士だからこそ、ドラゴンと仲良くできないのよ。百歩譲って、本当にドラゴンと仲良くなっても、支配されるより弱くなる。黒竜騎士はドラゴンの潜在能力を引き出すことができるからな」
黒竜騎士は、ドラゴンと共に戦う戦士だと、ずっと思ったのに。こんな、ドラゴンを道具扱いようなやり方・・・
「クネス、気持ちは分かるが、あなたは世界で唯一の黒竜騎士なんだ、例えあなたが黒竜騎士にならないとしても、ジャスティンとエリックはここで監禁されるだけだよ」
「ええ!? どうして?」
「ジャスティンも、エリックも、不死身だが、食欲がないと言うわけじゃないの。野放ししたら、魔人は食い尽くされるわ。それに、支配と言っても、ドラゴンは自分の意識を保てるの。ただ、あなたの言葉に逆らえないだけ。こんな所で監禁されるより、外で飛べる方が、ドラゴンにとっても、ずっといいと思う」
そうね、これもドラゴンの為に。
「分かった」
「じゃあ、まずはあなたの大好きなジャスティンから紹介しようね。この漆黒のドラゴンは唯一の死属性のドラゴン、いや、唯一の死属性の生き物。圧倒的な戦闘力を誇るドラゴン。黒竜騎士に潜在能力を引き出されたら、かの魔王様とさえ互角に戦える。ジャスティンのブレスは毒やネガティブエネルギーみたいなやわなものじゃない、死、そのものだ。髪で触れただけで死に至る、最凶のブレス。そして、ジャスティンは、死そのものだから、もちろん死なない。例え殺されても、5分くらい立つと、ジャスティンの魂が体に戻って、生き返る。正に無敵」
ジャスティンはそんなに強いのか。でも、ブレスは使わせない方がいい、危険すぎる。
「黒いドラゴンジャスティンの死に対して、白いドラゴンエリックは不死。直接戦闘力が魔王様とジャスティンに劣るけど、あたしはエリックが一番強いだと思う」
「どうして? 」
「魔王様とジャスティンの戦闘力は十なら、エリックは八。でも、エリックのブレスは生き物や、死体をアンデッドに変える。生物がこのブレスにちょっとでも触れたら、一時間くらいで死ぬ、そしてエリックに支配されるアンデッドとして蘇る。一対一では、エリックがジャスティンに勝てないけど、不死の軍勢を作れば、エリックはジャスティンと互角以上に戦える。それに、エリックは不死、本当の意味の不死だよ。どんなに攻撃されでも死なないの。殺されたあと復活するジャスティンと違って、本当の意味の不死身なのだ!」
ドラゴンは強い、それは知ってるけど、ジャスティンは魔王様並み、エリックは魔王様以上? そんなわけないじゃないか。
「ジャスティンとエリックが本当にそんなに強いなら、どうして人間族に勝てないの? 」
「クネス、あなたは誤解をしているわ。まず、相性が悪い相手がある。女神様が授かった聖なる武器は、不潔なものを浄化出来るの。ジャスティンとエリックのブレスと不死性を無効化出来る。そして、あたし達一族の宿敵、フェニックスライダーも強敵だ。フェニックスは死と不死を対抗出来る、せい属性なの」
「聖なる武器と同じ、聖属性な生き物が存在する何で・・・」
「正しくは生属性だけどね、再生を意味する。フェニックスの火は、ジャスティンのブレスに殺した生き物さえ復活出来る、エリックのアンデッドさえ元通り戻せる。いつか戦うことになるから覚えて」
「ジャスティンとエリックのブレスを無効化じゃなくて、生き物を復活させる・・・そうか、人間族も侮ってはいかないよね」
「いいえ、人間を滅ぼせないわけじゃない、滅ぼしたくないだけ」
「え!? でも、魔族と人間族は敵対関係でしょう? 」
「そうよ、でもね、人間より、魔物の方がずっと厄介だわ。もし人間族を滅ぼしたら、人間に魔物を押し付けられないじゃない」
「でも、本当に魔族が人間族を滅せるのかな? 」
「もちろん、人間はバカばかりだから」
「どういうこと?」
「昔、人間族は魔族と同じ、王が一人しかない。でも、今は四人もいる。人間族は四つの国に分けていた。聖なる武器も、この四つの国で分けられた。本来であれば、四人の勇者が力を合わせ、魔王様を倒すはずなんだけど、肝心な王様達は、他の人間族の国しか見えない」
「そうね、バラバラな人間族が、魔族に敵うはずないよね」
「クネス、ドラゴンの話に戻そう。ジャスティンとエリック、どっちにする? 」
「あたしは・・・」




