冒険編 第10話 マイペースでございますか?
「おはよう、アサ」
「おはよう、リリーナ」
「後ろに何隠しているの? 」
「いや、何でもありません! 」
赤く染めたベッドシーツ、なんだ、生理でベッドシーツを汚しただけじゃないか? 言葉遣いが戻るくらい恥ずかしいことじゃないと思うけど。
それより、量が多いね、貧血にならなければいいけど、ちょっと心配だな・・・
心配・・・あたしが、アサのことを?
ないない~
今日は寒いね、夏なのに、それに、体が怠い。
「ごめん、アサ、まだ眠いの、寝かせて」
「いいよ、でも顔色悪いから、ちゃんと栄養を取らなきゃ」
これじゃあ、あたしの方が貧血ぽいじゃないか。
「これを食べて」
「なにこれ? 」
「レバーだよ」
なんでレバー? まぁ、いいか、眠いから。
食べたあと、あたしはすぐに寝てしまった。
「ごめん、アサ、昨日眠ってしまって、一緒に買い物に行くって約束したのに」
「大丈夫、お小遣いも使い果たしたし」
「え!? 何を買ったの? 」
「ポーション」
「ポーションを買った? あたしに言ってくれれば、お金あげたのに。さぁ、買いたい魔法石があるでしょう、行くわよ」
「はい」
「アサ、あたしがお金を管理するのは、確かにあなたが無駄な所にお金を使って欲しくないから。けれど、お小遣いと云うのは、無駄な物でも、好きなら買ってもいいお金なのよ」
金持ちはお小遣いと言う概念がないのかな? それとも、アサにケチな印象を残ったのかな?
「大丈夫だよ、ゴブリンキングクエストで、分けられた報酬は多いから、ちょっと余裕が出来た。魔法石くらい問題ないわよ」
「では、お言葉に甘えさせていた・・・貰うわ、へへ、うへへへ」
うわ、アサ、今の笑、お嬢様には下品よ、魔法石を買えるのはそんなに嬉しいか?
「ここだわ」
この店、小さいな、アサが探している店は、本当にこの店なのか?
「いらっしゃいませ」
「えーと、ここが噂の魔法石があると、聞いたことがありますが」
「噂の魔法石? さて、何のことかしら? 」
噂の魔法石、何の噂?
「では、先ずこの手紙を読んでください」
「どれどれ」
手紙、アサの家族はまずあり得ない、考えるのは先生だけ。
「こちらへどうぞ」
隠し部屋、どうして? あたし達、やばい物を買いに来たの?
「アサ、先生にどんな魔法石を買うと言われた? 」
「魔法石、ホムンクルスのたまこ。自分の魔力を全てこの魔法石に注げば、自分と瓜二つのクローンが作れる。ところが、リリーナ、あなたの魔力はゼロでしょう? 」
「でも、流石にゼロ魔力では、魔法石を発動できないと思う」
「案外そうでもないかもよ」
「面白いこと言っているね、この手紙に書いている、面白い事って、魔力障害にホムンクルスのたまこに使わせること? 」
「ええ、面白いでしょう」
「って、どうして秘密してるです? 違法・・・じゃない・・・ですねぇ? 」
「違法だけど。魔力ゼロ、つまり、完全な魔力障害。あなた、名前は? 」
先はとぼけたのに、今は率直に違法って言ったね、この人・・・
「リリーナ・ナナリーと申します」
「待って、ナナリーって、あのナナリーか? 」
「他のナナリーはないと思いますが」
「没落したあのナナリー? 」
「ええ」
「あなた、兄弟あるのか? 」
「いいえ、ないです」
「ああ、勿体ない、混合属性魔法を使えるナナリー家のお嬢様は完全な魔力障害とは」
「ナナリー家が、混合属性魔法!? 」
「ナナリー家が、混合属性魔法!? 」
「ええ!? 知らなっかたの? 」
「知らなかったです」
「ええ、ナナリー家は水と風の混合属性魔法、氷魔法が使えるのよ。なのにどうして、あなたは完全な魔力障害なのよ、勿体ない。」
何なのこの人・・・あたしだって、好きで完全魔力障害になったわけじゃないだから。
「いや、待って。はは、それは良かった! あなたが魔力障害で本当に良かった! 」
まったく何なのこの人!
「何が良かったのですか? 」
「あたしがあなたに氷属性魔法を使わせる」
「いや、魔法石を使えば氷属性魔法だって使えると思いますよ、毎日魔法を使っていますから」
使わないと眠れないから。
「あなた達、職業は? 」
「一応冒険者です」
「なら良かった、あなたが氷属性魔法で戦える杖を作ってあげる。三日後に来て、三日で完成させる」
「えーと、ホムンクルスのたまこのテストは? 」
「あぁ? そんなの三日後でいいわ、テストの結果が変わるわけでもないし。それより、ああ、アイディアが溢れてくる。あなた達邪魔よ」
この人、嫌い。
「リリーナと同じくらい、マイ、いや、風属性ぽいの人だね」
「なんが言ったか? 」
「いいえ、何でもない」
あたしがマイペース? そんなこと・・・そんなこと・・・あるかも・・・
この三日、思ったより長かった。別に期待しているじゃないけど、やはり、何を待っていると、時間が長く感じるよね。
「え、これはなんですか? 」
「魔法の杖だよ、完成するにはあなたの血が必要だから頂戴」
「いいですけど」
それより、これ、どう見てもライフルじゃないか。
「でも、魔法の杖だけで、魔力障害の解決になれないよね」
「そう、ここを見て、ここはマガジンと言う。魔法石をここに刺せば、あなたが使える魔法を撃ってる。この魔法石は、中に流れた血とあなたの血を共鳴させ、魔法を強化する。魔力魔法石は六つがある、吸血鬼の心臓を使ったから、中級魔法さえ使える」
「心臓? 」
「どうしたの? リリーナ」
「魔法石って心臓で作ったの? 」
「ああ、そうか、リリーナは知らなかったな。心臓だけじゃないよ。脳や、羽や、爪や、目玉も使っている」
魔物図鑑で見た時、桜子とプレイしたゲームと同じ、魔法石を落ちると思った。いや、待って!
「ねぇ、あたしの指の中の魔法石は、何で出来でいるの? 」
「それは、知らない方がいいと思う」
「なにそれ、いやぁーー!!」




