平和推進編 第6話 後 返事でございますか?
次はチャーリーね。
あのさ、私がユアンと話してる間に、ちょっとは水でも浴びてくればいいのに。
「チャーリーさん、何か不満とかない?」
「ないよ。ブレイク公爵のことは子供の頃から聞かされてた。僕の出身国がブレイク公爵のお陰で繁栄してたのは事実だ。まあ、獣人たちの状況を問題だと認識してからは、素直に感謝はできなくなったけどね。でも、リリアちゃんを悪く言ったのは許せないよな!」
そういうのいいから。チャーリー、獣人じゃないからそんな尻尾振らないで、お願い。
アサは⋯⋯と、チャーリーを睨んでる。しかも、一瞬私と目があったのに、すぐに視線を戻してチャーリーを睨み続けた。チャーリーと……私への牽制か。チャーリーはまったく気にしてない、というか、気づいてない。私だけ見てる……。めんどくさいな、この人達。
そして私がアサと交際してるのをチャーリーに教えるかどうかという問題に戻る。正直、王様の教えに従うなら、絶対に黙っておくべきだ。私といられること自体が、チャーリーにとってケルベロスにいる大きなメリットになっているはずだから。なんなら、身体を使って籠絡する価値さえあるかもしれない。……世界の和平って、私にとってはその程度のものだったのか? うーん……案外、その程度なんじゃない?
ううん。ちがうの。嘘をつくなら、バレた時の影響も考える必要がある……だしー、必要のない嘘はつかない方がいい。それに、アサ絶対喜ぶし。
でもでも、変じゃない? わざわざチャーリーに、私達女同士で付き合ってますー!って。
いや、でもね。チャーリーは昔、私に告白してた。つまり、チャーリーからすれば、私は彼が自分に好意を持っていることを知っている、という前提のはず。ううん。たとえそうだとしても、今ここでわざわざ彼を振って、やる気を削ぐ必要がどこにある?
そういう正当化はいいから! あなたはただ、彼に嫌われたくないだけでしょ。
いやいや、信用が……。
うん……これも違うか。……もう、解放してあげなよ、恋という呪縛から。
「チャーリーさん昔私に……告白した、よね?」
「……っ! そ、そうだよ」
「私に恋してるってことで、合ってるよね? 今も、その気持ちは同じ?」
「もちろん!」
もし、私と付き合うことが出来なくても、その正義は本物だと信じていいよね?
……流石にこの言い方はずるいか。
「ごめんなさい」
「どうして? 僕のことが嫌いなのか?」
「リリーナはわたくしと……」
「アサ! ちょっと静かにして」
「……」
「私、チャーリーさんのこと、恋愛対象として見てないの」
きっと、アサと付き合っているかどうかは関係なく、私はチャーリーさんとはこういう関係にはなれない。私、やっぱりリーダーには向いてない。




