冒険編 第7話 鬼人でございますか?
「クソ、でめぇ、よくも俺の女を奪ってやがったな」
「ごめん、オオ二、今、この人の方が好きなの」
「わかったか? オオ二、こいつはもう僕の彼女だ」
「でめぇ、決闘だ、俺が勝ったらあいつを返せ」
「いいよ、僕が勝ったら僕たちのことを認めよう」
「行くぞ! うおおおー! 」
「はあぁぁっ…!」
あめぇんだよ、てめぇの槍さばきなんざ、俺に通じるわけねぇんだよ! いつもてめぇらを守って来た俺に勝てるわけねぇだろが。
ずっと俺の後ろに隠れてたてめぇが、よくも俺の女に手を出したな! いたぶってやる!
まずはその無駄な動きだらけな無駄な攻撃を簡単に避ける。
槍と言えば軽くて、リーチが長い、スビートが早い、ガード性能も高い、素早く刺突を繰り出せる武器、だが、重いグレイソートを持ってる俺でも、でめぇの攻撃を簡単に躱せた、ねえ、今どんな気持ち?
「僕はどうしても負けない、負けられないんだ! 」
「ほざけー! 」
止めた、遊びは飽きた。
「必殺・馬に蹴られてしねぇ!! くはっ」
膝に矢が!? まさか・・・
「馬に蹴られるべきにはあなたよ」
「このクソアマが! 何故だ? あんたらが役立たずランクまで上げられるのは俺のおかげだぞ、俺のどこがあの角短い野郎に劣ると言うのだ? 」
「あなたのそういう所が嫌いなの、あなたはいつも自分ばかり、あたしが一度だってあなたの瞳に映っていないじゃない? あなたが好きなのは、あたしじゃない、あなた自身よ」
「何故だ、わかんないよ、何を言ってる? いつもあなたを大切してるじゃないか? 」
「行こう、こいつに何言っても無駄だ」
「待って、行くな」
足が……。
「くそがぁぁぁー! 」
あの日以来、俺はずっと考えてた、何が間違ったのか。俺は優しかったのに、彼女を守ってきたのに! それにこの長い角、完璧じゃないか? 一体何がいけなかった?
そうだ、俺は悪くねぇっ! 悪いのはあの二人だよ! 幼馴染だから俺のいいところが見えない、当たり前だと思ってやがる。
そうさ、俺のいいところに気付いてくれる人がきっとある、あの二人もすぐ助け求めてくる、俺は無視するけどなぁ、それまではちょっとここでソロしてみようか。
「一人でクエストを挑むのですか? 」
「そうだ」
「一人には少々きついクエストです、同じチームの二人さんは? 」
「死んだ! 」
「そうですか、ギルドに報告せれば……」
「余計なことすんじゃねぇ! 」
「けれど、これはギルドの掟です」
「死んでねぇから、寄生虫だから追い払った、とにかく俺はこのクエストを受ける」
「かしこまりました、仲間と仲直りできるように」
「余計なお世話だ」
ったく、うるせぇ。
ゲロスライム楽勝、後はギルドを連絡して、迎いされる。
「おい、倒したぜ、回収に来やがれ」
「お疲れ様でした、けれど、無理は禁物ですよ」
「うっせえ」
俺は強いんだ、余計な心配はいらねぇんだよ。何故だ? 何故俺の実力を認めないんだ!?
役立たずランクのクエストは俺にとって簡単すぎる、昔は二人が足を引っ張るから、仕方ないと思うが、今はじわじわとクエストを進みたくない。
指名手配、一千万G!? どれどれ、アサ・オカン、オカン家のお嬢様、生きて捉え、オカン家に連れ戻せば一千万Gが貰える、風と土の最上級魔法に気を付けなさい、なるべく傷つけないように。
一千万Gか、でも、探すのがめんどくさそうだ。
平均以下ランクを受注しよう、受付禳も俺の実力を分けているから問題ないはずだ。
「俺はもう役立たずランクだ、こんなクエストちょろいさ」
「でも、これは平均以下ランクのクエストです」
「俺はもうすぐ平均以下だ」
「では平均以下になってからこのクエストを受注してください」
「チッ」
クソが、このアマ、いつもなめやがって!
俺が話してるんだ、何処を見てやがる。
うお、すげぇ美少女、可愛い、顔ちっちゃい、足も細い!
隣の子も可愛い、可愛い、少なくとも俺の元カノより断然可愛い、でも、彼女を作るなら断然もっと可愛い方ね。
「すごーい、この冒険者は鬼人です、こんなたくましい鬼人冒険者を見るのは初めてです」
「おお、お嬢ちゃん、分かってるじゃないか」
「こんな立派な角はなかなか見られませんわ」
この子だ! 彼女を作るなら断然この子だ! この子いい子だ、先はごめんね、なんだ、よく見れば、この子も凄く可愛いじゃないか。
「おお!俺の角の良さに気付いたとは、気に入った、お嬢ちゃん」
「楽しい人ですね、あなたのパーティーに入ったら、楽しそう~」
入るのか、よし!
「入らないか? いや、入って、歓迎するよ 」
「でも、あたし達は弱いですよ」
「大丈夫さ、俺がいるから」
「甘えちゃっていいんですか? 」
うわ、抱きしめたい!
「もちろん!問題ないさ、俺はオオ二、宜しくな」
「ニーナ・アイです、よろしくお願いします」
ニーナちゃんか、いい名前だ、家名持ちのお嬢さまか、お淑やかな所がたまんねぇ、なりよりも、俺のこと良く分かっている、決めた、この子を彼女にする!
クエストだ、クエストをやるぞ! 俺のかっこいいところ見せてやる!
オーガ十匹、ちょろい、ニーナちゃん、俺がオーガを両断する姿、ちゃんとその目に焼き付け!
退屈なクエストが、こんなにも楽しい!
「その時、俺はオーガを簡単に両断した、オーガなんて、十匹でも、百匹でも簡単なもんさ」
「へぇ~すごーいです」
ちゃんと聞いてる、あぁ、なんていい子だ!
「それ程でも~あ、そうだ、ニーナちゃんのランクは? 」
「あの、ちょっと頼ってもいいですか? 」
「おうよ! 何でも言って! 」
「あたし達はまだ屑です、一刻も早く役立たずに上がりたいのです、手伝って貰ったら嬉しいのですが」
「任せっとけ! 」
「頼もしい、流石役立たずのオオニさん」
ニーナちゃんのことばっかり考えて眠れなかった、でも幸せ、元カノにも、こんな気持ちにならなかった、ある意味、これが俺の本当の初恋だ。
「おはよう、オオ二さん」
「おはよう、ニーナちゃん、無口ちゃんも」
凄く可愛いけど、全然喋らないから、無口ちゃん。
「あの方は平均以下だわ、オオ二さんより高いです」
「俺だってすぐ平均以下に成れるさ」
「それに、あの斧はミスリル製だわ」
「あんな武器を頼っても、弱ぇ奴は弱ぇんだ」
なんだ、こいつ、消えろ、ニーナちゃん、俺だけ見て!
「なん・・・だと」
「でめぇは武器に頼って平均以下まで上がったと言っているんだよ」
「儂は武器に頼っているか、いまいか、その身を持って確かめて見ようか? 」
「望むことだ」
「バリー、落ち着いて」
「ギルドに迷惑をかけるより、貢献すれば? 」
うわ、無口ちゃん突然喋るからびっくりした。
「そうよ、リリーナの言う通りです、クエストで決着を決めましょうよ」
「いいぜ、でも、こんなでかい口を叩いたからには、当然平均以下のクエストに行くよね? 」
「ちょ、バリー、この人達とゴブリンキングを討伐する気? 駄目よ」
「おい、お前、逃げるなど言わないよね! 」
「勿論さ」
「バリー! 」
「ミスリル製の斧より儂の方がずっと強いことを、この若造に示さないとな」
丁度いい、俺もニーナちゃんに、俺の本当の実力を見せないとな。 俺、この闘いが終わったらニーナちゃんに告白する!
「って、お嬢ちゃん達、職業は? 杖を持ってるお嬢ちゃんは魔法使いだろう、そっちは? 武器持ってないみたいだが」
これ、俺も知りたい。
「魔物研究員です」
「魔物研究員? なにそれ」
「魔物研究員か、じゃゴブリンキングについて教えてもらうか」
「いいけど、まず魔物と魔人の違いについて話しましょう」
「そんなの常識だろう、魔人は知能がある、魔物はないだろう」
「そう、では、どうして、ゴブリンは知能あるのに、魔人に分類されないですか? 」
「それは・・・」
「おい!若造、黙って聞けえ」
「うっせえ、じじい! 」
無口ちゃんがベラベラ喋るから驚いた、声も可愛い、いや、俺はニーナちゃんに一筋だ!
戦術まで立てた、なんが、負ける気が全然しない。
ほう、こいつがゴブリンキングか、やりがいありそうだ。
そう思った俺はバカだった、何こいつ、一撃が重い、それに、はえぇ、避けきれない。
偶に火が見える、頑張ってるな、ニーナちゃん、あの寄生虫とは大違いだ。
ガン!
「邪魔だ、おっさん、引っ込こんでろ」
「若造こそすっこんでろ、戦力にならん」
「何だと、ラークが少し上からでいい気になるなよ、俺より弱い癖・・・うわー! 」
右手がやられた、あいつの娘は?
「おい、ゴブリンの相手にするより俺を回復しろう! 」
「はっ、足手まといめ」
「もう一ペン言ってみろッ! 」
「何回も言って・・・くわー! 」
今度はおっさんの番だ、ざま見やがれ!
「セシリア、儂を回復しろう」
「お父さんごめん、手が離さない」
流石にこれはやばい、このままじゃ・・・
「必殺・爆炎覇斬!!! 」
馬鹿な、止だ、だと!?
左手だけとは言え、まさか無傷で受け止めたとは。
どうする。
「邪魔だ! どけ! ミリオンクラッシュ!!!」
やべぇ、おっさんのも効かない。
強いとは知ってるけど、まさかこれほどとは。
ガシャーン!
な・・・なんだ?
何だこのガス、くせぇ、でもゴブリン達が逃げた、いや、でがいあいつは逃げなかった。
「セシリア、今だ、回復しろう! 」
「はい!」
これで戦況がかなり良くなった!
「喰らえ、両手の爆炎覇斬だぁ!!! 」
「ミリオンクラッシュ!!! 」
「うわぁー! 」
「くおぉー!」
馬鹿な、カウンターだと!? 一度見るだけで、俺達の技を見破っただと!?
「回復だ! 」
「はい、今すぐ! 」
俺を先に回復しろう! やはりおっさん優先か、ニーナちゃんなら俺を優先するかな?あぁ、ニーナちゃんの顔が見たい。
あれ? ニーナちゃん、水魔法、無駄よ、あいつに中級魔法は効かないよ。
「おい、若造、よそ見するな! 」
え? 何?
いてぇーーー!!! 息が! 出来ねぇ! 死ぬ! 何で俺は生きてやがるんだ! いてぇーーー!! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇ! いてぇーーー!!!
痛くねぇ! ポーションか、助かった! 痛すぎで死ぬかと思った。
誰だ! 俺の玉を水魔法で攻撃した奴は ??! ぶっ殺すでやる! 殺す! 殺す! 絶対に殺す!
あれ!? 魔法を使ったのは、確か、ニーナちゃん、そんな、ニーナちゃん、何で?
きっとこのゴブリンキングのせいだ! ぶっ殺す!
「喰らいやがねぇ! 必殺! 瞬迅破ざぁぁぁ・・・!」
痛い、何故こんな所に、バナナの皮があるんだよぉ !!? 折角技を決めるチャンスだったのにーー!
血? 俺の? いや、ゴブリンキングの足指が・・・
とりあえず早く起きらないと。
ゴブリンキングの攻撃が来る!
来ない、転んだ……。
何? 油断されるつもり、流石頭がいいな、ゴブリンキングは、だが、その手は食わんぞ!
また転んだ、何? 舐めてる?
「若造、行くぞ! 」
「はぁ? おい! 」
まぁ、いいか、どんな策でも、俺の技でぶち壊す!
「はぁーー! 今度こそ! 瞬迅破斬ーー! 」
「ギガントクラッシューー!! 」
倒した、遂に倒したぞ!
ニーナちゃん、倒したぞぉ! すぐにニーナちゃんに会いたい、褒められたい、告白したい!
「リリーナ、どうしたの? 起きて! ねぇ! そんな!? まさか、先の傷がまだ? 」
「落ち着いて」
「セシリアさん! リリーナが、リリーナが!!! 」
「大丈夫、ちょっと気絶しただけ、疲れたでしょう」
「そうですか、良かった」
告白できる雰囲気じゃねぇよ。
人によって、見えるものが異なるのです。例えば、普通の人なら、ある建物を見て、ただでかいと思ういます、消防士が同じ建物見たら、火災の時の逃げ道を探す、警備員なら賊が侵入して来るルートを探す、放火犯なら燃えやすいところを探す。
さて、読者の皆様の目に、この建物をどう映るのですか? これはきっと、あなたが将来したいことでしょう。