平和推進編 第5話 後 大根でございますか?
「リリーナ、ちょっといい?」
アサか。来ると思ってたよ。
「ねえ、リリーナ。私の記憶が正しければ、ブレイク公爵の今の人格はリリーナの死霊術で作られたものよね? 命を握られてるとか、そういうレベルの話じゃなく、そもそもリリーナに歯向かうこと自体が不可能なはず。私が彼を殺して、リリーナがその場で蘇らせた時のこと、私も覚えてるんだから」
「その通りだけど」
「どうして事前に教えてくれなかったの? アホみたいに怒った私がバカみたいじゃない?」
「うん。アサがアホみたいに怒ってほしかったから」
「リリーナの意地悪……」
「別に意地悪したくて黙ってたわけじゃないよ。それね。じゃあアサ、ちょっとブレイク公爵に怒る演技してみて」
「えーと。よくもリリーナにそんなことを、ぶっ殺してやる!」
「やる気だけはある素人、って感じの演技ね」
「ひーどい……!」
「じゃあ、アサは自分の演技はみんなを騙せると?」
「……思わない」
「でしょ。でも、後半は察してくれて嬉しかった」
「もー、リリーナは調子いいんだから」
「ちょっと顔すりすりしないで、犬みたい」
すると、アサは私の頬を撫で、じっと顔を見つめてきた。
「どうしたの? 切なそうな顔して」
「ごめん。キスしたくなっちゃった」
「え?」
……はぁ。交際を受け入れたのは、私だ。仕方ない。
「別にいいわよ……うっ」
こいつ、せっかちすぎ。
10秒? 20秒? 息できない。
「ちょっと! 長いー!」
「あっ、ごめん……」
「……まあ、別にいいけど」
なーに物足りなそうな顔してるのよ!
「ねぇ、リリーナ。リリーナの計画通りに、みんながブレイク公爵に対抗心を燃やし、一丸になった。次はどうするつもり?」
「そうね。王様が『人の欲望を見抜く目を養え』だって。だから、まずは、みんなと一人ずつ話をして、それぞれがどんな思いでここにいるのか、聞いてみたいと思ってるの」
「二人きりはダメよ」
「じゃあアサも一緒に行く?」
「行く!」
アサと桜子は別にいいかな。この2人だけは無条件で私の味方にいてくれる……そう信じたい。
「ねぇ、アサ。また司祭さんの魔法にかけられても私の敵にならないでね」
「死んでも絶対に! 二度とリリーナを裏切るような状況にしない! 約束するよ」
「うん。信じるよ」
アサの原動力は私。桜子は、まず魔界の幹部としての責任があって、その次が私、でいいのかな。チャーリーは……まだ私のことが好きなんだろうか。私がアサと付き合っていること、知っているはずなのに。わざわざ口には出してはいないけど、流石に気づいて……ないわけない、よね?




