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平和推進編 第5話 前 ボランティアでございますか?

 しばらくの沈黙。まあ、そうよね。みんなは私のことを、無条件で信頼してるわけじゃないし。

 そもそもさ、ケルベロスは言うなればボランティア団体のようなもの。国や商業組織のような明確な上下関係は存在しない。だから、今更それを導入しようとしても無駄かもしれない。


 「ミシェルをお前なんかと一緒にするな! 私とミシェルは互いを高め合える対等な協力者だ。独裁者のお前とは違う!」

 「すず……っ、リリーナは、みんなを成長させるために、みんなが自ら考えるように促したんだ! リリーナを舐めるな!」

 「そうだ! 僕たちが提出した案は、そのまま採用されたわけじゃない。だけど、リリーナが修正し、改善して、より良い案にしてくれた。それが嬉しかったし、自身の成長も実感できたんだ」

 「それに、ブレイク公爵! さっきは私の質問に答えなかったな! そもそもお前は、ゾンビとしてここに逃げてきた身だろう! もはや公爵でもなければ、権力もないはずだ! 何を偉そうにしている!」

 「金だ。私は豊富な資金を持ってきた。金さえあれば傭兵も資源も、意のままだ」

 「金ならリリーナも持ってる! お前なんてケルベロスには必要ないんだよ。かーえーれ! かーえーれ!」

 「「「かーえーれ」」」

 それからみんながブレイク公爵の声を遮って、会議にならなかった。


 そのあと、みんなが私を称える会を始めた。

 「リリーナだけがリーダーにふさわしい」

 「みんな、ありがとう。嬉しいよ」


 みんながはしゃぐ中、アサだけは何も言わずに静かだった。これが茶番であることに、彼女だけが気づいたから。そのことを、私は嬉しく思った。


 「リリーナ、本当にブレイク公爵を仲間に入れないとダメ?」

 「うん、残念ながらね。ドロシーたちの活動のおかげで、ケルベロスを頼ってくれる人が増えた。故郷を捨てて、私たちの庇護を求めてきた『領民』よ。彼らの生活を守り、内部での揉め事を調停するには、もうボランティアごっこでは済まされない。私達初期メンバーが、統治者としての責任を負う必要があるの。

そのための秩序と規律を一から作り上げなければならない。それに、今後、戦争への介入が避けられない場合、庇護する彼らの中から現れるであろう志願兵たちを、死なせないための訓練も必須になる。

……それら全てを担うには、経験豊富なブレイク公爵や元帥の力が必要不可欠なのよ」

 

 飴と鞭作戦は失敗に終わった……とまでは言わないか。ブレイク公爵は鞭として充分すぎるほど働いてくれたし、これからも共通の敵としてケルベロスの初期メンバーの団結に貢献する。飴としての私はみんなとの関係を深めた。そもそも私は自分の意見ばかり通ることに疑問を感じた。これから私がいなくてもケルベロスが回るようにするためにも、初期メンバーの成長を促す必要があった。この茶番劇も充分に結果を出したじゃない?

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