平和推進編 第3話 前 形式でございますか?
前回の会議で勇者の案を取り入れたことで、今後の方針固まった。ケルベロスの戦闘力を強化ししつつ、残りの勇者二人と魔王のことを探り、、戦争を止める方法を模索する。そのためにも……。
「「「「「異なる種族が平和に暮らせるために!」」」」」
「「異なる種族が平和に暮らせるために!」」
これ嫌い……。
勇者と魔王を探ることは、勇者と魔王がいるところに潜入し、目標とその周辺を観察することを意味する。当然、見つかれば殺される危険な任務だ。だから、私の提案で壮行式を行うことにした。ケルベロスのリーダーである私、魔人代表のセレン、獣人代表のロッティ、勇者二人といった幹部で、これから死地へ向かう二人のためにね。
「異なる種族が平和に暮らせるために!」か……適当に考えたそれっぽいスローガン。これも嫌い! 卑怯だし。だってそうでしょ! 暮らせるために……その続きは? 暮らせるために犠牲になってくれ。暮らせるために死んでください、でしょ。それを口にしないのはあまりにも卑怯よ。
二人とも覚悟が決めた顔してる。獣人解放の立役者であるロッティを信じるからと、私を信じてくれる獣人と、セレン派の魔人。見たことのない顔。私の一存で彼らを死地に赴かせるのだから、せめてのことは全部してあげたい。この二人が望むなら、頬っぺにキスだってしてあげちゃうよ。
それにしても、こんな形式的なことで伝わるものなんてせいぜい私の浅はかさくらいよ。
「リリーナ様のためにも、必ずやり遂げる所存です」
あっ、はぁ……。
「信じているわ」
ゴーストに顔が割れているからそっちは無理として、せめて勇者側への潜入は私が行くべきだったのかな?
ふと、セレンが言っていた言葉を思い出す。……わかってる。「命の重さは違う」。そういうことでしょ。
「アイちゃん、俺のこと覚えてる?」
「え?」
「その顔、忘れてるみたいだな。悲しいよ。ライオンズハードで何度も挨拶してくれたのに」
人の顔を覚えるのもそんなに得意じゃないのに、獣人の顔なんて覚えられないよ。
やめてよ、そういうの。そんなこと言われたら、あんたが死んだら悲しむじゃない。それに、それ死亡フラグだからね。
運チェックは……大丈夫みたいだけど、余ってる運をこの2人に捧げよう。
「どうかご無事で」
「ああ」
「はい」
もっといいリーダーになりたいな。
そういえば、もうすぐあの人たちが着く頃だ。




