平和推進編 第2話 前 家族でございますか?
地獄から逃げ出したら、待っていたのは別の地獄。やがて辿り着くは、最初の地獄そのものだった。
子どもの頃だったから、あまり覚えていないが、父と母がいつも喧嘩してて、辛かった記憶しかない。この国では六歳になった、魔法学院に入学する義務がある。魔力が低かったこともあったが、一番の原因は父の職業だとは思う。貴族に目付けられていじめに受けた。あと一年で卒業できたはずが、耐え切れず、貴族に反撃したら退学処分を受けた。
それで家に帰ったが、もう僕の居場所はなかった。僕の部屋は今や物置とかし、当然僕のものは全部捨てられた。まるで最初から僕がいなかったようだ。
父に卒業できなかったことを話したらグーで殴られた……。頬を抑えながら「お前が魔石密猟者だからだ!」って言ったら、「てめえらを養うためにいやいややってるんだろうが!」って返された。その瞬間、いつも母を殴り「俺は悪くない! お前がそうさせた」と言い訳する昔の父の姿が蘇った。
その夜、親がまた喧嘩を始めた。物置と化した部屋で、床に敷いた革の上に寝ていた僕は、驚いて目を覚ました。どうやら母が「あんたまさか魔石密猟者にさせるつもりじゃないでしょうね」って言ったのがよくなかったみたい。父が僕たちを養うのにどれほど苦労したかと言って。母は「私も働いてるのに、どうしてあなただけが家を支えているみたいに言うの? しかも高い酒ばかり買いまくったせいで、お金が足りなくなってるんじゃないの」と訴えたら、「「お前の料理がまずくて、酒を飲まなきゃ飯が食えるかよ」って言いながら母を殴った。
翌日、父が地下の、恐らく解体場に行ったあと、僕は母に「どうしてあんな人と結婚したの?」と聞いた。母は「デキ婚だった」と答えた。あの男はいつも自分を善人だと思い込み、行動を正当化するから、最初はいい人だと思っていた。
僕は思った。あの男がいる限り、僕たちは決して幸せにはなれない。でも当時12歳にも満たない僕には、父を殺す勇気はなかった。仕事を見つけたらこの家を出て行き、その前に父の仕事場を滅茶苦茶にする計画だけを立てた。だから僕は父を観察して、地下室の鍵の隠し場所を突き止めて、鍵を複製した。そしてある夜、下見のために初めて地下室に足を踏み入れた。
血生臭かったこの地下室から一刻も早く出ようとしていたが……。
「パパ?」と声がした。
声の方を見ると、絵に描いたような悪魔角を二本生えた少女が立っていた。




