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序章 第3話  神でございますか?

  我は、運を司る神だ。

我の役目は運の管理だ、具体的には、ステータスの運が足りない生物に、必要な時に運を与えることだ。

でも、運は作れるものでも、生まれてくるものでもない。我が出来ることは運を移動するだけだ。

それはつまり、生物に運を与えることは、まずは誰から運を奪うことだ。石から奪えば、砕きやすくなる。植物は枯れる。動物なら色んな出来事で傷付けられたり、何をしようとする時は必ず失敗したりする。だから、運を与える前に、対象を見極めることも、我の仕事だ。

 

 我が運を与える時は、対象が死にかけている時か、一生を左右する機会が訪れた時のみだ。ただし、死にかけている対象を助けるには、一つ掟がある。もしある出来事に、必ず誰が死ぬのなら、その出来事の被害者を助けることは禁止されている。例えば、あるエレベーターはもう古くて、人が載ったら必ず事故が起こる、でも、もし事故が起こったら、そのエレベーターは危険と認識され、もう事故が起こることはない。つまりあのエレベーターは必ず、一度だけ事故が起こる。その場合、その事故の被害者を助けることは禁止されている。


 動物の場合は大抵運を与えるが、人間は別だ。


 運が足りない人間は、ステータスの生まれの点も少ない。育ちが悪いと言うことは、当然、いい人になるはずもない。でも、偉大な我は勿論、一人一人に時間をかけて観察しだ。

退屈だった、屑ばかりだった、助ける価値もない、そう思った、彼女と出会う前は。


 彼女の魅力と知恵は上限に近い、健康も低い方じゃない、でも運は壊滅的だ、生まれ100、縁100、幸運はゼロ。おそらくアイスの当たりすらも絶対に当たらない幸運の低さ。


 母子家庭の上に貧乏、そして、美人、いじめるにはいい対象だ! でも、彼女は身を守る方法を知っている。縁の値は100だけなのに、いい友達とも出会った。不幸な環境で育つはずなのに、何故そんな笑顔でいられるんだ?


 そんな人間はいない。二つアルバイトをやっているにも関わらず、ホームレスの為に弁当を作る、励む。彼女は異常だ、異常過ぎる。


 彼女を見ることが、我の日常になった。気づいたら、彼女を見る為に、我はもう神としての役目を放棄していた。それだけではない、我は彼女に捧げる為に周りから沢山運を奪った。


 人間嫌いで有名な我が、女一人の為に暴走している事は、神の誰一人も信じていなかった。周りの神は、我が退屈過ぎて、少し仕事から逃げたがっているだけだと思い込んだ、誰一人我の暴走を止める神はいなかった。


 そして、あの日が来てしまった、彼女は初めてクラスメイトに誘われた日。我は知っていた、彼女はこの日で死ぬ運命だと言うことを。何もしないつもりだったが、やってしまった。彼女にありったけの運を与えた。が、それでも足りなかった、もう人間から奪うしかない!

彼女はクラスメイトの誘いを断った。代わりに彼女の友達が誘われる、つまりその友達が彼女の身代わりになった。


 我はあの桜子とか言う奴が嫌いだ。いつも彼女の傍でうろうろとしてる。彼女の為ならあの桜子も喜んで命を差し出すだろう。

 

そして、我は掟を破り、必ず誰が死ぬ事故で彼女の命を助けた、代わりにあの桜子が死んだ。

さすがにやりすぎたか、まさか神王様が直々に動くとは・・・


 神王様は我の過ちを隠す為に、我の前で彼女をあるべき形で、つまり交通事故で殺した。我は神王様の前に彼女の為に何もできなかった。怒りを覚えたけど、それ以上にやばいって感じがした。やっぱり神王様は恐ろしい。


 仕方がない、神王様に逆らうのは愚行だ。ごめんね、守ってあげられなくて。


 これが悲しいと言う気持ちなのか?こんな気持ちは初めてだ。我も人間と同じ、涙があるんだな。


 やばい、誰かが来る、神たる我が泣いているところを見られると困る。


 「神王様のお呼びです、すぐに審判の広場に来るように」


 え!?そうだった、彼女はこれで審判を受けて、他の世界に転生させられるんだ。でも何故わざわざ我を呼ぶ?神王様なら、我に彼女と接触する機会を与えるはずがない、一体何か企んでいる?


 我は彼女のことを、ずっと見ているけど、彼女は我と会うのはこれが初めてだ。彼女の目に、我はどう映っているのだろう?白い服も綺麗だよ。彼女はきっと、我の気持ちに気付かないだろう。でも、今決めた、我は、彼女を守る、例え神王様が相手だとしてもだ。


 「裁判までもない、貴様はマイナス無限点だ。」


やはりそう来たか、神王様は我の前で彼女の魂を滅ぼすことで、我に人間に恋をした結果を我の目に焼き付けるつもりだ。


 「貴様の罪は神を堕落させたことだ」


 我は堕落してない、我は知ったのだ、愛しいと言う気持ち、彼女を失う悲しさ。


 「よって、貴様の魂を滅ぼす!」

「させるかぁー!」


神王様から彼女を守るすべは一つだけある、破壊条件付きの結界を彼女の魂に張ることだ。


 「いい加減にしないか!この小童!!我に盾突くつもりか?こんな小細工、我の前に何が出来る?ほお、破壊条件をつけることでより固くしたのか、中々やるではないか? が、破壊条件はみえみえだ、お前がその人間に愛なき殺意を抱くことだな」


 流石神王様、で、それがどうした? 破壊条件がわかったところで何が出来る?彼女に愛なき殺意を抱くことなんて絶対にあり得ない。


  「愚かな、お前が余計なことをしたから、あの人間は余計な苦痛を味わうことになるぞ」

「無駄だ、例え神王様でも、もう彼女を傷付くことは出来ない」

「ええ、傷付けることはないよ、あの人間の魂にな、でも、お前は彼女の魂だけに結界を張った、肉体さえ与えば、あの人間を苦しめることなど、造作もない。あの人間はこれから、我が作った世界に転生するんだ、我が書いた脚本通りの人生を送る。我が直々に作った肉体であれば、記憶くらい封じ込めて見せようぞ」


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