戦争介入編II 第12話 前 養分でございますか?
「ユアンさん、どうか気を落とさないで。今回は残念ながらユアンさんたちの案を採用できなかったけど、いろんな新しい視点を得られたから、ユアンさんには感謝してるよ」
「新しい視点?」
「うん。例えば、残りの二人の勇者と、魔王の身体を乗っ取った魔人との交流を図るとかね」
「危険ではなかったのか?」
「ユアンさんとチャーリーさんに行かせるのは危険なんだけど、例えば、情報屋とか、隠密が得意な獣人の方に手紙を渡せたら」
「勇者の証明ができないんじゃ……」
「そう。だから協力を求めるのではなく、こっちの知ってる情報を伝える。その反応を見て仲間にできるのかを判断するとか。まあ、案を出してるわけじゃないのよ。新しい視点を得て、何かできないかなって考えてるだけ。つまり、私が言いたいことは、たとえ自分の考えが採用されなくとも、他人の案の養分になれるかもしれないから、遠慮せず自分の意見を述べてほしいということよ」
長い会議が終わった。疲れた。正直言って、ケルベロスに帰ったことはちょっぴり後悔してる。まだアサと逃げたほうがよかったのかな? アサは喜ぶでしょうね。
そもそも戦争を止める方法なんて、こんな私の信者しかいない団体が思いつくわけないでしょ。人間も魔人も勝手に戦って勝手に滅べばいいのに……。
まあ、冗談はさておき……もやもやする。本当にこれでいいのか。この私の意見ばかりが通ってしまう、私全肯定のこの雰囲気をなんとかしないと。誰かに相談すべきだ。セレンさんはどう? ダメだ。今回のことでかなり点を稼いだから。
「すず、遊びに来たよ」
桜子に相談してみては? ううん。ダメだ。私の息のかかってる人に相談しても無駄よ。何を言っても『リリーナなら大丈夫』とか返されそう。
「入って」
「いや~ようやく仕事が一段落して、すずとボードゲームができるんだ」
そんな気分じゃあ……。
「……うん。遊ぼう」
「……すず、どうしたの?」
「ううん?」
「前世からの親友だよ? すずの表情ぐらい読めるさ」
「そうか。ねぇ、桜子。このままでいいのかな?」
「なにが?」
「みんなが私の言葉を鵜吞みにしすぎない? そのうち私が『カラスは白い』と言っても、みんな信じそうだけど」




