戦争介入編II 第10話 前 発表会でございますか?
「リリーナの話はよく分かったけどさ。思うんだ。リリーナなら和平的に解決できる方法を思いつけるじゃない。みんなもそう思ってるだろう。どうしたの、リリーナ? 思考停止してるなんて君らしくもない」
こいつ……というか思考停止してるのはお前たちでしょうに……。誰も何も言わないけど、みんなからの期待の眼差しがとっても雄弁。
私はただ過大評価されてるだけ。政治にも軍略にも明るくない私がここまで頑張ったんだ。むしろ褒めてほしいくらいよ。それでも、こいつらよりはましだと思うけど。
魔王側はゴーストとあの司祭がいるからまったくの脳筋集団ではないし。人間側は言うまでもなく狡猾なやつばかり。比べて、こいつらときたら。
トーマスの件に関しては私も一応『あの映像はフェイクで、トーマスの財産を取り上げるための口実にすぎない』と噂を流したんだけど……。
「あなた方いい加減にしなさい! リリーナがどうしてケルベロスを離れたのか分かりませんの! いつまでリリーナを頼りにしてるつもり! リリーナ、もう帰りましょう」
アサ……! 怒ってくれたんだね。まあー、ちょっと? 嬉しいかも?
「アサ、ありがとう。私は大丈夫だよ。まあ、ユアンさんが言ってた通り、思考停止するのはよくないって点には同感。ただ、思考停止してるのはなにも私一人だけじゃないと思うけどね。ねぇ? みんな」
「それは……」
とは言ったものの、経験上、こういう理想ばかり求めるやつが考えそうな案にろくなものがないけどね。明らかに現実にそぐわない案なのに何故か『いける』といけしゃあしゃあと言い張って、失敗するのが目に見える。
「いや、ごめん。実は俺、もう戦わないとどうにもならないことぐらい気づいてるんだ。だが、戦い以外で戦争をとめる方法を模索してるのはもう俺しかいないから……」
ああ。なるほど、この勇者は一応勇者なりに考えてるのね。
「あのさ、だったらお前がなにか案を出せよ! 案一つも出さないのに、文句ばかり言ってさ」
まあ、ドロシーの気持ちもわかるけど……。
「いや。反対意見があるならちゃんと言ってほしい。議論はよく偏った方向に進むし、代案がないからと言って間違った方向に進むのを黙って見るのもよくないと思う。議論をしない会議は会議ではなく、ただの発表会だから」
「ミシェルっ! でも!」
「ドロシー、怒ってくれてありがとう。嬉しかったよ。そうね、こうしよう。ユアンさんに一週間与える。その一週間でユアンさんなりのやり方で戦争をとめる方法を考えよう。もちろん一人で考えろなんて言わないよ。チャーリーさん、ドロシーさん。あとは人間側だけが有利にならないように、ソニア、お願いできる」
「もちろんです」
「で、他のみんなは戦争の準備を進めて」
「わかった」




