戦争介入編II 第9話 後 欲望でございますか?
このデジャヴ。そう、アイだった時もこうだった。誰もやりたがらないことを押し付けられて、責任を押し付けられるパターンだ。
っていうか、さきセレンさんが言ってなかった? 『責任を取れ』って。前世で学んだはずだ。絶対にこいつらを見限ったほうがいい。
でも、アサは私の絶対的な味方で、櫻子も私の味方にいてくれる……よね?
違う、ニーナだった頃は絶対裏切らないと思った人でさえ裏切ることを学んだはずだ。
でもそうね、とりあえず分析してみよう。
セレンさんは言うまでもなく魔界優先で、ダイサはそんなセレンさんを優先する。
勇者の二人だと、ユアンは人間界優先、チャーリーはまだ私のことが好きでいてくれたのかな? うわ、私、最低だ……。
で、ソニアは魔界貴族で、優しい私に憧れてるだけ。私が魔界貴族でなくなったらどうなるか……。
ドロシーはなんの力もない一般人。
ロッティはそもそも私のためだけにここにいてくれた。
あとはドラゴンさんかな?
「と言っても、他に戦争を止める方法なんて……。RPGみたいにラスボスを倒したら大団円だったらいいのにね」
「アルピ?」
「えーっと。英雄譚みたいなものね。勇者が魔王……いや、悪を討ち、世界を救う話」
今のは失言だった。
「魔族は悪……か」
「気にする必要ないよ。魔族にとっての人間もまた悪だし。なにより、仮想敵がいた方が団結力が増すから」
「なぁ。本当に魔王を倒してもこの戦争は終わらないのか。戦争の名目は魔王討伐なのだろう?」
「それはない。前も言ったように人間は魔王の魔石を手に入れて、その力で大陸統一するのが目的よ。魔王を倒しても、その力で魔族を滅ぼし、大陸を統一したあと、圧政を強いるのが目に見える」
「圧政って」
「力で他国を制圧するような国だよ」
「……」
「逆に人間の王の暗殺は?」
「人間の王は魔王と違って替えがある」
「じゃあさ、俺たちが魔王を討伐すれば?」
「魔族の仇になるし、魔王の魔石を手に入れたことで人間界にも狙われるよ。そんな覚悟ある?」
「それは……くっそ! 人間も、魔族も! どうして戦争なんか」
「戦争は悪だけど、戦争だけが悪ではない。資源の独占、法律の抜く穴をついた搾取。魔人狩りがいい例だ。獣人の扱いだって表面上は違法だけど、みんな見て見ぬふりをする。でしょ、チャーリーさん」
「うん。僕が見てきた。リリアちゃんに言われるまでは、自分が悪だと思いもしなかった。ひょっとしたらリリアちゃんに会っていなかったら僕は勇者になれなかった。だから、聖なる槍はずっと勇者を選ばなかったと今は思ってるよ」
「そう。戦争も悪だけど、一番の悪は満たされることのない、知生の欲望よ」




