表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
290/314

戦争介入編II 第8話 前 覗きでございますか?

 魔人の特徴というのは、基本的に角、目、そして肌の質。鱗や樹皮のような表皮、尻尾なども挙げられる。

 服の下はわからないが、トーマスは見たところ、人間にしか見えなかった。

 たとえ「写真を撮って記録すれば」と言われたとしても、トーマスは飲食も睡眠も必要としないため、屋敷にいる間はずっと書斎のデスクで仕事をしている。せめて、一度でも寝てくれれば、服の下が確認できるのに。

 

 私自身は魔人の生態には詳しくないが、もし飲食が不要なら汗もかかないはずだ。そうなると、シャワーを浴びる必要すらなくなるのではないか?


 持ち込みの携帯食料は、もう底をつきかけている。一時撤退するか、それともこの屋敷内で食料を調達するか……ただし、屋敷での食料調達は、屋敷の人間に見つかるというリスクを伴う。


 僕は、我慢を続けることに決めた。上司に逆らってまで継続しているこの調査、成果を出す以外に、僕に残された道はない。


 何時間が経過したのか、正直分からない。飲食も睡眠も必要としない相手を監視しているだけで、こんなにも精神が擦り減るとは思ってもみなかった。

一体、僕は何をしているんだ。意地を張るのはよくなかったのか? こんなことで人生を賭けるべきではなかったのか? 僕はそんな人間ではなかったはずだ。

 孤児だった僕は、国により諜報員として育てられた。『国のためなら命を惜しむな』と教えられたものの、僕自身の命より、国が大切だと思ったことは一度もなかった。

 

 今回の任務はリスクが高いとされ、遺書こそ書いたものの、本気で命を賭けるつもりはなかった。なのに……! あのくそ上司のせいだ!

 もしあの上司が僕を信じてくれていたら、あいつを見返すために、仕事の辞表も人生の辞表も書く羽目にはならなかったはずだ。すべて、あいつのせいだ!


 「……と面会の予定があるので、……シャワーを浴びて着かえてください」

 

 ……今トーマスの執事は何と言った? シャワー? 聞き間違いじゃないよな!


 やーっほー! やった! これでトーマスの正体を確認できる! 男のシャワーを覗くことに興奮を覚えるなんて、夢にも思わなかった!


 などと、その気になっていた先の僕の姿はお笑いだったぜ!


 もちろん、服の下を確認しても、魔人らしい特徴は一切見られなかった……。

トーマスは本当に魔人なのか。あいつの言う通り、ただ飲食も睡眠も必要としない魔石を開発しただけなのか……。


 これからどうするべきか。あのくそ上司に頭でもさげるのか。謝れば許してもらえるのか。これからずっとパワハラに耐え続けてもいいのか……。


 あるはずだ! きっとまだ何かあるはずだ! 

 そんな魔石があれば市場に出しているはずだ。実物が存在するはずだ! 

 トーマスは魔人と繋がってる! 絶対だ! 

 僕は諦めないぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ