戦争介入編II 第2話 後 妄想でございますか?
ここから出られない。出たところで話し相手がいない。そんなドラゴンさんが普通の人生を少しでも体験してもらうために私は人生ゲームを用意した。
そもそも、ドラゴンさんはいつから桜子の屋敷の地下にいるの? そうね。ゴーストの部下のあの司祭が言っていたことが本当なら、恐らく、人間と魔人の戦争を止めるために女神様が作り出した新しい敵、魔獣。その王に当たる存在がドラゴンさん達なんだと思う。
魔人は知的生命体だから、苦しむし、悲しみを感じることがある。魔人を憐れんだ女神様は魔人の代わりに、人間の敵として知性のない魔獣を作り出した。でも、それなら何故ドラゴン達は知性を持っているのか。それに、ゴブリンも言葉を話せるし。
あっ。でもそうか。人間が定義する「魔獣」の分類は正しかったわけね。ゴブリンは言葉を話せるだけで、交流は殆どできない。あいつらは基本理性がなく、本能のまま行動してるのよ。
でも私と桜子はドラゴンさんと交流できた。ただ、話す相手のわかる言葉で話せる能力を持つ私か、竜騎士で竜と心通わせる魔法を使える桜子以外、ドラゴン語を話せる存在はいない。アサだって頑張ってドラゴン語を覚えようとしたけど、無理だった。魔人語を短期間でマスターしたあのアサよ。
ドラゴンさんはまあ、メンヘラだけど理性はある。考えるに、理性がなく、人間に突撃するしか能のない魔物では人間の相手に務まらないと女神様は考えてたかも。絶対悪は強くないと意味がない。だから女神様はドラゴンたちに知性を与えた。でも、ドラゴンと勇者が話し合う可能性をなくすために、ドラゴン語しか話せないようにしたんじゃないかな。
……推測の域を出てない。けど、ドラゴン二匹の魔法特性、「死」と「不死」は聖なる武器でしか対策できないことを考えると、こういう可能性も十分あり得る。
もしかしたら、女神が作ったドラゴンは二匹だけでなく、他のドラゴンはみんな歴代勇者に倒されたとしたら……。ドラゴンさんを守るために桜子の祖先は……。いや、それこそ推測にもなれないただの妄想でしかない。
いずれにしても、目の前にいるこのドラゴンさんがずっと寂しかったことに変わりはない。この不死なドラゴンは実際自殺を試みて、死ねなかったから、自虐的に不死ジョークをかました可能性を考えると……。
もう少し優しく接してあげよう。
まあ、そのために精一杯頑張って作ったのが、この人生ゲームだ。さあ、ゲームを楽しもう。




