戦争介入編 第13話 後 忠実なる僕でございますか?
「ご報告いたします。暴動を起こした群衆を拷問にかけ、リーダーと思われる一名の確保に成功しました。更にリーダーを拷問することで、彼は金を受け取り、群衆を煽動して暴動を引き起こしたことが判明しました」
「そのリーダーを買収した人物についての詳細は?」
「覆面した人物から金と指令を受けていただけで、その人物についての詳細は不明です」
「他国のスパイという可能性もあるが、周辺各国でも暴動が起きている。魔人の仕業だと考えることもできるが、魔人はこんな回りくどいことをするとは到底思えない」
「この前の戦争で、兵糧庫が魔人に奇襲されたことはもう忘れたか」
「魔人が人間の住む街に侵入し、民衆を煽動するのは考えにくい。むしろ、聖なる武器のレプリカの製造技術を狙った他国が混乱を起こそうとしていたと考える方が妥当だ」
「要するに黒幕の尻尾を全然掴めていなかったってことか」
「申し訳ございません」
それでいい。リリーナ様の邪魔はされない。
「ブレイク公爵、トーマスの放送番組を止めなかったお前の責任でもあるんだぞ」
「だから! 前回も言ったように、あの番組は必要だ。前回の戦争で我々は魔人どもに負けた。魔人との関係を表面上でも改善しようとしなければ国民は停戦をよしとせず、戦争を続けるべきと考えるだろう」
「そもそも停戦すべきではなかったんだよ。腰抜けどもが!」
「兵糧庫が落とされ、前線もまともに維持できないまま戦争を続行すればどうなったか、考えたことあったか? 本国が戦場になりかねない。あのドラゴンブレスを本国で使わせたいのか」
「それは……だが、獣人に頼りきって、完全に怠けた民は働こうとしない。魔王が復活したことを利用し、他の国をそそのかし、国力を削らせ、漁夫の利を得て魔王を倒す。その死体で強力な魔法石を生成し、他の国の人間と魔人を奴隷にする計画を立てた以上、魔人と関係を深める必要はなくなった。故に、あの番組はもう必要ない」
正論だ。だがリリーナ様のためにも……いや、違う。これからもリリーナ様のお役に立つためにも、今の立場に影響を与える選択はとるべきではない。
「止めたければ止めればいい。番組が止められたことで更に民に不満を覚えさせないことを祈ろう」
「なぁに、戦争に勝てば全てがうまくいくさ」
突然、会議室のドアが開けられた。
「緊急のご報告です。レプリカ製造工場が何者に襲撃されました。同時に戦場に魔物が大量に現れました」
始めたのですね、リリーナ様。
「一時撤退を進言する」




