戦争介入編 第11話 後 大好きでございますか?
通信が終わったあと、嬉しすぎて泣いたアサの恥ずかしい言葉を永遠と思えるほど長く感じた時間が過ぎて、また通信石が鳴り出した。かけてきたのは桜子だった。
「もしかして、すずはこのまま魔界に戻らず、すずのお母さんととごかに行ってしまうの?」
「その予定はある。でも、それは今かどうかはまだ決めていない」
言う必要はなかったと思う。でも桜子だけには本当のことを伝えたいと思った。
「そっか」
「驚かないのね」
「まあ、そんな日が来るんじゃないかとずっと思ってたからね。私ね、すずのお母さんの話を聞いて思ったの。勝てないかなって。すずのお母さんはすずのために家を捨て、貴族の身分をも放棄し、すずと旅に出たでしょ。すずの役に立てるように、自国の貴族だけでなく、王族にさえ手にかけた。そんな覚悟、多分私にはできない。魔界をあとにして、すずと旅に出るなんて、私にはできない。いや、私が人間界に生まれたのなら、すずのお母さんと同じことできたかもしれないけど。まあ、そんなことを考えても無駄なのかもしれないけどね」
「桜子……」
「私ね。すずのことが大好きなの」
「うん。知ってる」
「すずはなんても知ってて、すずの話を聞く時間が大好きなの。なるほど、そういう考え方があるんだ。すずって本当にすごい。すずは他の誰とも違うんだなって毎回思ってしまう」
「うん」
「最初はそれだけだった。けど、いつの間にか、話したのか、私以外のやつと、って思うようになった」
「ん? あ、うん」
「この気持ちは恋なのか、今になっても正直よくわかんない。すずはすずのお母さんと一緒にいた時間の方がずっと長いし、私はすずのために魔界を捨てることもできない。でも、これだけは知ってほしい。私はいつでもすずのことを思ってる。だから二十年、五十年も、百年を経っても、私はすずのことを待ってる」
「桜子、私は……」
「いいの。何も言わなくていいよ。ちゃんとわかってるから。でもね、これからも連絡するからね。すずの声聞けなくなると禁断症状が出ちゃうからね」
「ふふ。何それぇ」
「あと、ケルベロスや戦争のことも、もちろんすずに頼りきるつもりはない。でもせめて迷った時はすずの意見を聞かせてほしい」
「もちろんよ」
「ありがとう、すず。ダイダイダイ、大好きよ。あい……うん。愛してる」
「ありがとう、桜子。私も大好きよ」
「愛してるって言ってくれないんだ」
「……ごめん」
「いいの。私の用件はこれで済んだ。あとはエリックの用件なんだけど」
あのメンヘラドラゴンか。




